ヒトを対象にした精神疾患の生物学的病態解明に関する研究

文献情報

文献番号
200632060A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトを対象にした精神疾患の生物学的病態解明に関する研究
課題番号
H18-こころ-一般-010
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
三國 雅彦(群馬大学大学院医学系研究科脳神経精神行動学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 忠史(理化学研究所脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チーム)
  • 新井 平伊(順天堂大学医学部精神医学教室)
  • 白尾 智明(群馬大学大学院医学系研究科高次細胞機能学分野)
  • 川口 泰雄(自然科学研究機構生理学研究所大脳神経回路論研究部門)
  • 渡辺 義文(山口大学大学院医学系研究科高次脳機能病態学分野)
  • 池田 研二(慈圭病院・慈圭精神医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
38,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は若年発症のうつ病の発症脆弱性としての神経の発生・移動・分化に関連する微小な脳器質因の病態生理の解明とその修復の可能性を動物や細胞レベルも含めた脳科学的基礎研究で探求する一方、中高年初発うつ病の発症脆弱性としての微小脳血管障害の病態生理の解明とその修復を抗血小板薬や血管内皮保護剤を用いて探求し、根治的な治療法を確立することを目的としている。
研究方法
感情障害死後脳の解析には東京都精神医学総合研究所に保存されている剖検脳を用い、身体疾患にて死亡した躁うつ病、中高年初発うつ病、対照として統合失調症、ならびに精神疾患罹患歴のない正常対照の左前頭前野(BA9野)や深部白質について、GABA神経の亜型、グルコーストランスポーター8の発現、細動脈硬化などについて解析した。
抗血小板薬による抗うつ薬強化療法の解析はMRIT2強調画像での白質高信号陽性、T2*画像でのヘモジデリン沈着陰性の中高年初発うつ病で抗うつ療法に抵抗性の症例につき、シロスタゾールを50?200mg追加して、抗うつ効果の強化の有無を検討した。
結果と考察
若年初発の感情障害における神経発達期の細胞構築学的異常として、BA9野の皮質第二層の小型神経 細胞の構成比異常を見出しているので、小型神経細胞であるGABA神経亜型を検索し、双極性では5m以上のカルレチニン陽性GABA細胞は有意に増加、カルビンジン陽性GABA細胞は減少傾向を示すのに、統合失調症ではいずれも有意に低下していることを明らかにした。また、中高年初発うつ病の死後脳の解析では前頭前野深部白質の細動脈に動脈硬化所見のはっきりしている群と、動脈硬化所見は欠くものの、細動脈周囲に活性化したマクロファージやマイクログリアが存在し、炎症が起こっている群とがあることを明らかにした。
シロスタゾールを50?200mg追加投与すると、数日で効果が出始め、5週間後にはハミルトンうつ病尺度が改善することと、SPECT測定での平均局所脳血流量が症状改善に伴って増加することを明らかにした。
結論
若年初発の感情障害における神経発達期の細胞構築学的異常は統合失調症とは共通点と相違点を有していることを明らかにした。また、脳梗塞後うつ病には相当しない内因性中高年初発うつ病にも微細な血管性の器質病変が存在していることを明確にし、抗血小板薬による抗うつ薬の抗うつ効果強化療法を開発した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)