骨髄幹細胞移植による難治性血管炎への血管再生医療に関する多施設共同研究

文献情報

文献番号
200633008A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄幹細胞移植による難治性血管炎への血管再生医療に関する多施設共同研究
課題番号
H16-難治-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
池田 宇一(信州大学 大学院医学系研究科 臓器発生制御医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 弘明(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 室原 豊明(名古屋大学 大学院医学研究科)
  • 簑田 清次(自治医科大学 医学部)
  • 天野 純(信州大学 医学部)
  • 相澤 義房(新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 石ヶ坪良明(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 宮本 正章(日本医科大学 医学部)
  • 藤本 和輝(国立病院機構熊本医療センター 心臓血管センター)
  • 高橋 将文(信州大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 難治性血管炎は、特定疾患の一つに指定されており、特定従来の治療法が無効で指趾切断に至る症例も少なくない。本研究では、臨床試験によりバージャー病や膠原病に関連する難治性血管炎患者に対する自己骨髄細胞移植による血管再生療法の有効性と安全性を検証することを目的として研究を行った。
研究方法
 平成16年度から全国5施設で研究班を組織し本研究を開始し、平成18年度から4施設を加えて多施設臨床試験を行った。班施設で計126例の重症虚血指趾患者(閉塞性動脈硬化症[ASO] 76例、バージャー病40例、膠原病14例[強皮症(SSc)9例、CREST症候群2例、混合性結合組織病(MCTD)1例、結節性多発性動脈炎(PN)1例、抗リン脂質症候群(APS)1例]、その他7例)に自己骨髄細胞移植療法を施行した。また、TACT臨床試験におけるASOとバージャー病の本治療法の治療後2年までの臨床成績を集計してそれらの臨床経過や長期予後、有害事象についての解析を行った。評価項目としては、疼痛レベル(VAS)や上下肢血圧比(ABI)、潰瘍直径、歩行距離などについて検討した。
結果と考察
 班員施設での症例におけるバージャー病40例の有効率は96.3%であり、膠原病関連指趾虚血に対する有効率は71.4%であった。膠原病の中でも、強皮症では治療経過の違いはあるが、全例で皮膚潰瘍や疼痛などの症状の著明な改善を認めた。他の膠原病関連血管炎症例では非改善例が多く、今後の症例の積み重ねが重要であると考えられる。また、TACT臨床試験の2年後までの追跡調査により、ASO およびバージャー病における本治療後の予後としては、ABI、潰瘍サイズ、歩行距離などの指標は、移植後に有意に改善していたが、その改善度はASOでは経過と共に低下する傾向にあるが、バージャー病では治療効果が長期持続する傾向にあることを明らかとした。有害事象については、バージャー病で3例(4.6%:心筋梗塞、膵炎、胃癌が各1例)、ASOで11例(8.8%)を認めた。本研究により、ASOに比較してバージャー病のほうが骨髄幹細胞移植療法の治療効果が高く、治療効果も持続することが明らかとなった。一方、膠原病においては、強皮症による難治性皮膚潰瘍に対する有効な治療法となる可能性が示された。
結論
 バージャー病や膠原病による難治性血管炎による指趾の血行障害を有する患者に対して、自己骨髄幹細胞移植による血管再生療法の多施設臨床試験を行い、その有効性と安全性を検証した。本研究により、難治性血管炎に対する日本発の新たな治療法が確立されるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200633008B
報告書区分
総合
研究課題名
骨髄幹細胞移植による難治性血管炎への血管再生医療に関する多施設共同研究
課題番号
H16-難治-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
池田 宇一(信州大学 大学院医学系研究科 臓器発生制御医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 弘明(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 室原 豊明(名古屋大学 大学院医学研究科)
  • 簑田 清次(自治医科大学 医学部)
  • 天野 純(信州大学 医学部)
  • 相澤 義房(新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 石ヶ坪良明(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 宮本 正章(日本医科大学 医学部)
  • 藤本 和輝(国立病院機構熊本医療センター 心臓血管センター)
  • 高橋 将文(信州大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 難治性血管炎は、特定疾患の一つに指定されており、特定従来の治療法が無効で指趾切断に至る症例も少なくない。本研究では、臨床試験によりバージャー病や膠原病に関連する難治性血管炎患者に対する自己骨髄細胞移植による血管再生療法の有効性と安全性を検証することを目的として研究を行った。
研究方法
 平成16年度から全国5施設で研究班を組織し本研究を開始し、平成18年度から4施設を加えて多施設臨床試験を行った。班施設で計126例の重症虚血指趾患者(閉塞性動脈硬化症[ASO] 76例、バージャー病40例、膠原病14例[強皮症(SSc)9例、CREST症候群2例、混合性結合組織病(MCTD)1例、結節性多発性動脈炎(PN)1例、抗リン脂質症候群(APS)1例]、その他7例)に自己骨髄細胞移植療法を施行した。また、TACT臨床試験におけるASOとバージャー病の本治療法の治療後2年までの臨床成績を集計してそれらの臨床経過や長期予後、有害事象についての解析を行った。評価項目としては、疼痛レベル(VAS)や上下肢血圧比(ABI)、潰瘍直径、歩行距離などについて検討した。

結果と考察
 班員施設での症例におけるバージャー病40例の有効率は96.3%であり、膠原病関連指趾虚血に対する有効率は71.4%であった。膠原病の中でも、強皮症では治療経過の違いはあるが、全例で皮膚潰瘍や疼痛などの症状の著明な改善を認めた。他の膠原病関連血管炎症例では非改善例が多く、今後の症例の積み重ねが重要であると考えられる。また、TACT臨床試験の2年後までの追跡調査により、ASO およびバージャー病における本治療後の予後としては、ABI、潰瘍サイズ、歩行距離などの指標は、移植後に有意に改善していたが、その改善度はASOでは経過と共に低下する傾向にあるが、バージャー病では治療効果が長期持続する傾向にあることを明らかとした。有害事象については、バージャー病で3例(4.6%:心筋梗塞、膵炎、胃癌が各1例)、ASOで11例(8.8%)を認めた。本研究により、ASOに比較してバージャー病のほうが骨髄幹細胞移植療法の治療効果が高く、治療効果も持続することが明らかとなった。一方、膠原病においては、強皮症による難治性皮膚潰瘍に対する有効な治療法となる可能性が示された。

結論
 バージャー病や膠原病による難治性血管炎による指趾の血行障害を有する患者に対して、自己骨髄幹細胞移植による血管再生療法の多施設臨床試験を行い、その有効性と安全性を検証した。本研究により、難治性血管炎に対する日本発の新たな治療法が確立されるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200633008C