小児期の大脳白質病変の病態解明に関する研究

文献情報

文献番号
200632065A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期の大脳白質病変の病態解明に関する研究
課題番号
H18-こころ-一般-015
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
井上 健(国立精神・神経センター疾病研究第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 赤澤 智宏(東京医科歯科大学 保健衛生学科)
  • 小坂 仁(神奈川県立こども医療センター 神経内科)
  • 出口 貴美子(出口小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は大脳白質病変の病態を解明し、治療法の開発を目指した基礎研究である。小児期の遺伝性髄鞘形成不全症候群と早産児の虚血性大脳白質傷害という原因の異なる二つの大脳白質病変を伴う疾患群を対象とする。その理由として
(a) 遺伝性髄鞘形成不全の病態の理解はオリゴデンドロサイトを標的とした白質保護による治療法の開発に重要である。
(b) 周産期の虚血性白質病変による高次脳機能障害の病態の理解と予防や治療法の開発が急務である。
これらの異なる2つの研究課題から得られた成果を統合的に解析し、大脳白質病変に起因しておこる高次脳機能障害の機序を解明し、今後更に小児期の大脳白質病変の病態に基づく治療法の開発を目指す。
研究方法
下記の3つの課題について、研究を行う。
1. 遺伝性白質形成不全ペリツェウス・メルツバッハ病の小胞体(ER)ストレス性細胞死によるオリゴデンドロサイト傷害モデルに対する分子シャペロン治療の有効性の検討
2. SOX10の翻訳後修飾の白質変性症の病態への役割とオリゴデンドロサイトの再生過程での機能の検討
3. 早産児の大脳白質病変に伴う神経前駆細胞の傷害がその後の神経細胞とグリア細胞の分化・遊走に及ぼす影響について、ヒトおよびモデル動物を用いての検討
結果と考察
1. 培養細胞でのPLP1変異蛋白発現系に対しクルクミンを投与したところ、蛋白レベルでERストレス関連因子の発現の減少をみた。一方で、予想された変異蛋白の細胞内局在の変化を明確に観察できず、これは本年度再検討する予定である。
2. SOX10の機能調節にユビキチン化とSUMO化の翻訳後修飾が関わっていることを見出した。
3. 白質病変を伴う超早産児剖検脳の脳室周囲の神経前駆細胞の脱落を認めた。さらにこれがいわゆる壊死性変化ではなく、アポトーシスによる特異的傷害である事を見いだした。
結論
本年度はそれぞれの課題についてほぼ当初の計画通りに研究成果を得た。来年度以降は更に大脳白質病変の病態により迫る知見を得る事が期待される。長期的にはこれらの研究成果から、小児期の疾患のみならず成人や老年期における大脳白質病変の病態の理解に大きく貢献することが予想され、白質病変の予防や治療の開発に向けた基礎研究として、国民の健康維持に資するものと思われ、厚生科学的見地から重要性および緊急性が高いと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-05-30
更新日
-