小型動物を用いたエイズワクチン・エイズ薬の予防治療効果評価系の開発

文献情報

文献番号
200614004A
報告書区分
総括
研究課題名
小型動物を用いたエイズワクチン・エイズ薬の予防治療効果評価系の開発
課題番号
H16-創薬-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
田中 勇悦(国立大学法人琉球大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小柳義夫(国立大学法人 京都大学 ウイルス研究所)
  • 小端哲二(独協大学 医学部)
  • 伊藤守(財団法人 実験動物中央研究所)
  • 西澤雅子(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 山本直樹(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV-1の感染予防やエイズ治療を目的とするワクチンならびに抗HIV-1薬剤の開発には多くの期待がかけられている。しかしながら、現時点でも有効なワクチンは開発されておらず、また臨床で広く使われている種々の抗HIV-1薬においては耐性ウイルスの出現や副作用など様々な問題が浮上してきている。このような背景の中で、HIV-1感染症克服の全体目標に大いに寄与するため、ワクチンを含めた新規医薬品候補が、種々の臨床HIV-1株に対し感染予防ならびに治療効果をもつのかどうかをより簡便に評価できる小型実験動物モデルを開発することを目的とした。
研究方法
我が国で作出された新規免疫不全マウスにヒトの末梢血単核球または造血幹細胞を移植し、HIVが増殖し病原性を発揮するキメラマウスを作った。このマウスにおいて樹状細胞を介したHIV免疫による免疫応答誘導、あるはHIV感染によるウイルス増殖の状態、新規治療薬の効果を検討した。
結果と考察
ヒト制御性T細胞(Treg)の誘導を可能とする樹状細胞(DC)の誘導法を確立した。またTh1誘導性DCの新たな分化誘導法を確立し、このDCを不活化HIVで感作しhu-PBL-SCIDマウスを免疫することによりHIVに対する免疫応答を誘導した。この系ではワクチンの評価が可能である。ヒトIL-4を分泌する新たな高度免疫不全マウス作出し、多剤耐性X4 HIV-1へのCXCR4アンタゴニストの効果を感染実験で実証した。ヒト造血幹細胞を移植した免疫不全マウス系を開発し、長期にわたりHIV持続感染再現できる系を作った。
結論
改良された免疫不全マウスにヒトPBMCあるいはCD34陽性ヒト造血幹細胞を移植して、ヒト化マウスを作製した。これらのマウスを使い分けることによって、HIV-1薬剤やワクチンの短期あるいは長期の詳しい評価の可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2007-05-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200614004B
報告書区分
総合
研究課題名
小型動物を用いたエイズワクチン・エイズ薬の予防治療効果評価系の開発
課題番号
H16-創薬-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
田中 勇悦(国立大学法人琉球大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 小柳義夫(国立大学法人 京都大学 ウイルス研究所)
  • 小端哲二(独協大学 医学部)
  • 伊藤守(財団法人 実験動物中央研究所)
  • 西澤雅子(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 山本直樹(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 本多三男(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、最近我が国で開発された高度免疫不全SCIDマウス系統を用いて、さらには新種のマウスを作出し、種々のヒト免疫細胞を移植したキメラマウスを用いることにより、従来よりも高いHIV-1感受性を持ち、HIV-1薬剤を評価できる実験系を作ること、ワクチンによりヒト型の抗HIV-1感染防御免疫を効率的に誘導しその評価ができる新たな方法を開発すること、国内で開発されたウイルス感染阻止CXCR4アンタゴニスト候補等も評価できる系を作ること、以上を当初の到達目標として研究を進めた。小型実験動物モデルを開発することを目的とした。
研究方法
我が国で作出された新規免疫不全マウスにヒトの末梢血単核球または造血幹細胞を移植し、HIVが増殖し病原性を発揮するキメラマウスを作った。このマウスにおいて樹状細胞を介したHIV免疫による免疫応答誘導、あるはHIV感染によるウイルス増殖の状態、新規治療薬の効果を検討した。
結果と考察
この3年間の班研究によってヒト血液細胞を移植した作製した免疫不全マウスをHIV-1薬剤およびワクチン評価系として提供するための確かな基盤と新規の方法論を作ることができたことから目標は概ね達成されたと自己評価している。またこの評価系は一般化することが可能である。しかし、国内においてより安価にしかも十分な数を提供できるまでには至らなかったことが反省される。この点についてはさらなる研究の継続が必要である。
結論
改良された免疫不全マウスにヒトPBMCあるいはCD34陽性ヒト造血幹細胞を移植して作製した種々のヒト化マウスを目的によって使い分けることによって、動物モデルにおいてHIV-1薬剤やワクチンを評価する系を作製した。ワクチンやアジュバントの評価にはヒトPBMCを移植したマウスにヒト由来の樹状細胞を用いた免疫方法を応用する。ケモカイン受容体アンタゴニスト等のX4 HIV-1に対する評価にはヒトIL-4産生マウスを用いる。一方、長期感染に対する薬剤の評価はヒト造血幹細胞を移植したヒト化マウスの利用が不可欠である。3年間の研究によりヒト化マウスでの評価系の適用範囲の拡大が計られた。

公開日・更新日

公開日
2007-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-10-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ヒト化マウスを使ってワクチンや新規薬剤を評価する以下の3つのシステムを開発した。(1)PBMCを移植したhu-PBL-SCIDマウスを用いてヒト樹状細胞(DC)の免疫誘導能を利用するHIVワクチンの評価系、(2)ヒトIL-4を産生するhu-PBL-SCIDマウスを用いてX4 HIV-1に対する薬剤やワクチンの評価系、(3)ヒト造血幹細胞(CD34+)を移植したNOGマウスを利用し、HIV-1の長期持続感染における抗HIV-1薬やヒト抗体応答の評価系である。
臨床的観点からの成果
本研究で開発された評価系はワクチンや新規薬剤の前臨床試験として応用できる。つまりこの系では、野生HIV-1株や多剤耐性HIV-1株を用いた評価も可能である。一方、新規HIV-1薬剤として注目されているものの一つはケモカイン受容体アンタゴニストである。CXCR4アンタゴニストの簡便なヒト化マウス評価系の開発は遅れていたが、IL-4を産生するヒト化マウスを開発しin vivoでのX4 HIV-1に対する効果の評価を可能とした。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
分担研究者の山本直樹博士らの研究で、平成18年11月20日、日経新聞(全国版)において、「HIV抗体作成に成功:ワクチン開発に未知;マウスで感染実験」という見出しの記事が紹介された。これはヒトの造血幹細胞を移植したNOGマウスにHIVを感染させて長期にわたり持続感染と抗体産生を報告した論文の内容を報道したものである。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
63件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
87件
学会発表(国際学会等)
29件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kondo K, Okuma K, Tanaka R, et al.
Requirements for the functional expression of OX40 ligand on human activated CD4+ and CD8+ T cells.
Human Immunol.  (2007)
原著論文2
Koyanagi Y, Tanaka Y, Ito M, et al.
Humanized mice for human retrovirus infection.
Curt Top Microbiol Immunol.  (2007)
原著論文3
Sakurai D, Kanno Y, Hase H, et al.
.: TACI attenuates antibody production costimulated by BAFF-R and CD40.
Eur J Immunol , 37 , 110-118  (2007)
原著論文4
Watanabe S, Terashima K, Ohta S,et al.
Hematopoietic stem cell-engrafted NOD/SCID/IL2R{gamma}null mice develop human lymphoid systems and induce long-lasting HIV-1 infection with specific humoral immune responses.
Blood , 109 (1) , 212-218  (2007)
原著論文5
Masuda H, Maruyama T, Hiratsu E, et al.
Noninvasive and real-time assessment of reconstructed functional human endometrium in NOD/SCID/gamma immunodeficient mice.
Proc Natl Acad Sci USA , 104 , 1925-1930  (2007)
原著論文6
Chiba-Mizutani T, Miura H, Matsuda M, et al.
New T-Cell-Based Lines with Two Luciferases for Accurately Evaluating Susceptibility to HIV-1 Drugs.
J Clin Microbiol , 45 , 477-487  (2007)
原著論文7
Dewan MZ, Terunuma H, Toi M, et al.
Potential role of natural killer cells in controlling growth and infiltration of AIDS-associated primary effusion lymphoma cells.
Cancer Sci , 97 (12) , 1381-1387  (2006)
原著論文8
Eda Y, Murakami T, Ami Y, et al.
Anti-V3 humanized antibody KD-247 effectively suppresses ex vivo generation of human immunodeficiency virus type 1 and affords sterile protection of monkeys against a heterologous simian/human immunodeficiency virus infection.J Virol.
J Virol , 80 (11) , 5563-5570  (2006)
原著論文9
Someya K, Ami Y, Nakasone T, et al.
Induction of positive cellular and humoral immune responses by a prime-boost vaccine encoded with simian immunodeficiency virus gag/pol.
J Immunol , 176 (3) , 1784-1795  (2006)
原著論文10
Dewan MZ, Uchihara J, Terashima K, et al.
Efficient intervention of growth and infiltration of primary adult T-cell leukemia cells by an HIV protease inhibitor, ritonavir.
Blood , 107 , 716-724  (2006)
原著論文11
Miyazato P, Yasunaga J, Taniguchi Y, et al.
De novo HTLV-I Infection of Human Lymphocytes in Nonobese Diabetic-SCID, Common γ-Chain Knocked-Out Mice.
J Virol , 80 , 10683-10691  (2006)
原著論文12
Muguruma Y, Yahata T, Miyatake H, et al.
Reconstitution of the functional human hematopoietic microenvironment derived from human mesenchymal stem cells in the murine bone marrow compartment.
Blood , 107 , 1878-1887  (2006)
原著論文13
Kawahara M, Matsuo K, Honda M, et al.
Intradermal and oral immunization with recombinant Mycobacterium bovis BCG expressing the simian immunodeficiency virus Gag protein induces long-lasting, antigen-specific immune responses in guinea pigs.
Clin Immunol , 119 (4) , 67-78  (2006)
原著論文14
Yan H., Mizutani T, Nomura N, et al.
A novel small molecular weight compound with a carbazole structure that demonstrates potent human immunodeficiency virus type-1 integrase inhibitory activity.
Antivir Chem Chemother , 16 , 363-373  (2005)
原著論文15
Yoshida A, Tanaka R, Kodama A, et al.
Identification of HIV-1 epitopes that induce the synthesis of a R5 HIV-1 suppression factor by human CD4+ T cells isolated from HIV-1 immunized hu-PBL SCID mice.
Clin Dev Immunol , 12 (4) , 235-243  (2005)
原著論文16
Nakata H, Maeda K, Miyakawa T,
Potent anti-R5 human immunodeficiency virus type 1 effects of a CCR5 antagonist, AK602/ONO4128/GW873140, in a novel human peripheral blood mononuclear cell nonobese diabetic-SCID, interleukin-2 receptor gamma-chain-knocked-out AIDS mouse model.
J Virol , 79 , 2087-2096  (2005)
原著論文17
Someya K, Ami Y, Nakasone T, et al.
Vaccination of rhesus macaques with recombinant Mycobacterium bovis bacillus Calmette-Gue´rin Env V3 elicits neutralizing antibody-mediated protection against simian-human immunodeficiency virus with a homologous but not a heterologous V3 motif.
J Virol , 79 , 1452-1462  (2005)
原著論文18
Takizawa M, Chiba J, Haga S, et al.
The normalization of guinea pig leukocyte fractions and lymphocyte subsets in blood and lymphoid tissues using a flow cytometric procedure.
Experimental Animals , 53 , 321-329  (2004)
原著論文19
Hamano, T, Sawanpanyalert P, Yanai H, et al.
Determination of HIV-1 CRF01_AE gag p17 and env-V3 consensus sequences for HIV/AIDS vaccine design.
AIDS Res Hum Retroviruses , 20 (3) , 337-347  (2004)
原著論文20
Maeda K, Nakata H, Koh Y, et al.
Spirodiketopiperazine-based CCR5 inhibitor which preserves CC-Chemokine/CCR5 interactions and exerts potent activity against R5 human immunodeficiency virus type 1 in vitro.
J Virol , 78 , 8654-8664  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-