双極性障害の神経生理・画像・分子遺伝学的研究

文献情報

文献番号
200632062A
報告書区分
総括
研究課題名
双極性障害の神経生理・画像・分子遺伝学的研究
課題番号
H18-こころ-一般-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
神庭 重信(九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 飛松省三(九州大学大学院医学研究院臨床神経生理学)
  • 清原裕(九州大学大学院医学研究院病態機能内科学)
  • 黒木俊秀(九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野 )
  • 川嵜弘詔(九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野 )
  • 三浦智史(九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野 )
  • 鬼塚俊明(九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野 )
  • 本村啓介(九州大学大学院医学研究院精神病態医学分野 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
双極性障害における疾患および病相に特異的な脳情報処理機能ならびにゲノム機能を明らかにすることである。本研究によって得られる病態マーカーは、安定性および予測性に優れた包括的診断に応用可能である。さらには脳情報処理過程をエンドフェノタイプとして、疾患あるいは病相に特徴的な分子遺伝学的基盤を明らかにすることにより、本障害の責任神経回路の同定およびその分子情報伝達系における特徴をも明らかにすることが可能となる。
研究方法
本研究においては、厳密な診断と縦断的観察、一定の枠組みでの治療とその効果・副作用などがモニターできる治療構造が必要となる。そのため、九大病院精神科神経科に双極性障害の専門外来を設置した。神経心理学的検索および神経生理学的研究を行う。神経生理学的研究は、事象関連電位(ERP)を測定しミスマッチ陰性電位(MMN)の潜時および分布を解析するとともに、脳磁図(MEG)を用いて聴覚刺激による誘発磁気反応を測定する。

結果と考察
1)双極性障害者に母音“a” を呈示し、聴覚誘発反応を指標として、聴覚フィルタリング機能を評価した。双極性障害者のうち、精神病症状を呈した者に聴覚フィルタリングの障害がある可能性が示唆された。双極性障害者の中でも、障害の基盤として、統合失調症と比較的共通性を持つ者がいる可能性がある。
2)高密度脳波計を用いて双極性障害者の視覚MMNを記録した。視覚MMNのトポグラフィーを見ると、双極性障害者は正常者とは異なるMMN分布パターンを示していた。双極性障害者では比較的早期の視覚情報処理過程に障害がある可能性がある。
3)気分症状が寛解している双極性障害患者を対象に高次脳機能障害患者の認知機能評価の評価に用いられる神経心理学的検査バッテリーを適用した。統計的解析に適する例数にはまだ達していないが、情報処理速度・注意機能に関連したTrail Making Test Aにおいて、とくに双極I型障害患者では障害が認められた。

結論
事象関連電位を用いて視覚情報処理過程を、また聴覚誘発磁場を記録することにより聴覚情報処理過程を明らかにできる。これらの所見に神経心理学的検査の結果を加え、分子遺伝学的解析との相関を統計学的に解析することにより、双極性障害における情報処理過程の障害と強く関連する遺伝子群を同定できる。さらに臨床症状、治療反応性と相関する生物学的因子の同定につながることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-05-30
更新日
-