自己免疫疾患に伴う中枢神経障害に関連する抗神経抗体の検索と抗原機能の解析:病態の解明から治療法確立に向けて

文献情報

文献番号
200632076A
報告書区分
総括
研究課題名
自己免疫疾患に伴う中枢神経障害に関連する抗神経抗体の検索と抗原機能の解析:病態の解明から治療法確立に向けて
課題番号
H18-こころ-若手-026
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
木村 暁夫(岐阜大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 犬塚 貴(岐阜大学大学院医学系研究科)
  • 保住 功(岐阜大学大学院医学系研究科)
  • 田中 優司(岐阜大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
全身性自己免疫疾患はしばしば中枢神経障害を合併することが知られており、その臨床症状も精神症状、痙攣、認知障害、運動麻痺など多岐にわたり、いずれも患者の予後を左右する重要な病態である。本研究は、これらの疾患を有する患者の検体を用いて、疾患特異的抗神経抗体の検出ならびにその認識抗原を同定し、新たな診断および治療法の開発を行うことを目的とする。
研究方法
1) 二次元免疫ブロット法により中枢神経障害を合併したCNSループス患者の血清より、ラット脳蛋白と免疫学的に反応する抗神経抗体のスポットを検出し、高感度ナノLC-MS/MSシステムを用いて抗体の認識抗原を同定した。2) CNSループス患者6名を含む計23名の急性脳炎・脳症患者の血清・髄液中にNMDA型グルタミン酸受容体(GluR)ε2サブユニットに対する抗体が存在するか否かについてリコンビナント蛋白を用いたウエスタンブロット法により検索した。
結果と考察
1) 広範な大脳白質病変を有したCNSループス患者の血清中にBeta-actin, Alpha-internexin, Heat-shock protein 60 (Hsp60), GFAPを認識する自己抗体を検出した。次にELISA法によりCNSループス患者11例を含む計80例の血清中の抗Hsp60抗体価を測定した。健常者群18例の抗体価の平均値+2SDをcut off値とした場合12.5%(10/80)が陽性となり、抗体陽性の有無と大脳白質病変の合併に関して有意な相関関係を認めた(p=0.032, Fisher's exact test)。Hsp60は血管内皮細胞に発現することが知られており、大脳白質病変の背景に同抗体による血管内皮障害ならびに微小循環障害が存在する可能性が推測された。2) CNSループス患者においてIgG型抗GluRε2抗体の陽性率が高値であった(血清: 感度66.7%, 特異度70.6%、髄液: 感度60%, 特異度82.4%)。臨床症状との関連では、痙攣重積の有無と髄液のIgM型抗GluRε2抗体に関連がみられた(P<0.001, Fisher's exact test)。
結論
1) 自己免疫疾患の患者群には抗Hsp60抗体価が高値を示す一群が存在し、大脳白質病変を合併しやすい可能性が示唆された。2) 髄液中のIgG型抗GluRε2抗体はCNSループスにおいて比較的特異度が高く、診断マーカーとなりうる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2007-06-15
更新日
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