保健サービスの評価に関する研究

文献情報

文献番号
199700242A
報告書区分
総括
研究課題名
保健サービスの評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
西沢 芳子(国立療養所犀潟病院)
研究分担者(所属機関)
  • 武内廣盛(国立療養所犀潟病院)
  • 大村紘一(上越保健所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
1,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
痴呆ならびに精神障害者の疫学的な実態調査を行い、今後ますます増え続ける痴呆患者やその家族の安心な老後と、地域での精神障害者の満足のいく医療を行うために、医療圏の適性医療保健福祉配分の在り方を検討することが目的である。
また精神科地域医療の高度化を目指して、国立精神療養所の果たし得る役割を明確にしていくことも念頭に置いている。
研究方法
 1.犀潟病院の痴呆治療モデル病棟の入院患者の動向と退院後の動向の調査と在宅医療における介護問題の把握と施設入所の現状分析と問題提起を行った。
2.地域においては新潟県の高齢化の現状と社会医療福祉資源の現状分析を行った。
3.精神科領域の「地域医療高度化評価票」を作成し、また「WHO QOL-26」を用いて上越地域の精神障害者の社会福祉資源へのアンケート調査により現状分析・評価した。
4.上越保健所における高齢者医療対策と現状をまとめた。
結果と考察
 現在、犀潟病院は国立精神療養所の中で痴呆疾患治療モデル病棟として施設の充実を図っている。平成7年1月から12月末までの入院患者の疾患別男女比や入退院の動向を調べた。
入院患者は128人、延べ入院回数が155回で女性67人、男性61人であった。また疾患別に見ると、女性ではアルツハイマー病並びにアルツハイマー型痴呆が多く、男性でアルコール障害や頭部外傷など外因性の痴呆が多く見られ、くも膜下出血後遺症も男性に多く見られた。
入退院の動向は入院中が36名で、119名が退院された。退院の内訳は65名が自宅、5名が特別養護老人ホームや老人保健施設等の施設入所で、17名が総合病院への転院、18名が院内の転棟で精神科15名、神経内科2名、リハビリ科1名で、死亡が8名見られた。入院期間との関係は、1ヵ月以内の入院では比較的自宅に戻りやすく、長期になると自宅に戻りにくくなる傾向があった。また重症初回入院は合併症のため転院や死亡が早期に見られた。
次いで、新潟県は他県に先んじて高齢化が急速に進み、痴呆老人が急増している。
高齢者対策は新ゴールドプランに則っているが、日々直面する医療体制と医療保健福祉サービスの地域格差の問題、施設不足による在宅医療の諸問題等が指摘されている。
また高度化評価票の結果は、アルコール関連が低くデイケアは完成度が高く他は中間であった。
結論
1.早期発見・早期治療
重症初期入院や転院・死亡を出来るだけ減少させるために地域と密接に連絡を取り、軽度痴呆ならびに前期痴呆の患者を対象に痴呆の進行予防の治療を始めている。精神障害者も同様である。
2.理想的なモデル痴呆病棟としての構想
徘徊や精神症状のある痴呆患者と身体管理の寝たきり終末患者との混合を避け、出来るだけ独立した単独病棟が望ましい。
3.地域の啓蒙とネットワークの緊密
地域での痴呆ならびに精神障害者の対応について、社会医療資源の地域格差を是正するとともに充実を図り、患者にとってより良い医療と社会福祉資源の提供・対応をすべくネットワークの密な連絡が必要である。
全ての人が迎えていく老年期であり、人生の終末期の死を迎える時、また精神障害者が地域で生活していく時、現状を把握し日々更新して行ける保健医療サービスが望ましい。高度化の視点として、QOL、インフォームドコンセント、社会・医療・福祉との整合性を挙げた。そこで、医療保健サービスの評価を実態調査に即して明確にし、研究結果に基づいた適切な医療保健福祉を提供するよう指導支援することが肝要である。

公開日・更新日

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更新日
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