多剤耐性HIV-1による治療困難症例を克服するための新規治療薬剤・治療法開発研究

文献情報

文献番号
200614005A
報告書区分
総括
研究課題名
多剤耐性HIV-1による治療困難症例を克服するための新規治療薬剤・治療法開発研究
課題番号
H16-創薬-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
杉浦 亙(国立感染症研究所エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 明里 宏文(独立行政法人医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センター)
  • 木村 廣光(国立成育医療センター研究所・臨床共同研究管理室)
  • 駒野 淳(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 田中 晴雄(北里研究所基礎研究所)
  • 田中 勇悦(琉球大学大学院医学研究科免疫学分野)
  • 野村 伸彦(富山化学工業株式会社綜合研究所第3研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規抗HIV薬剤の開発
研究方法
研究班では検索と評価の2グループに分かれて開発に取り組んだ。検索グループでは各種スクリーニング系の確立と抗HIV-1活性を評価する細胞培養系を用いて低分子化合物ライブラリの探索に取り組んだ。評価グループでは候補化合物の抗HIV活性の増強、毒性の軽減に取り組んだ。またhu-SCIDによる小動物HIV感染動物モデルを利用して、in vivoにおける抗HIV効果、薬物の体内動態についての評価を行った。さらに、接着・侵入阻害物質アクチノビンの構造化学的解析に取り組んだ。
結果と考察
検索グループでは低分子化合物ライブラリ未評価約8800検体についてin vitro strand transferによるスクリーニングを実施した。その結果100uMでの一次スクリーニングで76検体(4.3%)がヒットし、これらについては個別にIC50を求めた結果、IC50<30uMのものが32検体(0.36%)同定された。インテグラーゼ阻害剤に関してはライブラリのスクリーニングは完了した。独自に構築した抗HIV活性評価細胞MaRBLE細胞を用いて低分子化合物21000個についてスクリーニングを実施した。その結果全体の0.5%に相当する115個の化合物を見出した。評価グループでは阻害活性の増強と毒性の軽減を目的に候補化合物の化学的修飾を行った。評価した化合物の総数は192化合物でIC50の値が0.001μM未満の強い活性を示すものがそれぞれ20(10.4%)化合物同定された。候補化合物のhu-PBL-SCIDマウスモデルの増殖抑制はnevirapineと同程度であることが明らかになった。接着・侵入阻害物質アクチノビン(AH)の患者分離HIV株に対する活性を調べた結果、既知の薬剤耐性にも効果を示すことが分かった。Inosine monophosphate dehydrogenase阻害剤であるマイコフェノール酸は、逆転写酵素を阻害するのみならず、gp120の発現を減少させることにより接着・侵入を阻害することを示した。
結論
平成18年で化合物ライブラリの探索を終了し、今後はそれぞれの作用機序の解明と抗HIV活性の増強と毒性の軽減に取り組むことを計画している。見出した候補化合物は現時点では作用機序が明確ではないが、今後の実用化が期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200614005B
報告書区分
総合
研究課題名
多剤耐性HIV-1による治療困難症例を克服するための新規治療薬剤・治療法開発研究
課題番号
H16-創薬-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
杉浦 亙(国立感染症研究所エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 明里 宏文(独立行政法人 医薬基盤研究所・霊長類医科学研究センター)
  • 木村 廣光(国立成育医療センター・研究所共同研究管理室)
  • 駒野 淳(国立感染症研究所エイズ研究センター )
  • 田中 晴雄(北里研究所基礎研究所)
  • 田中 勇悦(琉球大学大学院医学研究科)
  • 野村 伸彦(富山化学工業株式会社綜合研究所第3研究部)
  • 北村 義浩(東京大学医科学研究所アジア感染症拠点)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新規抗HIV薬剤の開発
研究方法
研究班では検索と評価の2グループに分かれて開発に取り組んだ。検索グループでは各種スクリーニング系の確立と抗HIV-1活性を評価する細胞培養系を用いて低分子化合物ライブラリの探索に取り組んだ。評価グループでは候補化合物の抗HIV活性の増強、毒性の軽減に取り組んだ。またhu-SCIDによる小動物HIV感染動物モデルを利用して、in vivoにおける抗HIV効果、薬物の体内動態についての評価を行った。さらに、接着・侵入阻害物質アクチノビンの構造化学的解析に取り組んだ。
結果と考察
検索グループでは、まずインテグラーゼ精製法の改良に取り組み、親水性を高めたF185H変異体を作ることに成功した。この酵素を標的に低分子化合物ライブラリの探索を実施した。その結果IC50<30μMの化合物32検体(0.36%)の同定に成功した。研究班で開発した感受性測定系(MaRBLEアッセイ)を用いて低分子化合物ライブラリ21000検体の抗HIV活性のスクリーニングを行った結果、全体の0.5%に相当する115個の候補化合物を見出した。評価グループでは同定した5個の候補化合物を化学的修飾などにより合成展開し、阻害活性の増強と毒性の軽減に取り組んだ。その結果、抗HIV阻害活性を10-100倍増強させIC50を数nMまで低下させることに成功した。その作用機序については既知の薬剤とは異なることを確認した。候補化合物の抗HIV効果の確認をhu-PBL-SCIDで検証した結果、ネヴィラピンと同程度の効果を確認した。接着・侵入阻害物質アクチノビン(AH)の構造化学的解析した結果AHは、HIV エンベロープ蛋白質 gp120 の高マンノース型糖鎖末端の (1-2) マンノビオースと結合することで、HIVの細胞への接着・侵入を阻害することを明らかにした。
結論
新たな阻害機序による新規抗HIV化合物の発見を期待して無作為探索による新薬開発に取り組んだ。約21000の化合物ライブラリの探索の結果、複数の新たな機序による候補化合物の同定に成功した。見出した候補化合物は既存の薬剤に匹敵する強い抗HIV-1阻害活性を呈しており、今後の実用化が期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-05-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
専門的・学術的観点からの成果(200文字程度。最大250文字)
既知の治療薬剤とはその阻害機序が異なる新たな抗HIV候補化合物を見出した。その作用点の解明によりHIVの宿主との相互作用がよりよく理解されることが期待される。アクチノヒビンのHIV阻害機序が構造学的に明らかになり、実用化に近づいた。新薬探索を通じて薬剤感受性測定系など独自の薬剤探索系の開発に成功した。
臨床的観点からの成果
同定された新たな抗HIV薬候補化合物は、既知の治療薬に対して耐性を獲得したHIV株に対しても有効であり、実用化すれば薬剤耐性のために難治に陥っている症例の救済が期待される。アクチノヒビンの開発研究では構造学的解析の結果、より阻害活性のつよい分子の開発に成功した。アジア・アフリカなどHIV感染が拡大している地域でのHIV感染予防薬としての使用が期待される。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
21件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
17件
学会発表(国内学会)
40件
学会発表(国際学会等)
23件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
omoko Chiba-Mizutani, Hideka Miura, Masakazu Matsuda, et al.
New T-Cell-Based Lines with Two Luciferases for Accurately Evaluating Susceptibility to HIV-1 Drugs.
J Clinical Microbiology. , 45 (2) , 477-487  (2007)
原著論文2
Afework Kassu, Masayuki Fujino, Masakazu Matsuda,et al.
Molecular Epidemiology of HIV-1 in Treatment Naive Patients in North Ethiopia.
AIDS Research and Human Retroviruses. , 23 (4) , 564-568  (2007)
原著論文3
Kousuke Miyauchi, Jun Komano,Lay Myint,et al.
Rapid propagation of low-fitness drug-resistant mutants of human immunodeficiency virus type 1 by a streptococcal metabolete sparsomycin.
Antiviral Chemistry & Chemotherapy. , 17 , 167-174  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
2017-06-23