NAD・Sir2依存性軸索保護機構を用いた神経変性疾患治療とその分子基盤

文献情報

文献番号
200632068A
報告書区分
総括
研究課題名
NAD・Sir2依存性軸索保護機構を用いた神経変性疾患治療とその分子基盤
課題番号
H18-こころ-一般-018
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
荒木 敏之(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第五部)
研究分担者(所属機関)
  • 舘野 美成子(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第五部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
38,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、神経細胞でのNAD過剰産生がSir2の活性化を介して軸索突起の傷害刺激からの保護をもたらすことを過去に明らかにした。本研究プロジェクトにおいては、NAD・Sir2依存性軸索保護のメカニズムを解明し、神経疾患への治療応用を実現することを目的としている。本年度は、1)NAD-Sir2依存性神経軸索保護効果を最も効果的に行なうためのNAD合成反応系の改変の方法について検討し、2)NAD・Sir2依存性軸索保護機構において、NAD産生が高まっている細胞内での変化を明らかにする、3)1で明らかにした、軸索保護効果の最も高いNAD合成反応系の改変法を生体内で実現するモデルマウスを作成することを目的とした。
研究方法
1)NAD-Sir2依存性神経軸索保護効果を最も効果的に行なうためのNAD合成反応系の改変の方法については、In vitroワーラー変性モデルシステムにおいて、神経細胞にNAD合成反応系の各酵素の過剰発現を行なった場合、もしくはNAD合成反応中間反応産物を培養液中に投与した後に神経突起変性を誘導した場合の遅延効果について検討した。2)NAD・Sir2依存性軸索保護機構において、NAD産生が高まっている細胞内での変化については、初代培養神経細胞へのNAD投与後の細胞内シグナルにつき、マイクロアレーによる網羅的検索、ならびに過去の報告からNAD・Sir2の下流に存在すると考えられる細胞内シグナル候補分子の活性化の有無につき検討した。3)NMNAT活性過剰発現モデルマウスを作成した。
結果と考察
1)NADのほかにはNMN, NaMN, NmRの投与による神経軸索変性遅延効果が認められた。NMNAT以外の酵素に関してはNmPRT, NaPRTの過剰発現が、それぞれの基質投与下に編成遅延効果を示した。NmRからNADを合成する反応系は神経細胞におけるNAD合成系として生理的に重要である可能性がある。2)NAD過剰産生・Sir2活性化後の神経細胞においては多数の遺伝子の転写調節に関与する既知の転写因子の活性化はおこらないものと考えられた。3)NMNAT1,NMNAT3、Wlds(W258A)を過剰発現するマウスを作成し、フェノタイプの解析を開始した。
結論
NAD・Sir2依存性軸索変性遅延の細胞内シグナル伝達系につき、今後更に別の角度から検討し、治療応用の為のマウスモデルにおける効果検討を推進する予定である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-24
更新日
-