臨床指標を用いた医療の質向上に関する国際共同研究

文献情報

文献番号
200634005A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床指標を用いた医療の質向上に関する国際共同研究
課題番号
H16-医療-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 敏彦(日本医科大学医療管理学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 井口 昭久(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 平尾 智広(香川大学医学部)
  • 佐藤 敏彦(北里大学医学部)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では医療の成果を構成する三側面、「質、安全、満足」のそれぞれについて測定インスツルメントを開発し、測定することを試みた。多施設で調査し、評価を現場にフィードバックすることで、医療の質が改善されることを目的とした。また成果に関わる指標以外に生産性を測定する指標を開発し、総合的な評価を提言できるように試みた。
研究方法
満足度調査は外部顧客「患者」、内部顧客「職員」、そして紹介元について顧客満足理論に基づき調査を行った。患者満足度の3年度目の調査に加えて、昨年度試行された職員への満足度調査を実施し、職員の医療サービスへの認識を併せて調査し、検証した。また紹介元の満足度調査については質問表を開発し、調査を行った。
臨床指標は平成16年度に実施した臨床指標調査データを用い、全112項目の指標を「病院特性」、「診療成果」、「生産効率」の3つに分類し、ベンチマークを行った。
安全についてはAHRQによる患者安全文化尺度を翻訳し、質問紙調査を行い、その妥当性と信頼性を明らかにした。
生産性について自治体病院の中の急性期病院を対象に、確率的生産フロンティア分析手法により、開発、試行した。
結果と考察
患者満足度は平成18年度に全国の366の急性期、療養型病院を対象として実施した臨床指標データを使用した。病院区分、年齢、性別に関して有意な差が見られ、各病院に改善のためにフィードバックした。リスク調整による絶対的比較法として、項目反応理論を応用した。職員満足度調査は平成18年度に122病院で試行し、15554のサンプルが得られた。紹介元の満足度調査は10病院において調査し、サービスクオリティの10要素の観点で実施し、統計的に分析を行った。
臨床指標については「病院特性」指標には大きなばらつきがあり、また病院群により傾向が確認された。変動係数が高い指標としては稀な事象に対するものが多かった。
安全については24病院11087名の職員に対して調査を実施した。構造方程式モデリングを行った結果、適合度は良好で、患者安全文化尺度に12因子を見出すことができた。
生産性については332施設について分析を行い、病院グループ間で格差があり、特に専門病院で生産性が低いことが判明した。
結論
医療の質を向上させるためには成果の測定は重要であり、そのためにはさまざまな指標の整備が必要である。本研究では成果の質、安全、満足の3側面を測定するインスツルメント、臨床指標を開発し、現場にフィードバックすることができた。これらから現場のTQMや変革の戦略を実現させるために活用されうる。

公開日・更新日

公開日
2007-06-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-02-28
更新日
-

文献情報

文献番号
200634005B
報告書区分
総合
研究課題名
臨床指標を用いた医療の質向上に関する国際共同研究
課題番号
H16-医療-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 敏彦(日本医科大学医療管理学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 西岡 清(横浜赤十字病院)
  • 井口 昭久(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 武澤 純(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 斉藤 英彦(国立名古屋病院)
  • 石川 功(社会保険群馬中央総合病院)
  • 飯田 修平(練馬総合病院)
  • 平尾 智広(香川大学医学部)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部)
  • 辻 典明(財団法人日本医療機能評価機構研究開発部)
  • 佐藤 敏彦(北里大学医学部)
  • 杉浦 伸一(名古屋大学医学部)
  • 石田 達樹(東京医科歯科大学医歯学教育センター)
  • 加藤 尚子(国際医療福祉大学医療福祉学部)
  • 清水 佐知子(大阪大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医療安全・医療技術評価総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の病院経営の評価ではこれまで財務面に重点がおかれ、医療の「質の改善」など、産出成果向上の取り組みが遅れていた。その理由としては、成果の測定にはデータのプールとベンチマークが必要でその方法が無かったこともある。そこで本研究は成果を「安全、質、満足」の3側面で捉え、対応した測定インスツルメントを開発することにより、多施設で調査し、評価をフィードバックする事で改善を図る研究事業を企画した。
研究方法
満足度調査は3顧客、外部顧客「患者」入院・外来、内部顧客「職員」、そして「紹介元」について「真実の瞬間」等の顧客満足理論に基づき、出来事に基づく(event-based)の質問表を開発した。後2顧客はそれぞれ患者の満足度を参照できるように設計されている。性年齢等、不可変の変数のリスク調整法につき各種検証した。
臨床指標ついては病院特性や診療成果等、112項目を診療録や電子資料からデータプールして統計処理した。
安全診断については定性的手法を含めて米国AHRQや豪国の手法を参照して、組織、文化、能力診断インスツルメントを開発実施した。
更に成果に加えて、自治体病院を対象に生産性評価を確率的生産フロンティア分析手法により開発試行した。
最後にこれらを用いた改善の方法としては、TQMや変革の戦略について検討した
結果と考察
患者満足度はグループ463病院で実施し、改善のため各施設にフィードバックした。患者満足度の分析手法についてベンチマークのためのリスク調整法としては、まず固定効果による法や、セングメント化して特性を調整する方法、そして絶対的ランキングのために項目反応理論に基づく新たな手法を開発した。職員満足度は試行の後、7グループ122病院で実施した。紹介元の診療所や病院の満足度調査は10病院で試行した。
臨床指標は5グループ181病院で実施し、ベンチマークをフィードバックした。
安全文化は24病院で2年にわたって実施した。
生産性分析試行の結果では自治体病院の生産性には格差があり、特に専門病院で低かった。これらは施設や病院グループ間で差があることが判明した。
TQMや「変革の戦略」については、日本ではその途についたばかりである。
結論
国民の医療の安全、質についての関心の高まりとともに、病院経営はその重点を収支から、成果の向上に移すことが必要となり、さらに近年の現場への負担の増大からは生産性も併せて総合的に評価する必要性が生じている。本研究ではこの新たな需要に対応する種々の臨床指標、及び測定インスツルメントを開発し、現場に応用することができた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200634005C