神経移動障害を伴う筋疾患の病態解明と治療法実現に向けた技術集約的研究

文献情報

文献番号
200632048A
報告書区分
総括
研究課題名
神経移動障害を伴う筋疾患の病態解明と治療法実現に向けた技術集約的研究
課題番号
H17-こころ-一般-027
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
萬谷 博(財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団東京都老人総合研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
8,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
福山型先天性筋ジストロフィー症(FCMD)、Muscle-eye-brain病(MEB)、Walker-Warburg症候群(WWS)は中枢神経系の障害を伴う先天性筋ジストロフィー症である。これらの疾患はαジストログリカンのO-マンノース型糖鎖不全を起因とする。MEBとWWSの原因遺伝子産物POMGnT1とPOMT1、POMT2はO-マンノース型糖鎖合成酵素であり、FCMDの原因遺伝子産物fukutinの機能はまだ分かっていない。本研究では、これらの疾患の原因遺伝子産物及びO-マンノース型糖鎖の機能を明らかすることで、病態の解明から診断・治療法への応用を目指している。
研究方法
各原因遺伝子産物および関連分子を強制発現した培養細胞および遺伝子改変動物を解析し、相互作用や変異による細胞内局在や酵素活性などへの影響を検討した。EBウイルスで不死化した患者由来リンパ球を用いて酵素活性測定による診断の可能性を検討した。
結果と考察
1)fukutinとPOMGnT1の共発現及び免疫沈降実験から、両者は結合してゴルジ体に局在することが示された。また、FCMDに見られるfukutinの変異を導入した遺伝子改変マウスではPOMGnT活性が減少していたことから、fukutinがPOMGnT活性に関与することが示唆された。(2)POMT1とPOMT2の共発現及び免疫沈降実験から、活性発現にはPOMT1-POMT2複合体の形成が必要であり、ERに局在することが示された。またWWSに見られるPOMT1の変異は複合体形成には影響せず酵素活性のみを消失させることが分かった。(3)遺伝子診断で確定されたMEB及びWWS患者のPOMGnT及びPOMT活性は顕著に低値だった。さらに、遺伝子診断前の患者からPOMGnT及びPOMT活性が低い例が見つかり、遺伝子診断の結果POMGnT1とPOMT1、POMT2に新たな変異が検出され、酵素活性測定による診断が可能であることが示された。
結論
(1)FCMDの原因遺伝子産物fukutinはMEBの原因遺伝子産物POMGnT1と結合し酵素活性に影響することを明らかにした。(2)WWSの原因遺伝子産物POMT1とPOMT2の酵素活性にはPOMT1-POMT2複合体の形成が必要であることを明らかにした。(3)MEBとWWSの酵素活性測定法による診断の可能性を示した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
-