肢帯型筋ジストロフィー1B型の社会医学的・分子細胞生物学的研究

文献情報

文献番号
200632064A
報告書区分
総括
研究課題名
肢帯型筋ジストロフィー1B型の社会医学的・分子細胞生物学的研究
課題番号
H18-こころ-一般-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
林 由起子(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 西野 一三(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部)
  • 野口 悟(国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部)
  • 松田 知栄(独立行政法人 産業技術総合研究所 脳神経情報研究部門 (脳遺伝子研究グループ))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肢帯型筋ジストロフィー1B型(LGMD1B)は、核膜蛋白質ラミンA/C遺伝子(LMNA)変異による疾患で、筋ジストロフィーに加え、心合併症によって高率に突然死をきたす臨床的に極めて重要な疾患であるが、本邦における頻度や臨床的特徴は明らかでない。またラミンA/Cは、ゲノム情報の制御という生命現象で最も重要な役割を担うことが予測される反面、その具体的な機能は明らかでない。本研究は、ラミンA/C遺伝子異常によるLGMD1Bに焦点を当て、その臨床分子病態に迫ることを目的とする。
研究方法
診断未確定のLGMD患者においてLMNA変異のスクリーニングを行い、本邦におけるLGMD1Bの頻度および臨床的特徴を明らかにする。プロテオーム解析によって、疾患特異的に変化するラミンA/Cのアイソフォームを同定する。モデル動物を用いてLMNA変異によって生じるゲノム情報の破綻を明らかにし、その結果をもとに治療法開発への手がかりを得る。
結果と考察
診断未確定のLGMD症例について、LMNA変異解析をした結果、3%に変異を見いだしLGMD1Bと診断した。この結果、LGMD1Bは本邦で3番目に多いLGMD亜型であることを明らかにした。LGMD1Bの臨床的特徴として、幼児期早期に発症し、下腿肥大を伴い、Becker型筋ジストロフィーとの鑑別診断が重要であること、心障害は骨格筋障害よりも後から出現することを明らかにした。また同じく核膜関連筋疾患の原因遺伝子EMD遺伝子も、LGMDの原因となることも明らかにした。
一方、ラミンA/Cには複数のアイソフォームが存在することを明らかにした。今後モデルマウス筋や患者筋を複数用いることによって、疾患特異的変化の有無を検討する。
また遺伝子発現解析の結果、ラミンA/C欠損マウス筋では筋萎縮関連遺伝子の発現亢進が認められた。これは臨床病理学的変化と一致する結果であり、現在さらに詳細に解析中である。
結論
LGMD1Bの確定診断は現在、遺伝子解析によらなければならず、本疾患は頻度が高いにもかかわらず見逃されている可能性が高いことが示唆された。しかしながら臨床医学的には若年者の突然死を高率にきたすことから、可能性のある患者については積極的に遺伝子診断を勧め、早期に確実に診断をつけること、心機能評価を定期的におこない、時期を逸することなく除細動装置付きのペースメーカー挿入を検討することが不可欠である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
-