糖鎖の関連するニューロパチーの分子病態の解析

文献情報

文献番号
200632063A
報告書区分
総括
研究課題名
糖鎖の関連するニューロパチーの分子病態の解析
課題番号
H18-こころ-一般-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
楠 進(近畿大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 結城伸泰(獨協医科大学)
  • 清水潤(東京大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
18,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ニューロパチーの病態にかかわる分子として、糖タンパクや糖脂質に着目して解析した。感覚障害性失調性ニューロパチー(SAN)に関連する抗GD1b抗体の作用機序におけるapoptosisの関与、および抗GD1b抗体の反応特異性と失調の関連を検討した。GQ1bでウサギを感作してフィッシャー症候群のモデル作成を試みた。レプトスピラ感染に伴うニューロパチーにおける抗ガングリオシド抗体を検討した。 
研究方法
既報に従いGD1bでウサギを感作してSANモデルを作成し、後根神経節(DRG)細胞でTUNEL法によりapoptosisの検討を行った。抗GD1b抗体単独陽性のGBS血清について、GD1bに他のガングリオシドを混合した抗原に対する抗体活性を測定し、失調例と非失調例での差異を調べた。ウサギDRGにおけるGQ1bの発現を検討し、ウサギをGQ1bで感作した。レプトスピラ感染後のニューロパチーの血中抗ガングリオシド抗体を検討した。
結果と考察
GD1b感作によりSANを発症したウサギでは、TUNEL法にてDRG神経細胞の核の染色がみられた。非発症ウサギ、アジュバントのみ接種および非接種のウサギではTUNEL法での陽性所見はみられなかった。GD1b感作によるSANは、一次感覚ニューロンのapoptosisによると考えられた。ヒトの抗GD1b抗体陽性のSANでも同様の機序が示唆された。抗GD1b抗体はGD1bにGD1aなどのガングリオシドを添加した抗原に対し活性が低下し、その程度は失調群で有意により大きかった。GD1bはある種のガングリオシドとの混合で三次元構造が変化する。失調群の抗体の反応はこの三次元構造の変化の影響を受けやすくGD1bへの特異性がきわめて高いと考えられた。GQ1bは一部のウサギDRGニューロンに発現していたが、GQ1bの感作では動物モデル樹立には至らなかった。レプトスピラ感染後のニューロパチー患者血中にGD1b, GM1, GalNAc-GD1aなどに対する抗体上昇がみられた。
結論
抗GD1b抗体による感覚障害性失調性ニューロパチーの病態は、一次感覚ニューロンのapoptosisである。GD1b自体に対する特異性が高い抗GD1b抗体は失調の発症に関連する。フィッシャー症候群動物モデル樹立に向け、今後の検討が必要である。レプトスピラは抗ガングリオシド抗体上昇を伴う神経障害の先行感染のひとつである。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
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