急性高度難聴に関する調査研究

文献情報

文献番号
200633030A
報告書区分
総括
研究課題名
急性高度難聴に関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-021
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
喜多村 健(東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 務(名古屋大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 宇佐美 真一(信州大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 岡本 牧人(北里大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 暁 清文(愛媛大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 福田 諭(北海道大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 小川 郁(慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 佐藤 宏昭(岩手医科大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 福島 邦博(岡山大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 岩崎 聡(愛知医科大学医学部耳鼻咽喉科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 突発性難聴、急性低音障害型感音難聴、特発性両側性感音難聴の難聴発症メカニズムを解明して、標準的な治療方針を定めて、治療・予防を行う。
研究方法
 突発性難聴では、糖尿病の予後への影響を解析した。質問紙法による精神的ストレスの評価と免疫応答の調節に関与するNK細胞活性とIL-6を測定した。従来の治療法では聴力の回復が不良であった症例に、鼓室内ステロイド投与の有効性を検討した。急性低音障害型感音難聴は、予後不良例・長期観察例の臨床経過と、準確実例と診断した症例の臨床経過を検討した。プレドニゾロン、イソソルビド、ATPの3剤につき、単剤治療効果検討を引き続き施行した。無症候性先天性サイトメガロウイルス感染による難聴の解析に、妊婦12,599名を対象にして母子感染のProspective study を施行し、新生児尿で先天性サイトメガロウイルスDNA診断を施行した。突発性難聴内耳ならびに内リンパ水腫の画像診断を目的として、3T-MRI検査を施行した。一過性内耳虚血モデルで、虚血負荷後の低体温、Ginsenoside Rb1による内耳保護効果を解析した。
結果と考察
 糖尿病の合併により突発性難聴の回復は不良となるが、糖尿病そのものの影響でないと考察された。精神的ストレスと免疫応答の調節障害が突発性難聴の発症要因に関与していると推測された。鼓室内ステロイド注入は、高い聴力改善効果を示した。急性低音障害型感音難聴は、長期観察により予後不良となる症例が指摘された。また、準確実例と診断するには、経過観察が必要と判明した。無症候性先天性サイトメガロウイルス感染による難聴は、進行性・変動性・遅発性・改善など種々の経過を示した。3T-MRI検査により、突発性難聴の病態解明に寄与する画像、メニエール病では内リンパ水腫と推測される画像が得られた。一過性内耳虚血モデルの検討から、内耳虚血後に低体温にしても、内耳障害に対して有意な保護効果があると示された。音響暴露による難聴については、Ginkgo Biloba Extractの有用性が認められた。
結論
 突発性難聴の聴力レベルとNK細胞活性、IL-6値に相関が見られた。鼓室内ステロイド投与で有意な聴力改善が得られた。急性低音障害型感音難聴において、予後不良例がみられ、準確実例の診断にも経過観察が必要である。無症候性先天性サイトメガロウイルス感染症が新生児期の難聴の原因として重要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-