筋萎縮性側索硬化症に対する肝細胞増殖因子を用いた画期的治療法の開発

文献情報

文献番号
200632075A
報告書区分
総括
研究課題名
筋萎縮性側索硬化症に対する肝細胞増殖因子を用いた画期的治療法の開発
課題番号
H18-こころ-一般-025
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
糸山 泰人(東北大学大学院医学系研究科神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 岡野 栄之(慶応義塾大学医学部)
  • 船越 洋(大阪大学医学部)
  • 加藤 信介(鳥取大学医学部)
  • 中村 雅也(慶応義塾大学医学部)
  • 青木 正志(東北大学病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
34,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は神経難病でも最も苛酷な筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対して肝細胞増殖因子(HGF)を用いた画期的治療法を開発することとそれに関わる基盤研究を進めることにある。
研究方法
東北大学神経内科で確立したG93A変異Cu/Zn superoxide dismutase(SOD1)トランスジェニックラット(ALSラット)脊髄での内因性ラットHGFレベルを酵素免疫測定法で検討した。ALSラットに浸透圧ポンプにてウサギポリクローナル抗ラットHGF特異抗体を5 g/体重(g) 髄腔内に4週間持続投与し発症日と死亡日を特定した。死亡時の腰髄灌流固定凍結切片にてリン酸化Akt、リン酸化c-Metの発現、グリア細胞およびユビキチン陽性像を解析した。
結果と考察
私共はALSラットを用いて運動ニューロンに対し神経栄養因子作用を有するヒトリコンビナントHGFの髄腔内持続投与でALSに対する有効性を示してきた。その一方で抗HGF抗体をALSラットの髄腔内へ投与しHGFを中和させると病態を悪化させることを今回確認し、内因性HGF-c-Met機構がALS病態の進行を抑止する重要な因子である可能性を示した。したがって、外来性HGFの供給は、生理的なHGFの病態進行抑制作用を強化するという点で有力なヒトALSに対する理論的かつ新規治療法になり得ると考えられる。この事実は今後のALSへのHGF治療の臨床応用について重要な理論的基盤になりうるものと考えられる。ALSへのHGF治療法開発の次なる段階としては、齧歯類に比較してヒトにより近い霊長類における髄腔内HGF投与の安全試験が必要であり、現在進行中である。
結論
ALSラットにおいて内因性のラットHGFを抗HGF抗体の髄腔内投与によって中和すると、ALS様病態を進行させることが明らかとなり、HGFが病態の進行を遅らせている重要な生理的抑制因子であることが示唆された。したがって、外来性HGFの投与は生理的なHGFの病態進行抑制作用を強化するという点でヒトALSに対する理論的かつ有力な新規治療法になり得ると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
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