難治性皮膚疾患(重症多形滲出性紅斑(急性期)を含む)の画期的治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200633004A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性皮膚疾患(重症多形滲出性紅斑(急性期)を含む)の画期的治療法に関する研究
課題番号
H16-難治-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 公二(愛媛大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 玉井 克人(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 岡野 栄之(慶応義塾大学医学部)
  • 飯島 正文(昭和大学医学部)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 塩原 哲夫(杏林大学医学部)
  • 木下 茂(京都府立医科大学)
  • 相原 雄幸(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
  • 岸本 治郎(資生堂ライフサイエンスセンター)
  • 森田 栄伸(島根大学医学部)
  • 白方 裕司(愛媛大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
38,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は難治性皮膚疾患に対する画期的治療法の確立である。①付属器を備えた培養皮膚の開発、②栄養障害型先天性表皮水疱症に対しては培養皮膚を用いた治療法、遺伝子治療法の開発、③重症多形滲出性紅斑(急性期)については診断基準、重症度基準、治療ガイドラインの整備と、画期的治療法の開発を行う。
研究方法
毛乳頭細胞を効率よく培養できる培養液の開発を行った。ヒト表皮角化細胞のSP細胞を長期間継代し、その増殖能について解析した。羊膜付き三次元皮膚をマウスへ移植し、その有用性についてin vivoにて検討した。GFP遺伝子トランスジェニックマウス(♂)より骨髄を採取し、野生型同系マウス(♀)に移植してGFP-BMTマウスを作成した。新生マウス(♀)皮膚をGFP-BMTマウス背部皮膚に移植し、GFP陽性表皮細胞の有無、およびFISH法による性染色体数およびその種類を検討した。重症多形滲出性紅斑(急性期)の診断基準2005、重症度スコア案を基に治療ガイドライン案を作成した。
結果と考察
角化細胞の幹細胞候補であるSP細胞とmain population細胞をソーティングし、それぞれの分画を培養し、継代を繰り返したところ、初期の増殖能はSP細胞が優れていたが、長期にわたる培養ではMP細胞のほうが増殖能は勝っていた。毛乳頭細胞を効率よく増殖させることができる低血清の線維芽細胞培養用培地を開発した。また、Wnt経路の擬似活性化剤の添加により、毛乳頭マーカー遺伝子の発現が亢進されることを見出した。羊膜付き三次元培養皮膚を開発し、その生着性、有効性をin vivoで確認した。新たな再生医療として、骨髄間葉系幹細胞が創傷部へ遊走し、表皮角化細胞へと分化し、表皮を再生しうることをマウスの移植系を用いて明らかにした。重症多形滲出性紅斑治療ガイドライン案を作成した。この成果は今後の診断、治療、重症度判定に有用であると思われる。
結論
本研究により重症多形滲出性紅斑治療ガイドライン案を作成した。難治性皮膚疾患に対する画期的治療法として、羊膜付き三次元培養皮膚の有用性を示し、それをさらに発展するための幹細胞の分離・維持の必要性が明らかとなった。骨髄間葉系幹細胞を用いた新たな皮膚再生医療は、今後の遺伝子治療の発展にも役立つものと考える。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

文献情報

文献番号
200633004B
報告書区分
総合
研究課題名
難治性皮膚疾患(重症多形滲出性紅斑(急性期)を含む)の画期的治療法に関する研究
課題番号
H16-難治-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 公二(愛媛大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 玉井 克人(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 岡野 栄之(慶應義塾大学医学部)
  • 飯島 正文(昭和大学医学部)
  • 池澤 善郎(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 塩原 哲夫(杏林大学医学部)
  • 木下 茂(京都府立医科大学)
  • 森田 栄伸(島根大学医学部)
  • 大橋 裕一(愛媛大学大学院医学系研究科)
  • 相原 雄幸(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
  • 岸本 治郎(資生堂ライフサイエンスセンター)
  • 白方 裕司(愛媛大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は難治性皮膚疾患に対する画期的治療法の確立である。①付属器を備えた培養皮膚の開発、表皮幹細胞の分離法の開発、②栄養障害型先天性表皮水疱症に対しては培養皮膚を用いた治療法、遺伝子治療法の開発、免疫寛容誘導法の開発、新たな再生医療法の開発、③重症多形滲出性紅斑(急性期)については診断基準、重症度基準、治療ガイドラインの整備と、画期的治療法の開発を行う。
研究方法
毛乳頭細胞を効率よく培養できる培養液の開発を行う。ヒト表皮角化細胞としてのSP細胞を分離し、機能を解析する。動物由来材料を使用しない完全無血清培養液を開発する。羊膜を用いることで、優れた三次元皮膚の作製が可能かについて検討する。角化細胞および三次元培養皮膚への遺伝子導入法を検討する。遺伝子治療のための免疫寛容誘導法について検討する。骨髄細胞による表皮の再生について解析を進める。症例を詳細に検討することにより重症多形滲出性紅斑(急性期)の診断基準、重症度スコア、治療ガイドライン案を作成する。
結果と考察
難治性皮膚疾患に対する自己培養皮膚移植の確立のために、角化細胞の完全無血清培養法を確立し、自己三次元培養皮膚移植を施行し良好な結果を得た。さらに、正常皮膚に最も近い羊膜付き三次元培養皮膚を開発した。劣性栄養障害型表皮水疱症の遺伝子治療のために、生体皮膚への遺伝子導入法を確立し、Ⅶ型コラーゲン遺伝子発現ベクターを開発し、遺伝子治療に備えることができた。胎児皮膚への遺伝子導入を利用した免疫寛容誘導法を開発し遺伝子治療に備えることができた。幹細胞研究に関しては、骨髄間葉系幹細胞が表皮角化細胞へと分化誘導されることを示し、骨髄細胞を用いた皮膚再生医療の可能性が示唆された。皮膚付属器の培養として、毛包の再生に成功し、毛乳頭細胞の長期培養法を開発した。重症多形滲出性紅斑(急性期)については診断基準2005を作成し、重症度スコア案、治療指針案、診断マニュアルを作成した。
結論
難治性皮膚疾患に対する自己培養皮膚移植法を確立し、正常皮膚に近い羊膜付き三次元培養皮膚が開発できた。Ⅶ型コラーゲン遺伝子発現ベクターを開発し、遺伝子治療に備えることができた。胎児皮膚への遺伝子導入を利用した免疫寛容誘導法を開発し、遺伝子治療に備えることができた。重症多形滲出性紅斑(急性期)の診断基準、重症度スコア案、治療指針案を作成した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-02
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200633004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
栄養障害型表皮水疱症に対する遺伝子治療にむけて7型コラーゲン遺伝子をクローニングし、表皮角化細胞への遺伝子導入法を開発した。遺伝子治療の際に必要となる免疫寛容誘導法の基礎的知見を得ることができた。新たな表皮の再生法として骨髄間葉系幹細胞を用いた再生医療法を開発した。毛包付属器を有する培養皮膚の開発のために、表皮幹細胞の分離法について検討し、毛包誘導については毛乳頭細胞の長期培養法を確立した。
臨床的観点からの成果
栄養障害型表皮水疱症患者に対して培養表皮シート移植法を確立し、その有効性を示すことができた。さらに高度な培養皮膚として、三次元培養皮膚移植法を確立し、その有用性を確認できた。この三次元培養皮膚をさらに改良し、羊膜を併用することにより機能的に優れた培養皮膚を作製する方法を生み出した。培養法の改善として、動物由来材料を使用しない安全な無血清培養法を開発することができた。
ガイドライン等の開発
重症多形滲出性紅斑(急性期)(Stevens Johnson syndrome, toxic epidermal necrolysis, drug-induced hypersensitivity syndrome)の診断基準2005を作成した。この診断基準をもとに、多数の症例を詳細に検討し、重症度スコア案、治療ガイドライン案を作成した。また、診断マニュアルを完成させ、難病情報センターウェブサイトにて公開した。
その他行政的観点からの成果
重症多形滲出性紅斑(急性期)の疫学調査のために、ケースカード登録票の原案を作成し、ウェブ登録の可能性について検討した。特定の遺伝子の関与についてDNA多型と重症多形滲出性紅斑(急性期)の発症及び病態との関連を検索し、現時点では明らかになっていない遺伝的背景を同定するために、ゲノム解析を開始した。
その他のインパクト
培養皮膚移植、再生医療についてテレビ取材を受け、放映された(2局)。

発表件数

原著論文(和文)
25件
原著論文(英文等)
250件
その他論文(和文)
103件
その他論文(英文等)
8件
学会発表(国内学会)
63件
学会発表(国際学会等)
51件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yang L, Shirakata Y, Shudou M, et al.
New skin-equivalent model from de-epithelialized amnion membrane.
Cell and Tissue Research , 326 (1) , 69-77  (2006)
原著論文2
Yang L, Yamasaki K, Shirakata Y, et al.
Bone morphogenetic protein-2 modulates Wnt and frizzled expression and enhances the canonical pathway of Wnt signaling in normal keratinocytes.
Journal of Dermatological Science , 42 (2) , 111-119  (2006)
原著論文3
Yahata Y, Shirakata Y, Tokumaru S, et al.
A novel function of angiotensin II in skin wound healing: Induction of fibroblast and keratinocyte migration by angiotensin II via HB-EGF-mediated EGF receptor transactivation.
Journal of Biological Chemistry , 281 (19) , 13209-13216  (2006)
原著論文4
Sayama K, Hanakawa Y, Nagai H, et al.
Transforming growth factor-beta-activated kinase 1 is essential for differentiation and the prevention of apoptosis in epidermis.
Journal of Biological Chemistry , 281 (31) , 22013-22020  (2006)
原著論文5
Shirakata Y, Kishimoto J, Tokumaru S, et al.
Epiregulin, a member of the EGF family, is over-expressed in psoriatic epidermis.
Journal of Dermatological Science , 45 (1) , 69-72  (2007)
原著論文6
Komatsuzawa H, Ouhawa K, Yamada S, et al.
Innate defences against methicillin-resistant staphylococcus aureus(MRSA) infection.
Journal of Pathology , 208 (2) , 249-260  (2006)
原著論文7
Niiya H, Lei J, Guo Y, et al.
Human herpesvirus 6 impairs differentiation of monocytes to dendritic cells.
Experimental Hematology , 34 (5) , 642-653  (2006)
原著論文8
Yoshida M, Hamada T, Amagai M, et al.
Enzyme-linked immunosorbent assay using bacterial recombinant proteins of human BP-230 as a diagnostic tool for bullous pemphigoid.
Journal of Dermatological Science , 41 (1) , 21-30  (2006)
原著論文9
Kunugiza Y, Tomita N, Taniyama Y, et al.
Acceleration of wound healing by combined gene transfer of hepatocyte growth factor and prostacyclin synthase with Shima Jet.
Gene Therapy , 13 (15) , 1143-1152  (2006)
原著論文10
Kano Y, Seishima M, Shiohara T
Hypogammaglobulinemia as an early sign of drug-induced hypersensitivity syndrome.
Journal of American Academy of Dermatology , 55 (6) , 727-728  (2006)
原著論文11
Kano Y, Teraki Y, Shiohara T.
Dramatic improvement of psoriatic erythroderma after acute hepatitis: analysis of cytokine synthesis capability in peripheral blood T cells.
British Journal of Dermatology , 155 (2) , 455-459  (2006)
原著論文12
Ueta M, Sotozono C, Tokunaga K, et al.
Strong association between HLA-A*0206 and Stevens-Johnson syndrome in the Japanese.
American Journal of Ophthalmology , 143 (2) , 367-368  (2007)
原著論文13
Ang LP, Sotozono C, Koizumi N, et al.
A comparison between cultivated and conventional limbal stem cell transplantation for Stevens-Johnson syndrome.
American Journal of Ophthalmology , 143 (1) , 178-180  (2007)
原著論文14
Kaido M, Dogru M, Yamada M, et al.
Functional visual acuity in Stevens-Johnson syndrome.
American Journal of Ophthalmology , 142 (6) , 917-922  (2006)
原著論文15
Hanakawa Y, Shirakata Y, Nagai H, et al.
Cre-loxP adenovirus-mediated foreign gene expression in skin-equivalent keratinocytes.
British Journal of Dermatology , 152 (6) , 1391-1392  (2005)
原著論文16
Shirakata Y, Kimura R, Nanba D, et al.
Heparin-binding EGF-like growth factor accelerates keratinocyte migration and skin wound healing.
Journal of Cell Science , 118 (11) , 2363-2370  (2005)
原著論文17
Sayama K, Komatsuzawa H, Yamasaki K, et al.
ASK1-mediated keratinocyte differentiation regulates the expression of ß-defensins, LL37, and TLR2.
European Journal of Immunology , 35 (6) , 1886-1895  (2005)
原著論文18
Yang L, Shirakata Y, Tamai K, et al.
Microbubble-enhanced ultrasound for gene transfer into living skin equivalents.
Journal of Dermatological Science , 40 (2) , 105-114  (2005)
原著論文19
Tokumaru S, Sayama K, Shirakata Y, et al.
Induction of keratinocyte migration via transactivation of the EGF receptor by the antimicrobial peptide LL-37.
Journal of Immunology , 175 (7) , 4662-4668  (2005)
原著論文20
Shirakata Y, Ueno H, Hanakawa Y, et al.
TGF-beta is not involved in early phase growth inhibition of keratinocytes by 1alpha,25(OH)2vitamin D3.
Journal of Dermatological Science , 36 (1) , 41-50  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
-