前庭機能異常に関する調査研究

文献情報

文献番号
200633029A
報告書区分
総括
研究課題名
前庭機能異常に関する調査研究
課題番号
H17-難治-一般-020
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
竹田 泰三(高知大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 池園 哲郎(日本医科大学 医学部 )
  • 伊藤 壽一(京都大学 医学部)
  • 久保 武(大阪大学 医学部)
  • 鈴木 衞(東京医科大学 医学部)
  • 工田 昌也(広島大学 医学部)
  • 武田 憲昭(徳島大学 医学部)
  • 古屋 信彦(群馬大学 医学部)
  • 山下 裕司(山口大学 医学部)
  • 渡辺 行雄(富山大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
メニエール病の発症・症状の悪化にストレスが深く関与していることは、臨床経験より以前から予測されてきた.本研究では、臨床経験より得られた印象の裏付けを得るため、易学的調査を行い、ストレスがメニエール病の病態に関与している実態を明確にすると同時に、ストレスがメニエール病の本態である内リンパ水腫の形成と進行に関わる機序を解明することを主目的とした.
研究方法
1)班員と研究協力者でメニエール病確実例に症例を限定して対処行動にターゲットを絞ってストレス調査を行った.2)メニエール病例で高値を示すストレスホルモンの1つであるADH(抗利尿ホルモン)がメニエール病例で高値を示す機序を探るべく、メニエール病症例のADHを計測して、日内変動、めまいとの関係、血漿浸透圧との関係などについて検討した.3)ストレスがストレスホルモンを介して内リンパ水腫形成に関与する機序を解明する目的でアクワポリン(AQP)水代謝機構を実験的に検討した.
結果と考察
メニエール病例の6割がメニエール病の発症と発作にストレスが関与しているとの結果を得た。ストレス調査では、メニエール病例には自己抑制(我慢)行動,熱中行動が強く,周囲の評価に敏感で,自分を抑えて仕事に励み,気分の転換や発散が下手な行動特性を持つことが浮き彫りになった.要するに、メニエール病患者はストレスに感じやすく、かつ、ストレスを昇華するのが苦手な特徴を有することが判明した。メニエール病症例では、血漿ADH値が有意に高いが、ADHの日内変動に特徴があること、血漿浸透圧の上昇とは無関係であること、めまい発作に伴う嘔気、嘔吐、頭痛などと関係のないことが判明した.また、血漿ADH値は内リンパ嚢手術の予後や再発を予見する良い指標になることも判明したが、メニエール病で、ストレスホルモンの1つであるADHが上昇する機序については今回の臨床調査でも特定できなかった.水代謝に重要な役割を担うアクワポリンは、蝸牛血管条ではAQP 1, 2, 3, 6, 7, 9が、内リンパ嚢ではAQP1, 2, 3, 4, 6, 7, 8, 9が発現することが分かった。 特に、血管条ではAQP系とNa-K-Cl共輸送体が相互補完して水代謝が行われていることが解明された.
結論
メニエール病では、ストレスがストレスホルモンを介して内耳に影響を及ぼして、症状の悪化をもたらすことが判明した.特に、ADHはメニエール病の成立に深く関与しており、ADHの上昇を制御することがメニエール病の治療では重要である.

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-