エイズ医薬品候補物質のスクリーニングを基盤とした、抗エイズ新薬開発に関する研究

文献情報

文献番号
200614008A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ医薬品候補物質のスクリーニングを基盤とした、抗エイズ新薬開発に関する研究
課題番号
H16-創薬-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
棚元 憲一(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 牛島 廣治(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 星野 洪郎(群馬大学大学院 医学系研究科)
  • 大竹 徹(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 山本 直彦(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 澤田 幸治(北海道立衛生研究所)
  • 千々和 勝己(福岡県保健環境研究所)
  • 石﨑 徹(京都府保健環境研究所)
  • 野口 有三(横浜市衛生研究所)
  • 齋藤 隆行(神奈川県衛生研究所)
  • 小河 正雄(大分県衛生環境研究センター)
  • 貞升 健志(東京都健康安全研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 企業・大学等から提供される合成化学物質や生薬抽出物について、エイズウイルス増殖抑制を指標にして、広く未知の抗エイズウイルス物質探索を行う。併せて、より効率的かつ迅速なスクリーニング法の開発研究や、さらには有効物質についての作用メカニズムや生理作用解析を行うことにより、総合的な創薬への発展を目指す
研究方法
1.エイズ医薬品候補物質のスクリーニング研究:企業、大学、研究所にサンプル提供を募り、マイクロプレート法、及びMAGIC-5アッセイ法により、抗HIV活性のスクリーニングを行った。新規スクリーニング法として開発したGFP発現を指標とする方法で抗HIV活性を調べ、ファーストスクリーニングとしての検証を行った。2.作用機作:感染後期(持続感染系)における効果は巨細胞形成抑制により、CCR5およびCXCR4分子への作用はFITCラベルモノクローナル抗体の結合抑制試験により、また逆転写酵素阻害作用は市販キットを用いて調べた。3.薬剤耐性感染性クローンの作成:M18V、T215Y、K103Nに変異をもつ耐性感染性クローンを作成した。
結果と考察
1)合計322サンプルについて抗HIV活性スクリーニングを行った結果、マイクロプレート法では5サンプルに、またマクロファージ好性ウイルスの増殖抑制においては29サンプルに活性が認められた。新規スクリーニング法として開発したGFP発現を指標とする方法を用いて200サンプルのスクリーニングを実施し、6サンプルについて抗HIV-1活性を見いだすとともに、ファーストスクリーニングとして大量のサンプル処理に適していることを確認した。2)昨年度の陽性サンプルにつき新規作用機作物質の検索を目的として、セコンドレセプター(CXCR4およびCCR5)への作用、逆転写酵素阻害活性、巨細胞形成等の作用機作等の検討を行った。3)耐性変異のデーターをもとに作成した感染性クローンが耐性スクリーニングを行なう上で有用であることを示した。
結論
 322サンプル中、マイクロプレート法では5サンプルに、マクロファージ好性ウイルスに対しては29サンプルと、延べ34の物質に活性が認められた。活性自体もかなり強いこと、多くは天然由来の粗抽出物であること、さらに新規作用機作をうかがわせる化合物も得られたことから、創薬への発展が大いに期待される。また、本研究班で開発した新規スクリーニング法を検証し、ファーストスクリーニングとして大量のサンプル処理に適していることを確認した。また昨年度の陽性サンプルの作用機作の検討、及び耐性ウイルス研究を推進した。

公開日・更新日

公開日
2007-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200614008B
報告書区分
総合
研究課題名
エイズ医薬品候補物質のスクリーニングを基盤とした、抗エイズ新薬開発に関する研究
課題番号
H16-創薬-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
棚元 憲一(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 牛島 廣治(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 星野 洪郎(群馬大学大学院 医学系研究科)
  • 大竹 徹(大阪府立公衆衛生研究所)
  • 山本 直彦(名古屋大学大学院 医学系研究科)
  • 澤田 幸治(北海道立衛生研究所)
  • 千々和 勝己(福岡県保健環境研究所)
  • 石﨑 徹(京都府立保健環境研究所)
  • 野口 有三(横浜市衛生研究所)
  • 齋藤 隆行(神奈川県衛生研究所)
  • 小河 正雄(大分県衛生環境研究センター)
  • 貞升 健志(東京都健康安全研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 企業・大学等から提供される合成化学物質や生薬抽出物について、エイズウイルス増殖抑制を指標にして、広く未知の抗エイズウイルス物質探索を行う。併せて、より効率的かつ迅速なスクリーニング法の開発研究や、さらには有効物質についての作用メカニズムや生理作用解析を行うことにより、総合的な創薬への発展を目指す。
研究方法
1.エイズ医薬品候補物質のスクリーニング研究:マイクロプレート法、及びMAGIC-5アッセイ法により、抗HIV活性のスクリーニングを行った。GFP発現を指標とする方法、及びリアルタイムPCR法を応用した新規スクリーニング法を開発し、スクリーニングへの応用を検証した。2.作用機作:感染後期(持続感染系)における効果は巨細胞形成抑制により、CCR5およびCXCR4分子への作用はFITCラベルモノクローナル抗体の結合抑制試験により、また逆転写酵素阻害作用は市販キットを用いて調べた。3.薬剤耐性感染性クローンの作成:L90M 、M46I 、M18V、T215Y、K103Nに変異をもつ耐性感染性クローンを作成した。
結果と考察
平成16-18年度のスクリーニング研究において、総計1332のサンプルについて、抗HIV活性スクリーニング研究を行い、マイクロプレート法では21、またMAGIC-5アッセイでは83の活性物質を見出した。新規スクリーニング法としてGFP発現を指標とする方法、及びリアルタイムPCR法を応用した方法を開発し、特に前者に関しては実際200サンプル(6陽性)の抗HIV活性を調べ、スクリーニングへの応用が可能であることを検証した。得られた陽性サンプルの多くは天然由来の粗抽出物であることから、今後の精製をはじめ創薬への発展が期待される。これら陽性サンプルについては、新規作用機作物質の検索を目的として、セコンドレセプターへの作用、逆転写酵素阻害活性、巨細胞形成等の作用機作等の検討を行った。耐性菌ライブラリー作成等、耐性ウイルス研究も推進した。
結論
 1332のサンプルにつき抗HIV活性スクリーニングを行い、マイクロプレート法では21、またMAGIC-5アッセイでは83の活性物質を得た。活性自体も強いものが多く含まれていることや、多くは天然由来の粗抽出物であること、さらに新規作用機作をうかがわせる化合物も得られたことから、創薬への発展が大いに期待される。また、本研究班で開発した新規スクリーニング法を検証し、ファーストスクリーニングとして大量のサンプル処理に適していることを確認した。また得られた陽性サンプルの作用機作の検討、及び耐性ウイルス研究を推進した。

公開日・更新日

公開日
2007-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
総計1332のサンプルについて、マイクロプレート法、MAGIC-5アッセイによる抗HIV活性スクリーニングを行い、マイクロプレート法では21、またMAGIC-5アッセイでは83と多くの活性物質を得た。活性自体も強いものが多く含まれていることや、多くは天然由来の粗抽出物であること、さらに新規作用機作をうかがわせる化合物も得られたことから、今後の創薬への発展が大いに期待される。
臨床的観点からの成果
現在、耐性株、多剤併用療法の観点から、新しい作用点を持つエイズ医薬品が求められているが、 本研究は、広範な新規化合物探索と作用機作解明という研究手法から新規候補物質が期待されるものである。実際得られた陽性サンプルの中には、マクロファージ好性ウイルスのみの増殖を選択的に抑制する化合物、セコンドレセプターに作用する化合物等、すぐれたエイズ薬のシードとなる可能性を示す多くの化合物を得ている。今後さらに詳細な作用機作を解明すると共に、化学的な検討を加えることにより、創薬への発展が大いに期待される。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
新薬候補物質の探索のためのスクリーニングを行うには、それなりの施設、背景、合目的性が必要であることから、大企業はともかく、候補物質を持っている多くの企業、大学では容易にスクリーニングシステムを持てないのが現状である。日本におけるエイズ医薬品候補物質探索有効に機能させるため、本研究班は積極的なサンプル収集と、応募者の利便性を考慮したスクリーニングシステムを構築し、多くのサンプル提供を受け、行政的な貢献を遂行している。加えて、耐性菌ライブラリー作成等、耐性ウイルス研究も推進した。
その他のインパクト
特許の取得
[発明の名称] 抗ウイルス剤
出願日 平成18年2月7日 出願番号 特願2006-030248

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
123件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
48件
学会発表(国際学会等)
23件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shimizu, Y. et al.
Construction and in vitro characterization of a chimeric simian and human immunodeficiency virus with the RANTES gene.
Microbes Infect. , 8 (1) , 105-113  (2006)
原著論文2
Roy BB. et al.
Isolation of the feline alpha1,3-ctosyltransferase gene, expression in transfected human cells and its phylogenetic analysis.
J Exp Zoolog B Mol Dev Evol. , 306 , 59-69  (2006)
原著論文3
Raphael Lwembe et al.
Anti-retroviral drug resistance-associated mutations among non-subtype B HIV-1-infected Kenyan children with treatment failure.
The Journal of Medical Virology  (2007)
原著論文4
Huy TT, Ushijima H, Sata T, Abe K.
Genomic characterization of HBV genotype F in Bolivia: genotype F subgenotypes correlate with geographic distribution and T(1858) variant.
Arch Virol. , 151 (3) , 589-597  (2006)
原著論文5
Yagyu F, Okitsu S, Tanamoto K, Ushijima H.
Determination of HIV-1 subtypes (A-D, F, G, CRF01_AE) by PCR in the transmembrane region (gp41) with novel primers.
J Med Virol. , 76 (4) , 16-23  (2005)
原著論文6
Otake T et al.
Novel method of inactivation of human immunodeficiency virus type 1 by the freeze pressure generation method
Applied Microbiology and Biotechnology , 67 (67) , 746-751  (2005)
原著論文7
H. Nagai et al.
New estimation method for highly sensitive quantitatiion of human immunodeficiency virus type 1 DNA and its application
J. Virol. Methods , 124 , 157-165  (2005)
原著論文8
Sakon N,
A norovirus outbreak of gastroenteritis linked to packed lunches
Japanese Journal of Infectious Diseases , 58 , 253-  (2005)
原著論文9
Saha, M. et al.
Formation of vesicular stomatitis virus pseudotypes bearing surface proteins of hepatitis B virus.
J. Virol. , 79 , 12566-12574  (2005)
原著論文10
Jinno-Oue A. et al.
The synthetic peptide derived from the NH2-terminal extracellular region of an orphan G protein-coupled receptor, GPR1, preferentially inhibits infection of X4 human immunodeficiency virus type 1.
J. Biol. Chem. , 280 , 30924-30934  (2005)
原著論文11
Ushijima H and Eshita Y. Foreward
Molecular epidemiology of viral infection in Asia
Pediatr Int. , 46 (2) , 202-206  (2004)
原著論文12
Sakamoto T, et al.
Establishment of an HIV cell-cell fusion assay by using two genetically modified HeLa cell lines and receptor gene.
J Virol Methods , 114 , 159-166  (2004)
原著論文13
Urata H. et al.
Anti-HIV-1 activity and mode of action of mirror image oligodeoxynucleotide analogue of zintevir
Biochemical and Biophysical Research Communications , 313 , 55-61  (2004)
原著論文14
森 治代 他
コレセプター阻害剤を用いたR5/X4ウイルス測定法
MINOPHAGEN MEDICAL REVIEW , 49 , 81-82  (2004)
原著論文15
Dan Turner et al.
Nucleotide and Amino Acid Polymorphisms at Drug Resistance Sites in Non-B-Subtype Variants of Human Immunodeficiency Virus Type 1
Antimicrobial Agents and Chemotherapy , 48 , 2993-2998  (2004)
原著論文16
大竹 徹
ウイルスの高圧不活化と血液製剤への利用
FFIジャーナル , 210 (1) , 44-48  (2005)
原著論文17
Shimizu A, et al.
Human T-cell leukaemia virus type I is highly sensitive to UV-C light.
J. Gen. Virol. , 85 , 2397-2406  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-