エイズ発症機序・宿主防御免疫機構解析のための動物モデルの確立およびその応用

文献情報

文献番号
200614003A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズ発症機序・宿主防御免疫機構解析のための動物モデルの確立およびその応用
課題番号
H16-創薬-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
俣野 哲朗(東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 森 一泰(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 木村 彰方(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
  • 宮澤 正顯(近畿大学医学部)
  • 保富 康宏(三重大学大学院医学系研究科)
  • 明里 宏文(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
評価系として有用であるだけでなく、抗エイズ薬開発に結びつくエイズ発症機序解明を可能とするエイズモデルの確立を目的とし、MHCを中心とするアカゲザル宿主因子およびそのエイズ発症への関与についての解析を行った。特に平成18年度は、MHC-I・MHC-IIハプロタイピングの推進と、ワクチン接種によりSIV複製制御にいたるMHCハプロタイプ90120-a共有群における重要なCTL解析ツールとしてのMHC・エピトープ複合体テトラマー開発を試みた。
研究方法
これまでに樹立した遺伝子多型解析法を用いてMHC-I・MHC-IIハプロタイピングを推し進めた。MHCハプロタイプ90120-a共有群で、SIV複製制御に関与するCTLのエピトープGag241-249を拘束するMHC-Iアレル同定を進め、MHC-I・エピトープ複合体テトラマー作成を試みた。
結果と考察
MHC-I・MHC-IIハプロタイピング情報整備が進展した。特にMHC-II についてはDR-DP領域全長の網羅的解析によりハプロタイプ構成を決定し、DRBーDQA領域のハプロタイプの安定した再現とDQBーDPB領域での頻繁な組換えを明らかにした。また、主にNK機能に関わるMHC関連遺伝子の多型解析法の樹立も進展した。90120-a共有群の解析では、SIV複製制御に関与するCTLのエピトープGag241-249がMamu-A90120-5によって拘束されることを明らかにし、このCTLを特異的に認識するMamu-A90120-5・Gag241-249複合体テトラマー作成に成功した。このテトラマーは、高いSIV複製抑制能を有するCTLを特異的に認識するツールであるという点において特に貴重であり、ワクチン誘導CTLのSIV複製制御効果の解析に非常に有用である。
結論
ビルマ産アカゲサルエイズモデル確立に向け、MHC遺伝子型情報整備を推進し、MHC-I・MHC-IIの詳細なハプロタイプ構成を決定した。MHCハプロタイプ90120-a共有群でSIV複製制御に関与するGag241-249エピトープ特異的CTLを認識するテトラマー作成に成功した。この90120-a共有群は、MHCハプロタイプ構成が明らかで、高いSIV複製抑制能を有するCTLの解析ツールの整備も進み、SIV複製制御機序解明に極めて有用である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-

文献情報

文献番号
200614003B
報告書区分
総合
研究課題名
エイズ発症機序・宿主防御免疫機構解析のための動物モデルの確立およびその応用
課題番号
H16-創薬-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
俣野 哲朗(東京大学医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 森 一泰(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 木村 彰方(東京医科歯科大学難治疾患研究所)
  • 宮澤 正顯(近畿大学医学部)
  • 保富 康宏(三重大学大学院医学系研究科)
  • 明里 宏文(独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 政策創薬総合研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズ発症阻止法の開発には、動物モデルを用いたエイズ発症機序の解析が重要であるが、現状で最適のモデルであるSIV感染エイズモデルでは、エイズ発症に密接に関与する宿主因子の情報が不足している。そこで本研究では、評価系として有用であるだけでなく、抗エイズ薬開発に結びつくエイズ発症機序解明を可能とするエイズモデルの確立を目的とし、MHCを中心とするアカゲザル宿主因子およびそのエイズ発症への関与についての解析を行った。
研究方法
主対象はビルマ産アカゲザル6家系とし、RSCA法・DGGE法を用いたMHC-I(Mamu-A・Mamu-B)およびMHC-II(DRB・DQA・DQB・DPA・DPB)遺伝子多型解析法を確立して、MHCハプロタイピングを進展させた。マイクロサテライトタイピング法の樹立も進めた。さらに、CTL誘導ワクチン前臨床試験に用いた個体のMHCハプロタイプとワクチン効果との相関の解析を行った。
結果と考察
MHCハプロタイプ多型解析法を確立し、6家系計12のMHC-I・MHC-IIハプロタイプを決定した。また、主にNK機能に関わるMHC関連遺伝子多型解析法を樹立した。ワクチンによりSIV複製制御にいたるMHCハプロタイプ90120-a共有サル群を同定し、選択的交配により優先的に繁殖し解析を進めることとした。高いSIV複製抑制能を有するGag206-216特異的CTLとGag241-249特異的CTLを同定し、各々のエピトープを拘束するMHC-IアレルMamu-A90120-4とMamu-A90120-5を決定した。さらに、Gag241-249特異的CTLを特異的に認識するMamu-A90120-5・Gag241-249複合体テトラマー作成に成功した。
結論
MHC遺伝子多型情報を整備したビルマ産アカゲサルエイズモデルの確立を進め、ワクチン前臨床試験におけるMHCハプロタイプとウイルス複製制御の有無の相関についての検討が可能となった。その結果、世界で唯一、ワクチンによりSIV複製制御にいたるMHCハプロタイプ90120-a共有群を同定した。この90120-a共有群の解析では、SIV複製制御に関与するCTLを同定し、その解析に有用なテトラマー作成に成功した。この90120-a共有群は、SIV複製制御機序解明に極めて有用である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-06
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200614003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究のようにMHC遺伝子多型についてハプロタイプレベルで情報が整備されたエイズモデルは他に例をみない。特に、本研究により同定したMHCハプロタイプ90120-a共有群は、CTL誘導ワクチンによりSIV複製制御にいたる世界で唯一のモデルであり、HIV/SIV慢性持続感染成立機序やワクチン誘導CTLによるウイルス複製抑制機序の解明に結びつく系として、その専門的・学術的意義は極めて高い。
臨床的観点からの成果
本研究で得られたシステムは、ヒトHIV感染症に最も近い優れたエイズモデルの確立に直結すると期待され、エイズワクチンをはじめとするエイズ発症阻止法開発において、有効性・安全性評価用前臨床試験だけでなく発症阻止に結びつく機序解明にも極めて有用なエイズ動物モデルである。特に、MHC遺伝子多型とワクチン効果との相関についての解析が可能となり、CTL誘導予防エイズワクチン開発における抗原選択において重要な情報の提供が可能となった。
ガイドライン等の開発
特に無し。
その他行政的観点からの成果
MHCハプロタイプ共有群の樹立は、抗エイズ薬開発に有用であるだけでなく、その他の感染症に対するワクチン開発や再生医療・遺伝子治療等先端医療開発の前臨床試験の向上に寄与することにより、これらの医療の臨床応用実現において高い貢献度を有すると期待される。
その他のインパクト
研究内容について、東京新聞科学欄(平成16年6月29日)、IAVI Report(国際エイズワクチン・イニシアチブ・レポート平成16年8月)、およびMedical Tribune誌特集(平成16年9月9日)に掲載。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
40件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
54件
学会発表(国際学会等)
29件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Kawada M, Tsukamoto T, Yamamoto H, et al.
Long-term control of simian immunodeficiency virus replication with central memory CD4+ T-cell preservation after non-sterile protection by a cytotoxic T lymphocyte-based vaccine.
J Virol  (2007)
原著論文2
Takahashi-Tanaka Y, Yasunami M, Naruse T, et al.
Reference strand-mediated conformation analysis (RSCA)-based typing of multiple alleles in the rhesus macaque MHC class I Mamu-A and Mamu-B loci.
Electrophoresis  (2007)
原著論文3
Yamamoto H, Kawada M, Tsukamoto T, et al.
Vaccine-based long-term stable control of simian-human immunodeficiency virus 89.6PD replication in rhesus macaques.
J Gen Virol , 88 , 652-659  (2007)
原著論文4
Shibata H, Yasunami M, Obuchi N, et al.
Direct determination of SNP haplotype of NFKBIL1 promoter polymorphism by DNA conformation analysis and its application to association study of chronic inflammatory diseases.
Hum Immunol , 67 , 363-373  (2006)
原著論文5
Kajikawa M, Baba T, Tomaru U, et al.
MHC class I-like MILL molecules are β2-microglobulin-associated, GPI-anchored glycoproteins that do not require TAP for cell surface expression.
J Immunol , 177 , 3108-3115  (2006)
原著論文6
Kida Y, Tsuji-Kawahara S, Ostapenko V, et al.
Increased liver temperature efficiently augments human cellular immune response: T cell activation and possible monocyte translocation.
Cancer Immunol Immunother , 55 , 1459-1469  (2006)
原著論文7
Kawada M, Igarashi H, Takeda A, et al.
Involvement of multiple epitope-specific cytotoxic T-lymphocyte responses in vaccine-based control of simian immunodeficiency virus replication in rhesus macaques.
J Virol , 80 , 1949-1958  (2006)
原著論文8
Kawabata H, Niwa A, Tsuji-Kawahara S, et al.
Peptide-induced immune protection of CD8+ T cell-deficient mice against Friend retrovirus-induced disease.
Int Immunol , 18 , 183-198  (2006)
原著論文9
Kato M, Igarashi H, Takeda A, et al.
Induction of Gag-specific T-cell responses by therapeutic immunization with a Gag-expressing Sendai virus vector in macaques chronically infected with simian-human immunodeficiency virus.
Vaccine , 23 , 3166-3173  (2005)
原著論文10
Kobayashi M, Igarashi H, Takeda A, et al.
Reversion in vivo after inoculation of a molecular proviral DNA clone of simian immunodeficiency virus with a cytotoxic-T-lymphocyte escape mutation.
J Virol , 79 , 11529-11532  (2005)
原著論文11
Mori K, Sugimoto C, Ohgimoto S, et al.
Influence of glycosylation on the efficacy of an Env-based vaccine against SIVmac239 in a macaque AIDS model.
J Virol , 79 , 10386-10396  (2005)
原著論文12
Munkanta M, Terunuma H, Takahashi M, et al.
HLA-B polymorphism in Japanese HIV-1 infected long-term surviving hemophiliacs.
Viral Immunol , 18 , 500-505  (2005)
原著論文13
Kanari Y, Clerici M, Abe H, et al.
Genotypes at chromosome 22q12-13 are associated with HIV-1-exposed but uninfected status in Italians.
AIDS , 19 , 1015-1024  (2005)
原著論文14
Takamura S, Matsuo K, Takebe Y, et al.
Ag85B of mycobacteria elicits effective CTL responses through activation of robust Th1 immunity as a novel adjuvant in DNA vaccine.
J Immunol , 175 , 2541-2547  (2005)
原著論文15
Matano T, Kobayashi M, Igarashi H, et al.
Cytotoxic T lymphocyte-based control of simian immunodeficiency virus replication in a preclinical AIDS vaccine trial.
J Exp Med , 199 , 1709-1718  (2004)
原著論文16
Kato M, Igarashi H, Takeda A, et al.
Stimulation of virus-specific T cell responses by dendritic cell vaccination in the chronic phase of simian AIDS models.
Jpn J Infect Dis , 57 , 220-223  (2004)
原著論文17
Sugahara D, Tsuji-Kawahara S, Miyazawa M, et al.
Identification of a protective CD4+ T-cell epitope in p15gag of Friend murine leukemia virus and role of the MA protein targeting to the plasma membrane in immunogenicity.
J Virol , 78 , 6322-6334  (2004)
原著論文18
Tahara H, Iwanami N, Tabata N, et al.
Both T and non-T cells with proliferating potentials are effective in inducing suppression of allograft responses by alloantigen-specific intravenous presensitization combined with suboptimal doses of 15-deoxyspergualin.
Transplant Immunol , 13 , 25-32  (2004)
原著論文19
Takamura S, Niikura M, Li TC, et al.
DNA vaccine-encapsulated virus-like particles derived from an orally transmissible virus stimulates mucosal and systemic immune responses by oral administration.
Gene Ther , 11 , 628-635  (2004)
原著論文20
Lun WH, Takeda A, Nakamura H, et al.
Loss of virus-specific CD4+ T cells with increases in viral loads in the chronic phase after vaccine-based partial control of primary simian immunodeficiency virus replication in macaques.
J Gen Virol , 85 , 1955-1963  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-