難治性重症型表皮水疱症の画期的治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
200633005A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性重症型表皮水疱症の画期的治療法の開発に関する研究
課題番号
H16-難治-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
清水 宏(北海道大学大学院医学研究科皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 澤村 大輔(弘前大学医学部皮膚科)
  • 古市 泰宏((株)ジーンケア研究所)
  • 秋山 真志(北海道大学大学院医学研究科皮膚科学分野)
  • 阿部 理一郎(北海道大学北海道大学病院皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、合成VII型コラーゲン蛋白を補充するという新しい発想に基づく治療法を実現し、さらに骨髄移植を行い、移植された骨髄幹細胞より分化した皮膚細胞からVII型コラーゲンを供給させるという表皮水疱症の画期的治療法を確立することである。
研究方法
1)種々の患者の遺伝子変異検索を行った。2)表皮水疱症モデルとなるXVII型コラーゲン(COL17)遺伝子ノックアウトマウスを作成した。3)16歳男性の栄養障害型表皮水疱症患者の潰瘍部にヒトリコンビナントVII型コラーゲンを局注した。4)重症型表皮水疱症患者から得られた,培養表皮細胞と線維芽細胞に、レトロウィルスを用いて正常なVII型コラーゲン遺伝子を導入した。遺伝子導入表皮細胞と無処置線維芽細胞、無処置表皮細胞と遺伝子導入線維芽細胞の人工皮膚を作成し、無免疫動物にそれらを移植した。5)創傷治癒過程の皮膚における細胞遊走因子のスクリーニングを行い、候補となる遊走因子の同定を試みた。
結果と考察
1)新規症例において遺伝子変異を見出し,治療に対する準備を行った。また,新しいプレクチン遺伝子の変異で生ずる新規病型を見出した。2)新生児COL17 KOマウス皮膚は外的刺激によって容易に剥離可能であり、手足には水疱形成を認めた。表皮水疱症モデルマウスの多くはヒトの臨床形に比較し重症化する傾向があり、大人になるまで成長するものは殆ど無く,今後表皮水疱症の病態解明と新規治療法開発に非常に有用であると思われる。3)ヒトリコンビナントVII型コラーゲン投与によって,局所や全身の副作用は認められなかった。また,投与部位で潰瘍の縮小が認められた。4) VII型コラーゲンの発現を検討した所,遺伝子導入線維芽細胞を組み合わせた人工皮膚移植による皮膚が最も基底膜に強くVII型コラーゲンが沈着していることが認められた。よって、線維芽細胞に遺伝子を導入した方がより基底膜にVII型コラーゲンを供給出来ることが判明した。5)皮膚創傷部位に特異的に発現し、かつ骨髄幹細胞の遊走を特異的に誘導する因子を同定した。この同定因子は生体内においても骨髄由来表皮細胞の数を増加させた。上記同定遊走因子を皮膚創傷部位に投与することにより、創傷治癒が有意に促進した。
結論
今回の研究で、VII型コラーゲン蛋白補充療法の有用性を確認し,表皮水疱症への骨髄移植療法の可能性を確認した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200633005B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性重症型表皮水疱症の画期的治療法の開発に関する研究
課題番号
H16-難治-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
清水 宏(北海道大学大学院医学研究科皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 澤村 大輔(弘前大学医学部皮膚科)
  • 古市 泰宏((株)ジーンケア研究所)
  • 秋山 真志(北海道大学大学院医学研究科皮膚科学分野)
  • 阿部 理一郎(北海道大学北海道大学病院皮膚科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、合成VII型コラーゲン蛋白を補充するという新しい発想に基づく治療法を実現し、さらに骨髄移植を行い、移植された骨髄幹細胞より分化した皮膚細胞からVII型コラーゲンを供給させるという表皮水疱症の画期的治療法を確立することである。
研究方法
1)種々の患者の遺伝子変異検索を行った。2) 表皮水疱症モデルとなるXVII型コラーゲン(COL17)遺伝子ノックアウトマウスを作成した。3)16歳男性の栄養障害型表皮水疱症患者の潰瘍部にヒトリコンビナントVII型コラーゲンを局注した。4)重症型表皮水疱症患者から得られた,培養表皮細胞と線維芽細胞に、レトロウィルスを用いて正常なVII型コラーゲン遺伝子を導入した。遺伝子導入表皮細胞と無処置線維芽細胞、無処置表皮細胞と遺伝子導入線維芽細胞の人工皮膚を作成し、無免疫動物にそれらを移植した。5)創傷治癒過程の皮膚における細胞遊走因子のスクリーニングを行い、候補となる遊走因子の同定を試みた。
結果と考察
1)新規症例において遺伝子変異を見出し,治療に対する準備を行った。また,新しいプレクチン遺伝子の変異で生ずる新規病型を見出した。2)新生児COL17 KOマウス皮膚は外的刺激によって容易に剥離可能であり、手足には水疱形成を認めた。表皮水疱症モデルマウスの多くはヒトの臨床形に比較し重症化する傾向があり、大人になるまで成長するものは殆ど無く,今後表皮水疱症の病態解明と新規治療法開発に非常に有用であると思われる。3)ヒトリコンビナントVII型コラーゲン投与によって,局所や全身の副作用は認められなかった。また,投与部位で潰瘍の縮小が認められた。4) VII型コラーゲンの発現を検討した所,遺伝子導入線維芽細胞を組み合わせた人工皮膚移植による皮膚が最も基底膜に強くVII型コラーゲンが沈着していることが認められた。よって、線維芽細胞に遺伝子を導入した方がより基底膜にVII型コラーゲンを供給出来ることが判明した。5)皮膚創傷部位に特異的に発現し、かつ骨髄幹細胞の遊走を特異的に誘導する因子を同定した。この同定因子は生体内においても骨髄由来表皮細胞の数を増加させた。上記同定遊走因子を皮膚創傷部位に投与することにより、創傷治癒が有意に促進した。
結論
今回の研究で、VII型コラーゲン蛋白補充療法の有用性を確認し,表皮水疱症への骨髄移植療法の可能性を確認した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200633005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1)研究目的の成果
 ヒトVII型コラーゲン産生細胞の大量培養と大量生産にはじめて成功した。また,皮膚創傷部位への特異的な遊走を誘導する、骨髄由来表皮細胞特異的遊走因子を同定した。よって,目標は概ね達成した。
2)研究成果の学術的・国際的・社会的意義
 ヒトVII型コラーゲンの蛋白補充療法が臨床的に有用であることが示された学術的意義は計り知れない。また,骨髄由来表皮細胞を遊走させる因子を同定し,治療実験に使用可能な,表皮水疱症モデルマウスを確立した点も学術的意義,国際的意義は大きい。
臨床的観点からの成果
1)研究目的の成果
 ヒトリコンビナントVII型コラーゲンを実験動物に投与することにより,基底膜への沈着を認めたが,動物への副作用はなかった。表皮水疱症患者へのヒトリコンビナントVII型コラーゲンの臨床治験を初めて行った。結果、副作用はなく,ある程度の効果が認められた。
2)研究成果の臨床的・国際的・社会的意義
 本研究による成果は世界で唯一であり,表皮水疱症を研究する世界の研究者にとって非常に重要である。表皮水疱症患者は,全世界に万遍なく分布するので,本研究の臨床的な国際的社会的意義も高い。
ガイドライン等の開発
 今回の研究は新規治療法の開発のため,ガイドライン作成は行っていない。将来,ヒトリコンビナントVII型コラーゲン療法の治療症例が増加すれば,本治療の適応ガイドラインを作成する予定である。
その他行政的観点からの成果
 本研究により、表皮水疱症の新しい治療法が将来確立されれば、本症患者や家族が苦しみから救われQOLが著しく改善されるため、国民の健康・医療・福祉の向上等の面から必要な研究と言える。また、蛋白補充,遺伝子治療,再生治療といった新しい視点から発展させる療法であり、医学の発展や進歩へも多大な貢献となると確信する。そのため、行政的観点からの成果も計り知れない。
その他のインパクト
 このような蛋白補充療法や骨髄細胞を表皮細胞に変える新しい発想に基づく治療法は,表皮水疱症はもとより,他の重症,難治性遺伝性皮膚疾患に応用可能である。また,多臓器を母地とするような疾患に対しても有効である可能性もあり,他分野に及ぼすインパクトも大きい。

発表件数

原著論文(和文)
51件
原著論文(英文等)
140件
その他論文(和文)
13件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
181件
学会発表(国際学会等)
60件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計2件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Abe R, Shimizu T, Shimizu H, et al.
Overexpression of pigment epithelium-derived factor decreases angiogenesis and inhibits the growth of human malignant melanoma cells in vivo.
Am J Pathol , 164 , 1225-1232  (2004)
原著論文2
Nakamura H, Sawamura D, Shimizu H, et al.
The G2028R glycine substitution mutation in COL7A1 leads to marked inter-familiar clinical heterogeneity in dominant dystrophic epidermolysis bullosa.
J Dermatol Sci , 34 , 195-200  (2004)
原著論文3
Tsuji-Abe Y, Akiyama M, Shimizu H, et al.
DNA-based prenatal exclusion of bullous congenital ichthyosiform erythroderma at the early stage, 10 to 11 weeks' of pregnancy, in two consequent siblings.
J Am Acad Dermatol , 51 , 1008-1011  (2004)
原著論文4
Akiyama M, Sugiyama-Nakagiri Y,Shimizu H, et al.
Mutations in lipid transporter ABCA12 in harlequin ichthyosis and functional recovery by corrective gene transfer.
J Clin Invest , 115 , 1777-1784  (2004)
原著論文5
Nakamura H, Sawamura D, Shimizu H, et al.
Epidermolysis bullosa simplex associated with pyloric atresia is a novel clinical subtype caused by mutations in the plectin gene (PLEC1).
J Mol Diagn , 7 , 28-35  (2005)
原著論文6
Sawamura D, Abe R, Shimizu H, et al.
Direct injection of plasmid DNA into the skin induces dermatitis by activation of monocytes through toll-like receptor 9.
J Gene Med , 7 , 664-671  (2005)
原著論文7
Sawamura D, Akiyama M, Shimizu H, et al.
Beta defensin-3 engineered epidermis shows highly protective effect for bacterial infection.
Gene Ther , 12 , 857-861  (2005)
原著論文8
Sawamura D, Goto M, Shimizu H, et al.
Genetic studies of 20 Japanese families of dystrophic epidermolysis bullosa.
J Hum Genet , 50 , 543-546  (2005)
原著論文9
Goto M, Sawamura D, Shimizu H, et al.
Fibroblasts show more potential as target cells than keratinocytes in COL7A1 gene therapy of dystrophic epidermolysis bullosa.
J Invest Dermatol , 126 , 766-772  (2006)
原著論文10
Goto M, Sawamura D, Shimizu H, et al
Targeted Skipping of a Single Exon Harboring a Premature Termination Codon Mutation: Implications and Potential for Gene Correction Therapy for Selective Dystrophic
J Invest Dermatol , 126 , 2614-2620  (2006)
原著論文11
Inokuma D, Abe R, Shimizu H, et al.
CTACK/CCL27 accelerates skin regeneration via accumulation of bone marrow derived-keratinocytes.
Stem Cells , 24 , 2810-2816  (2006)
原著論文12
McMillan JR, Akiyama M, Shimizu H, et al.
Colocalization of multiple laminin isoforms predominantly beneath hemidesmosomes in the upper lamina densa of the epidermal basement membrane.
J Histochem Cytochem , 54 , 109-118  (2006)
原著論文13
Ota M, Sawamura D, Shimizu H, et al.
A unique monoclonal antibody 29A stains the cytoplasm of amniotic epithelia and cutaneous basement membrane.
J Dermatol Sci , 42 , 23-29  (2006)
原著論文14
Sawamura D, Mochitomi Y, Shimizu H, et al.
Glycine substitution mutations by different amino acids at the same codon in COL7A1 cause different modes of dystrophic epidermolysis bullosa inheritance.
Br J Dermatol , 155 , 834-837  (2006)
原著論文15
Sawamura D, Nizeki H, Shimizu H, et al.
A novel indel COL7A1 mutation 8068del17insGA causes dominant dystrophic epidermolysis bullosa.
Br J Dermatol , 154 , 995-997  (2006)
原著論文16
Sawamura D, Akiyama M, Shimizu H, et al.
COL7A1 mutation G2037E causes epidermal retention of type VII collagen.
J Hum Genet , 51 , 418-423  (2006)
原著論文17
Sugiyama-Nakagiri Y, Akiyama M, Shimizu H
Hair follicle stem cell-targeted gene transfer and reconstitution system.
Gene Ther , 13 , 732-737  (2006)
原著論文18
Tomita Y, Akiyama M, Shimizu H
PDGF isoforms induce and maintain anagen phase of murine hair follicles.
J Dermatol Sci , 43 , 105-115  (2006)
原著論文19
Yasukawa K, Sawamura D, Shimizu H, et al.
Epidermolysis bullosa simplex in Japanese and Korean patients: genetic studies in 19 cases.
Br J Dermatol , 155 , 313-317  (2006)
原著論文20
Nishie W, Sawamura D, Shimizu H, et al.
Humanization of autoantigen.
Nat Med , 13 (3) , 378-383  (2007)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-