炎症性腸疾患の画期的治療法に関する臨床研究

文献情報

文献番号
200633059A
報告書区分
総括
研究課題名
炎症性腸疾患の画期的治療法に関する臨床研究
課題番号
H18-難治-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
岡崎 和一(関西医科大学内科学第三講座)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 守(東京医科歯科大学大学院消化器病態学)
  • 日比 紀文(慶應義塾大学医学部内科学)
  • 浅香 正博(北海道大学大学院分子病態制御学)
  • 坪内 博仁(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 健康科学専攻人間環境学講座消化器疾患・生活習慣病学 )
  • 高後 裕(旭川医科大学消化器・血液腫瘍制御内科学)
  • 中村 和彦(九州大学大学院病態制御内科学)
  • 鈴木 健司(新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野)
  • 竹田 潔(九州大学生体防御医学研究所発生工学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、難治性炎症性腸疾患に対しこれまでと異なる発想による病態遷延機構の解析を行い、それに基づく画期的治療法の開発とその臨床応用を目標とした。
研究方法
「粘膜局所免疫調節」および「組織再生誘導」を促す新規治療法開発を目指し、1) 上皮細胞再生のための分子療法、細胞移植療法の確立、2) 腸管特異的免疫調節機構を標的とした治療法開発、3) 選択的細胞除去療法開発、および4) 分子・細胞デリバリーシステムを用いた治療法確立、5)既存の薬剤を新しいコンセプトで適応外応用した治療法の開発、の5プロジェクトを設定し研究を進めた。
結果と考察
1)では動物腸炎モデルに対する遺伝子組み換え型ヒト肝細胞増殖因子(HGF)の局所投与により、十分な腸炎発症阻止効果のあることから、臨床応用にむけて、「潰瘍性大腸炎に対する組換えヒトHGFのI/II相治験」のプロトコル委員会が組織された。ヒト腸管上皮でHath1は杯細胞に促進的であること、Hath1蛋白発現を増強するGSK-3β阻害剤が杯細胞の誘導が粘膜上皮再生につながることを示唆した。骨髄や臍帯血幹細胞に比較して安全かつ大量に摂取可能な皮下脂肪組織由来幹細胞による粘膜再生療法の可能性も明らかにした。2)では、基礎研究レベルで、遅期誘導型遺伝子のプロモーターのクロマチン構造変換に関わる自然免疫制御分子としてのIkBzetaを同定し腸炎発症関わることを明らかにした。α-デフェンシンであるHD5ペプチドやレドックス制御を目指したチオレドキシン投与などの自然免疫系の制御による炎症性腸疾患の治療法開発の可能性も示した。3)では、ヒト制御性T細胞を無菌的に大量に分離し、改変型白血球除去療法の開発が進められた。4)では、高分子バイオマテリアルを用いたステロイド封入マイクロカプセルによる難治性潰瘍性大腸炎患者の臨床研究登録が開始され、またリポ化ステロイドを用いたドラッグデリバリーシステムによる多施設共同による無作為化並行群間試験も準備されている。5)では、cAMP増加剤による新規治療としての可能性を示した。
結論
本研究プロジェクト開始後、社会的インパクトの高い論文発表が可能であったのみならず、臨床応用の点でも5件のプロジェクトが分担研究者の施設で臨床試験としてすでに承認あるいは承認間近となるなど、十分な成果が挙げられつつある。これら成果は、基礎研究の先進性を確保しつつ、かつ既存の炎症性腸疾患治療を凌駕し患者QOLの改善にも有効な画期的治療開発を可能にすることが予想され、国際的にも評価に耐え得る研究であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-