難治性うつ病の治療反応性予測と客観的診断法に関する生物・心理・社会的統合研究

文献情報

文献番号
200632054A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性うつ病の治療反応性予測と客観的診断法に関する生物・心理・社会的統合研究
課題番号
H18-こころ-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
山脇 成人(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 森信 繁(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 岡本 泰昌(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 山下 英尚(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 内富 庸介(国立がんセンター東病院臨床開発センター 神経腫瘍学開発部)
  • 竹林 実(国立病院機構呉医療センター 精神科)
  • 中村 純(産業医科大学 医学部)
  • 小澤 寛樹(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 久住 一郎(北海道大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究では、大うつ病の難治化(抗うつ薬抵抗性)因子を解析し、治療初期に予測可能な客観的診断法の確立を目的とする。
研究方法
 初年度は難治性うつ病に関する後方視的研究を行うとともに、前方視的研究のための多施設共同研究プロトコールの作成、心理社会的評価・生物学的マーカーなどに関する基礎的検討を行った。後方視的研究としては:1)長崎WHOうつ病10年間予後調査の再解析・2) 北海道大学難治性うつ病追跡調査・3) 広島大学脳血管性うつ病予後調査。前方視的研究:1) 心理社会的難治化要因抽出のためのテストバッテリーの作成・2) 生物学的難治化要因抽出のための神経栄養因子mRNA、蛋白、メチル化計測法の開発・3) 脳画像的難治化要因抽出のためのMRIを用いた海馬構造機能解析法の開発を行った。
結果と考察
 後方視的研究:1) 24%が病状遷延化による社会機能の低下が認められ、11%に自殺死しており、心因性は内因性に比べて予後が不良であることが判明した。2) 難治性うつ病と1955年に診断された26例の予後を11年間追跡した結果、調査開始時には単極性難治性うつ病と診断された21例にうち5例は最終観察時に双極性障害と診断され、bipolarityが難治化に関与すると考えられた。3) 初回入院治療を行った50歳以上のうつ病患者170例を対象に10年間追跡し、脳血管障害を伴ううつ病では有意にうつ病相期間が長く、脳血管障害は難治化要因であると考えられた。前方視的研究:難治化予測因子に関する基礎的検討から得られた、難治性うつ病の心理社会的予測因子としての幼少期養育環境(ETI-SF)、対人関係(TAT) 、病前性格 (NEO-FFI)などの客観的評価法の妥当性や、生物学的マーカー(白血球由来BDNF, GDNF mRNA、血清BDNF, GDNF濃度、BDNF, GDNF遺伝子メチル化) や脳画像検査(MRIによる海馬容積計測、fMRIによる情動言語課題を用いた海馬機能計測)に関する研究成果は、多施設共同研究のプロトコールに組み入れられ、各施設での倫理委員会での承認を経て患者登録を行い、研究遂行中である。
結論
 うつ病の長期予後研究から難治化の危険因子として、発症契機としての心因や潜在しているbipolarityの存在及び脳血管障害の合併が重要であることがわかった。難治化予測因子に関する、包括的な多施設共同プロトコールが完成し、各施設の倫理委員会の承認を受け、前方視研究を開始した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-24
更新日
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