特発性大腿骨頭壊死症の予防と治療の標準化を目的とした総合研究

文献情報

文献番号
200633003A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性大腿骨頭壊死症の予防と治療の標準化を目的とした総合研究
課題番号
H16-難治-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
久保 俊一(京都府立医科大学大学院医学研究科運動器機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 高岡 邦夫(大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学)
  • 廣田 良夫(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 進藤 裕幸(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科発生分化機能再建学講座構造病態整形外科学)
  • 長澤 浩平(佐賀大学医学部膠原病リウマチ内科)
  • 松野 丈夫(旭川医科大学整形外科)
  • 松本 俊夫(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部プロテオミクス医科学部門生体制御医学講座生体情報内科学)
  • 松本 忠美(金沢医科大学運動機能病態学(整形外科学))
  • 渥美 敬(昭和大学藤が丘病院整形外科)
  • 吉村 了勇(京都府立医科大学大学院医学研究科移植・再生制御外科学)
  • 佛淵 孝夫(佐賀大学医学部整形外科)
  • 遠藤 直人(新潟大学大学院医歯学総合研究科機能再建医学講座整形外科学分野)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所核内情報研究分野)
  • 田中 良哉(産業医科大学第一内科学)
  • 安永 裕司(広島大学大学院医歯薬学総合研究科人工関節・生体材料学講座)
  • 大園 健二(関西労災病院整形外科)
  • 長谷川 幸治(名古屋大学大学院医学系研究科機能構築医学専攻運動・形態外科学整形外科学)
  • 神宮司 誠也(九州大学大学院医学研究院臨床医学部門整形外科学分野)
  • 小林 千益(信州大学医学部運動機能学講座)
  • 中島 滋郎(大阪大学大学院医学系研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学小児科学)
  • 菅野 伸彦(大阪大学大学院医学系研究科臓器制御医学専攻器官制御外科学講座)
  • 田中 栄(東京大学医学部附属病院整形外科)
  • 山路 健(順天堂大学医学部膠原病内科)
  • 藤岡 幹浩(京都府立医科大学大学院医学研究科運動器機能再生外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
24,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性大腿骨頭壊死症は股関節の機能が障害される難治性疾患であり、ステロイド投与に関係した側面があることは大きな問題である。本研究では病態の解明を目指すことに加えて、信頼性の高い予防法を開発することと、確実な診断法および機能回復・再生を目指した合理的な治療法を確立することを目的とする。
研究方法
疫学特性を把握するために疫学調査を行った。病態の解明のためにステロイドの微小循環に対する作用に関する基礎的研究を行い、動物モデルを確立した。予防ではステロイド剤投与の個別化を目的としたステロイド感受性の遺伝子レベルでの検索と血液凝固能や脂質代謝異常の抑制による予防法の開発を進めた。治療の標準化では診断基準の適正化を図り、コンピュータ手術シミュレーションによる適切な手術法の決定や、手術を安全で正確に行うためのコンピューター手術支援システムの開発、再生医療を用いた低侵襲治療法の開発を研究の重点領域とした。
結果と考察
年間受療患者数は11,400人、年間新患数は2,220人と推定された。ステロイド投与の真のリスクがOR 28.6と算出された。NO bioavailability低下で生じる酸化ストレス亢進による血管内皮機能障害をスタチンが改善することを証明した。高濃度ステロイドによる内皮細胞の増殖抑制とapoptosis誘導をC型ナトリウム利尿剤ペプチドで抑制できた。抗酸化剤である還元型グルタチオンで動物モデルの壊死発生率を有意に低下させた。これらの具体的な薬剤が臨床的予防薬として使用できる可能性が判明した。多施設共同前向き臨床研究でスタチンが有効な予防薬となる可能性が判明した。肝CYP3A活性低値はリスクを約9倍上昇させることを証明した。3つの遺伝子多型の総合解析の結果、組合せによってリスクが約23倍になるハイリスクグループが存在することが明らかになった。骨頭温存手術症例913関節の臨床情報を収集し、その実態と問題点を明らかにした。また、人工物置換症例1,370関節を登録して成績と予後に影響を与える危険因子を解明した。
結論
疫学調査、病態解析、予防法の開発、診断基準の妥当性の検証、コンピュータ手術支援システムの開発、治療の標準化などの各項目で本年度の目標は達成できた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200633003B
報告書区分
総合
研究課題名
特発性大腿骨頭壊死症の予防と治療の標準化を目的とした総合研究
課題番号
H16-難治-一般-003
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
久保 俊一(京都府立医科大学大学院医学研究科運動器機能再生外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 高岡 邦夫(大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学)
  • 廣田 良夫(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)
  • 進藤 裕幸(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科発生分化機能再建学講座構造病態整形外科学)
  • 長澤 浩平(佐賀大学医学部膠原病リウマチ内科)
  • 松野 丈夫(旭川医科大学整形外科)
  • 松本 俊夫(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部プロテオミクス医科学部門生体制御医学講座生体情報内科学)
  • 松本 忠美(金沢医科大学運動機能病態学(整形外科学))
  • 渥美 敬(昭和大学藤が丘病院整形外科)
  • 吉村 了勇(京都府立医科大学大学院医学研究科移植・再生制御外科学)
  • 佛淵 孝夫(佐賀大学医学部整形外科)
  • 遠藤 直人(新潟大学大学院医歯学総合研究科機能再建医学講座整形外科学分野)
  • 加藤 茂明(東京大学分子細胞生物学研究所核内情報研究分野)
  • 田中 良哉(産業医科大学第一内科学)
  • 安永 裕司(広島大学大学院医歯薬学総合研究科人工関節・生体材料学講座)
  • 大園 健二(関西労災病院 整形外科)
  • 長谷川 幸治(名古屋大学大学院医学系研究科機能構築医学専攻運動・形態外科学整形外科学)
  • 神宮司 誠也(九州大学大学院医学研究院臨床医学部門整形外科学分野)
  • 小林 千益(信州大学医学部運動機能学講座)
  • 中島 滋郎(大阪大学大学院医学系研究科内科系臨床医学専攻情報統合医学小児科学)
  • 菅野 伸彦(大阪大学大学院医学系研究科臓器制御医学専攻器官制御外科学講座)
  • 田中 栄(東京大学医学部附属病院整形外科)
  • 山路 健(順天堂大学医学部膠原病内科)
  • 藤岡 幹浩(京都府立医科大学大学院医学研究科運動器機能再生外科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性大腿骨頭壊死症に対する安全で信頼性の高い予防法を開発して臨床応用すること、そして世界に通用する確実な診断基準を確立して、機能再生を目指した医療経済学的に合理的な治療法を開発することを目的とする。
研究方法
疫学調査では全国疫学調査と定点モニタリングによって記述疫学特性の経年変化を把握し、多施設共同症例・対照研究を用いた分析疫学的手法で発生要因を解析した。予防では脂質代謝異常の抑制やステロイド剤投与の個別化を目的としたステロイド感受性の遺伝子レベルでの検索による安全で信頼性の高い予防法の開発を行った。治療の標準化では診断基準の適正化を図り、現行の治療法である骨頭温存手術と人工物置換術を厳密に評価した。また、コンピューター手術支援システムと再生医療を用いた低侵襲治療法の開発を進めた。
結果と考察
年間受療患者数は11,400人、年間新患数は2,220人と推定された。ステロイド投与の真のリスクがOR 28.6と算出された。NO bioavailability低下で生じる酸化ストレス亢進による血管内皮機能障害をスタチンが改善することを証明した。高濃度ステロイドによる内皮細胞の増殖抑制とapoptosis誘導をC型ナトリウム利尿剤ペプチドで抑制できた。抗酸化剤である還元型グルタチオンで動物モデルの壊死発生率を有意に低下させた。これらの具体的な薬剤が臨床的予防薬として使用できる可能性が判明した。多施設共同前向き臨床研究でスタチンが有効な予防薬となる可能性が判明した。肝CYP3A活性低値はリスクを約9倍上昇させることを証明した。3つの遺伝子多型の総合解析の結果、組合せによってリスクが約23倍になるハイリスクグループが存在することが明らかになった。骨頭温存手術症例913関節の臨床情報を収集し、その実態と問題点を明らかにした。また、人工物置換症例1,370関節を登録して成績と予後に影響を与える危険因子を解明した。コンピュータ手術支援システムを臨床応用し、X線コントロールよりも正確なナビゲーションが可能で術前計画通りの手術が低侵襲に施行できることを証明した。骨髄単核球移植による臨床研究で骨壊死部の圧潰が進行しないことを確認した。
結論
疫学的研究、病態解析、予防法の開発、診断の妥当性の検証、コンピュータ手術支援システムの開発、治療の標準化などの各項目で研究目標は達成できた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-01-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200633003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
疫学像を国レベルで調査した例は海外になく、定点モニタリングシステムは世界最大の新患症例データベースであり、学術的意義が大きい。ステロイド投与の真の相対危険度を世界で初めて定量した。
臨床的観点からの成果
スタチンや還元型グルタチオンなどの具体的な薬剤が臨床的予防薬として使用できる可能性が判明した。エビデンスレベルの高い前向き臨床研究により有望な結果を得ている。骨頭温存手術と人工物置換術の登録監視システムを構築した。得られるデータはすぐに臨床にフィードバックできる情報である。コンピュータ手術支援システムの臨床応用も進み、正確なナビゲーションにより術前計画通りの手術が低侵襲に施行できることを証明した。
ガイドライン等の開発
現在の診断基準は感度、特異度ともに99%であることが検証され、精度の高い基準であるが、なお偽陰性や偽陽性も存在するため、妥当性と予後予測への有用性に関する臨床データを継続的に蓄積している。2004年度に改定したガイドラインをさらに更新して、行政および社会にとって安全かつ安心で質の高い医療サービスの効率的な提供を実現するための準備を行っている。
その他行政的観点からの成果
疫学調査によって記述疫学特性の経年変化が把握できており、行政的な取り組みの効果を客観的に検討できている。患者管理や疾病対策の観点から意義が大きい。遺伝子解析による発生予測マーカーの開発が進んでおり、大腿骨頭壊死症が発生してその治療が医療経済学的に問題となる前に予防して国民の健康レベルを向上させるいう目標に近づきつつある。
その他のインパクト
研究成果を広く普及させることは医療従事者、行政および国民のすべてが最適な医療を選択できるための情報提供の推進となる。日本国民の健康と安全を守るという大きな理念に向けて、多くの研究項目において十分な成果が挙げられつつある。これらの成果は基礎研究としての先進性を確保しつつ、画期的な予防や治療を可能にすることが予想され、国内はもとより国際的な評価にも耐えうる研究である。

発表件数

原著論文(和文)
176件
原著論文(英文等)
437件
その他論文(和文)
129件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
120件
学会発表(国際学会等)
56件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計5件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Asano T, Takahashi KA, Fujioka M et al.
Relationship between postrenal transplant osteonecrosis of the femoral head and gene polymorphisms related to the coagulation and fibrinolytic systems in Japanese subjects.
Transplantation , 77 (2) , 220-225  (2004)
原著論文2
Hirata T, Fujioka M, Takahashi KA et al.
Low molecular weight phenotype of Apo(a) is a risk factor of corticosteroid-induced osteonecrosis of the femoral head after renal transplant.
J Rheumatol , 34 (3) , 516-522  (2007)
原著論文3
Atsumi T, Kajiwara T, Hiranuma Y et al.
Posterior rotational osteotomy for nontraumatic osteonecrosis with extensive collapsed lesions in young patients.
J Bone Joint Surg Am , 88 (3) , 42-47  (2006)
原著論文4
Nagasawa K, Tada Y, Koarada S et al.
Very early development of steroid-associated osteonecrosis of femoral head in systemic lupus erythematosus: prospective study by MRI.
Lupus , 14 , 385-390  (2005)
原著論文5
Nagasawa K, Tada Y, Koarada S et al.
Prevention of steroid-induced osteonecrosis of femoral head in systemic lupus erythematosus by anti-coagulant.
Lupus , 15 , 354-357  (2006)
原著論文6
Kaneshiro Y, Oda Y, Iwakiri K et al.
Low hepatic cytochrome P450 3A activity is a risk for corticosteroid-induced osteonecrosis.
Clin Pharmacol Ther , 80 (4) , 396-402  (2006)
原著論文7
Ikeda Y, Aihara K, Sato T et al.
Androgen receptor gene knockout male mice exhibit impaired cardiac growth and exacerbation of angiotensin II-induced cardiac fibrosis.
J Biol Chem , 280 (33) , 29661-29666  (2005)
原著論文8
Kabata T, Kubo T, Matsumoto T et al.
Onset of steroid-induced osteonecrosis in rabbits and its relationship to hyperlipaemia and increased free fatty asids.
Rhumatology , 44 , 1233-1237  (2005)
原著論文9
Iwase T, Nagaya N, Fujii T et al.
Adrenomedullin enhances angiogenic potency of bone marrow transplantation in a rat model of hindlimb ischemia.
Circulation , 11 , 356-362  (2005)
原著論文10
Fukui K, Kominami R, Shinohara H et al.
Glucocorticoid induces micro-fat embolism in the rabbit: a scanning electron microscopic study.
J Orthop Res , 24 , 675-683  (2006)
原著論文11
Miyanishi K, Yamamoto T, Irisa T et al.
Effects of different corticosteroids on the development of osteonecrosis in rabbits.
Rheumatology , 44 , 332-336  (2005)
原著論文12
Motomura G, Yamamoto T, Miyanishi K et al.
Combined effects of an anticoagulant and a lipid-lowering agent on the prevention of steroid-induced osteonecrosis in rabbits.
Arthritis Rheum , 50 , 3387-3391  (2004)
原著論文13
Fukuda A, Hikita A, Wakeyama H et al.
Regulation of osteoclast apoptosis and motility by small GTPase binding protein Rac1.
J Bone Miner Res , 20 , 2245-2253  (2005)
原著論文14
Hikita A, Kadono Y, Chikuda H et al.
Identification of an alternatively spliced variant of CAPRI as a possible regulator of RANKL shedding.
J Biol Chem , 280 , 41700-41706  (2005)
原著論文15
Hikita A, Yana I, Wakeyama H et al.
Negative Regulation of Osteoclastogenesis by Ectodomain Shedding of Receptor Activator of NF-κB Ligand.
J Biol. Chem , 281 , 36846-36855  (2006)
原著論文16
Kono SJ, Oshima Y, Hoshi K et al.
Erk pathways negatively regulate matrix mineralization.
Bone , 40 , 68-74  (2007)
原著論文17
Wang B, Tsukada J, Higashi T et al.
Growth suppression of human mast cells expressing constitutively active c-kit receptors by JNK inhibitor SP600125
Genes Cells , 11 , 983-992  (2006)
原著論文18
Mine S, Okada Y, Tanikawa T et al.
Increased expression levels of monocyte CCR2 and monocyte chemoattractant protein-1 in patients with diabetes mellitus.
Biochem Biophy Res Commun , 344 , 780-785  (2006)
原著論文19
Tsukamoto H, Nagafuji K, Horiuchi T et al.
A phase I-II trial of autologous peripheral blood stem cell transplantation in the treatment of refractory autoimmune disease.
Ann Rheum Dis , 65 , 508-514  (2006)
原著論文20
Kishikawa H, Mine S, Kawahara C et al.
Glycated albumin and cross-linking of CD44 induce scavenger receptor 3 expression and uptake of oxidized LDL in human monocytes.
Biochem Biophy Res Commun , 339 , 846-851  (2006)

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-