犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究

文献情報

文献番号
200632035A
報告書区分
総括
研究課題名
犯罪被害者の精神健康の状況とその回復に関する研究
課題番号
H17-こころ-一般-014
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小西 聖子(武蔵野大学 人間関係学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中島 聡美(国立精神・神経センター精神保健研究所 成人精神保健部成人精神保健研究室)
  • 大山 みち子(武蔵野大学 人間関係学部)
  • 堀越 勝(筑波大学大学院 人間総合科学研究科)
  • 辰野 文理(国士舘大学 法学部)
  • 山下 俊幸(京都市こころの健康増進センター)
  • 竹之内 直人(宇和島地方局健康福祉環境部)
  • 有園 博子(兵庫県こころのケアセンター研究部)
  • 柑本 美和(城西大学 現代政策学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
犯罪被害者等基本法の成立以降、保健医療、福祉領域からの犯罪被害者の支援体制の構築は急務であり、政策に沿った支援の実現に向け調査研究を行い、実践モデルを開発していくことが本研究の目的である。本年度は(1)犯罪被害者及びその精神医療との関わりの現状を把握し(2)心理的外傷治療についての実証的知見を得(3)地域精神保健窓口や一般精神医療の現場で適正な治療や回復手段を得られるよう実践的なモデルを作成し(4)犯罪被害者と医療と法の接点についての知見を得る、という4つの研究を継続している。
研究方法
(1)精神科医療領域における犯罪被害者の診療実態の調査、犯罪被害者当事者団体の会員・家族を対象とした調査を行い(2)PTSD治療の認知行動療法Prolonged Exposure法(PE法)を実施、効果を測定し、一般的臨床現場での聞き取り調査を行った。(3)精神保健福祉センター、保健所における研究を継続し(4)弁護士会調査及び海外法制の調査を行った。
結果と考察
医師個人が関連機関との連携を持つこと、専門的知識を得ることが、犯罪被害者の診療に繋がると期待される。対象となった犯罪被害者のうち、気分障害、不安障害のハイリスク者は約40%、精神科医療機関への通院者は16%であった。司法での意見陳述や主観的二次被害など被害後の体験の精神健康状態への関連が示された。調査方法、標本の偏りを考慮し、今後は詳細な面接調査を行う予定である。弁護士調査では、精神科医療の専門性があまり理解されておらず、弁護士は精神的問題の紹介先がないと感じていることが明らかになった。PE法では、PTSD症状、抑うつ症状、解離症状に効果が認められた。さらに米国からCognitive Processing Therapyの導入を図った。地域精神保健の分野においては、保健所単独の援助だけでなく、精神保健福祉センターと保健所連携の強化、警察、児童相談所、病院等との連携、担当者のスキルアップ、保健師への専門的な研修、代理受傷対策が必要である。後送機関も不足しており、場合によっては国レベルで体制を組む必要がある。市民への啓発活動、全国被害者支援ネットワーク(NPO)活動の実情把握も必要である。
結論
精神健康状態に問題があっても治療を受けていない被害者の存在が明らかになった。精神科医師が犯罪被害者の診療経験を持つためには、実践的な連携と専門研修が必要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2007-06-14
更新日
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