MR1拘束性T細胞(MAIT細胞)を介した多発性硬化症の予防と治療に関する研究

文献情報

文献番号
200632073A
報告書区分
総括
研究課題名
MR1拘束性T細胞(MAIT細胞)を介した多発性硬化症の予防と治療に関する研究
課題番号
H18-こころ-一般-023
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山村 隆(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第六部)
研究分担者(所属機関)
  • 三宅 幸子(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
  • 荒浪 利昌(国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部)
  • 島村 道夫(三菱化学生命科学研究所)
  • 松本 満(徳島大学分子酵素学研究センター情報細胞学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
30,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
T細胞抗原受容体(TCR) のアルファ鎖としてVa19-Ja33固定鎖を有しMR1分子に拘束されたT細胞(MR1拘束性T細胞)は、消化管粘膜固有相に集積し、腸内細菌依存性に発生するユニークな細胞集団である。近年、我が国において西欧型多発性硬化症(MS)の顕著な増加傾向が見られるが、我々は腸内環境の変化による同細胞の機能的変調が一因であるという仮説を提唱している。本研究の目的は、MR1拘束性T細胞の免疫機能制御機構を解明し、新たなMSの予防・治療法開発に役立てることにある。また研究を発展させるために、抗体作製などの作業を進めることも目的にする。
研究方法
MSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)はVa19-Ja33のトランスジェニック(Va19Tg)マウスでは軽症化する。本年は、精製B細胞とVa19Tg肝臓から分離したMR1拘束性T細胞の共培養の系を用いて、免疫制御性サイトカインIL-10の産生機序を探った。また、MR1拘束性T細胞の解析を容易にするため、Va19-Ja33ペプチドを合成し、モノクローナル抗体を作製した。さらにVα19TgにI型アレルギーおよび遅延型過敏症反応を誘導した。
結果と考察
MR1拘束性T細胞はB細胞と協調してIL-10を産生することを明らかにした。その際、細胞同士の接触が必要であり、MR1拘束性T細胞の発現するCD278分子(inducible T-cell costimlator; ICOS)とB細胞の発現するCD275分子(ICOSL, B7-RP1)の相互作用が関与することがわかった。また、Va19 TgマウスのEAE抑制に伴って、B細胞IL-10発現が亢進することを示した。Va19TgマウスではI型アレルギー様免疫応答誘導時の血清中のIgEレベルの上昇は野生型マウスに比べて抑制されていた。また遅延型過敏症誘導モデルでもVa19 Tgマウスでは症状が抑制され、血清中炎症性サイトカインの上昇も抑制されていた。以上からVa19 NKT細胞の免疫ホメオスタシス維持機能が示唆され、この細胞の機能調整に基づく自己免疫性神経疾患制御の有効性が支持された。
結論
MR1拘束性T細胞は重要な免疫制御細胞であり、MSにおける機能的変調を解明することは予防や治療法の開発に貢献する。研究を発展させるには、同細胞を同定する試薬の開発が急務である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-