筋萎縮性側索硬化症の画期的診断・治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200633052A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症の画期的診断・治療法に関する研究
課題番号
H17-難治-一般-044
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 糸山 泰人(東北大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 田中 啓二(東京都医学研究機構東京都臨床医学総合研究所 生化学・分子遺伝学)
  • 岡野 栄之(慶応義塾大学医学部 生理学)
  • 郭 伸(東京大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 高橋 良輔(京都大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 中野 今治(自治医科大学 神経内科)
  • 船越 洋(大阪大学大学院医学系研究科 分子神経学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態に基づく治療法開発に向けて病態を担う病態関連分子を探索・同定し、これを分子標的として有効な分子標的治療を開発することである。
研究方法
ALSを克服するため、基礎系、臨床系研究者を結集し集約的な研究の推進体制を構築した。研究内容をサブセクション毎に主任および分担研究者の各テーマに沿った独自の研究を発展させつつ情報交換を密に行い、研究組織としての有機的協力態勢を強化した。
結果と考察
【新規治療法開発へ向けてのALS病態解明】ALS運動ニューロンの選択的障害への小胞体ストレスの関与、グリア細胞を基盤とした炎症機転へのCD40の関与、ミトコンドリアの活性酸素の除去機構として重要なMnSOD (SOD2)の病態への関与について新たな知見を得た。さらに、SOD1のCys111のSH基を特異的に保護する薬剤の開発、co-chaperoneであるMrjを使った新規治療法開発に向けての基礎研究を推進した。また、p62がオートファジーの欠損によるユビキチン化タンパク質の凝集体形成を引き起こす中心的な分子であることを明らかにした。【肝細胞増殖因子(HGF)による治療法開発】HGFの安全な投与法確立に向けてHGF/活性型リン酸化cMetシステムの評価を行いHGFの治療効果および安全性の根拠となる知見を得た。【遺伝子治療に向けたデリバリーシステムの確立】誘導型Cre recombinaseの発現をdoxycyclineによって制御するAAVベクターの開発、ポリオウイルスによる遺伝子デリバリーに向けての神経細胞毒性発現部位の同定、short hairpin RNAの安全な利用法の確立などにおいて重要な成果を挙げた。【ALS再生療法へ向けての基礎的研究】EGF+FGF2投与による内在性未分化神経幹細胞の増殖、ES細胞からの効率的なニューロスフェア誘導およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンをターゲットとした軸索再生許容環境の構築に成功した。【孤発性ALS疾患モデルの開発】dynactin1ノックダウン細胞培養システムおよびRNA編集酵素ADAR2の運動ニューロン選択的ノックアウトマウスによる孤発性ALS疾患モデルの開発も順調に進捗した。
結論
本研究によって新規治療法開発へ向けてのALSの病態解明がさらに進み、新たな分子標的が明らかになりつつある。さらにHGFによる治療、遺伝子治療、再生治療の分野でも新たな知見を得、孤発性ALSの疾患モデルの開発も順調に進んでいる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-01-23
更新日
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