健康診査における問診および検査方法の精度向上に関する研究

文献情報

文献番号
199700240A
報告書区分
総括
研究課題名
健康診査における問診および検査方法の精度向上に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
多田羅 浩三(大阪大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 柳川洋(自治医科大学)
  • 鏡森定信(富山医科薬科大学医学部)
  • 西信雄(宝塚市立健康センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
老人保健法に基づく基本健康診査については、「老人保健法による健康診査マニュアル(第2版)」等により、全国で一定の水準で実施されるよう図られている。しかし生活習慣病対策が重要となっている現在、受診者の生活習慣に関連した健康状態を健診で的確に把握し、評価できているかどうかは明らかでない。そこで本研究は市町村における健康診査の問診および検査方法の実態を調査し、精度向上のための方策を明らかにすることを目的として実施した。
研究方法
1)問診の精度向上に関する研究 全国の市町村(特別区を含む)から無作為抽出した500市町村に対し、平成9年12月、「老人保健法における基本健康診査の問診と生活習慣改善指導事業に関する実態調査」のアンケートを郵送で行った。集団検診方式で健康診査を行っている市町村からは実際の問診票も同時に回収した。
2)検査方法の精度向上に関する研究 生活習慣病のうち、高脂血症、糖尿病に関する血液検査、すなわち総コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、血糖、HbA1cの精度を検討するため以下の研究を行った。平成9年度の兵庫県A市で1,571人を対象として実施した健診において、?検査当日に2検体分の採血を行い、1検体を氏名、個人番号等を伏せて検査機関(大阪府内のB社)に提出して検査結果を比較する分析と、?2~4週間後に再度健診を行い、検査の再現性を調査する分析を実施した。無作為抽出により?の分析で89人、?の分析で88人の協力を得て研究を実施した。
結果と考察
1)問診の精度向上に関する研究 アンケートは388市町村から回答を得た。問診票もあわせて回答した市町村数は241であった。この241市町村のうち90市町村の問診票には喫煙、飲酒以外の生活習慣に関する問診はなく、残る151市町村では、栄養、運動、休養に関して、それぞれ147、85、55市町村で問診を実施していた。問診の内容をみると、市町村間で質、量ともに格差がみられ、特に栄養問診では、単に食事に対する意識を問うものから、数種の食品の摂取頻度を聞くものまで市町村間でばらつきがあった。生活習慣に関する問診において市町村間で質、量ともに格差がみられたことから、生活習慣改善指導事業での問診の活用にも格差があることがうかがわれた。
2)検査方法の精度向上に関する研究 ?の方法による2検体の検査結果の比較では、総コレステロールでは2検体それぞれの平均値(標準偏差)が199.6(30.6)と199.6(30.7)で相関係数は0.999であった。他の項目においても0.99以上の高い相関が得られた。以上のように、?の方法により検査精度が高いことが確認されたB社において、?の研究を行ったが、2~4週間の間隔をあけた2回の検査結果の相関は、HDLコレステロールで最も高く0.91で、空腹時血糖で最も低く0.53であった。糖尿病に関する検査では、HbA1cで相関係数が0.80で空腹時血糖より再現性が高いことが確認された。以上より、検査機関の精度を確認した上で、検査項目の特性をふまえた判定が必要であることが示された。
結論
基本健診において生活習慣に関する標準的な問診を早急に作成すること、検査項目による再現性の差違をふまえて判定、指導を行っていくことが、今後の生活習慣病対策を進めるために重要である。

公開日・更新日

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更新日
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