統合失調症の生物学的病態解明と予防・治療法の開発

文献情報

文献番号
200632061A
報告書区分
総括
研究課題名
統合失調症の生物学的病態解明と予防・治療法の開発
課題番号
H18-こころ-一般-011
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
功刀 浩(国立精神・神経センター神経研究所 疾病研究第三部)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科細胞情報医学専攻脳神経病態制御学講座精神生物学分野)
  • 陣野吉広(琉球大学大学院医科学研究科生命統御医科学分野)
  • 岩田仲生(藤田保健衛生大学医学部精神医学教室)
  • 那波宏之(新潟大学脳研究所基礎生物学部門)
  • 橋本亮太(大阪大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
34,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
統合失調症の病態を生物学的に解明し、生物学的診断法・予防法・根本的治療法を開発することを目的とする。
研究方法
1) 有力なリスク遺伝子であるdysbindinやBDNFの機能解析を行った。Dysbindinについてはノックアウトマウスの行動解析を行った。BDNFについては遺伝子多型と血中濃度との関連について検討すると共に、ストレスホルモンとの相互作用に注目して細胞生物学的機能解析を行った。
2) 5万SNPsを用いたヒトゲノム全領域をカバーする網羅的遺伝子関連解析や候補遺伝子研究、患者抹消血Bリンパ球株化細胞の網羅的遺伝子発現解析を行い、未知の感受性遺伝子や病態に関与する遺伝子を探索した。
3) 環境要因のメカニズムについて解明するために、周産期障害モデル動物(ラット)の脳内分子病態と行動解析を行った。また、抗精神病薬(ハロペリドール)投与によるラット前頭野の遺伝子発現変化についてマイクロアレイで解析した。
結果と考察
1) Dysbindin欠損マウスは不安行動の増強などの異常を呈した。BDNFのリスクアレルを持つ者は血中BDNF濃度が低いことが明らかになった。培養ニューロンを用いた解析では、ストレスホルモンが過剰に存在すると、BDNFがp75受容体を介して神経傷害作用をもつことが示唆され、統合失調症の神経発達障害の説明となる可能性がある。
2) ゲノムワイド解析では、二次スクリーニングが終わり、リスク遺伝子の絞込みを行っている。末梢血胞の網羅的遺伝子発現解析では、患者群と健常者で有意差のある遺伝子を1212個見出した。今後、二次サンプルによる絞込みが重要である。
3) 周産期障害モデル動物は、認知行動学的異常を示すと共に、脳内におけるErbB1シグナルの亢進が観察された。行動学的障害はErbB1チロシンキナーゼ阻害剤の投与により改善した。ハロペリドールによる遺伝子発現変化に関する解析では、660遺伝子が薬物によって2/3以下に減少した。
結論
研究1年目であるが、ゲノムワイド関連解析や網羅的遺伝子発現解析などにより、病態に関わる分子の絞込みが順調に進んでおり、今後の分子病態解明のための貴重な基盤的データとなる。Dysbindin欠損マウスや周産期障害モデルなどの動物モデルにより発病メカニズムの解明につながる知見が得られており、ErbB1阻害剤などの創薬シーズも見出された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)