思春期・青年期のひきこもりに関する精神医学的研究

文献情報

文献番号
200632033A
報告書区分
総括
研究課題名
思春期・青年期のひきこもりに関する精神医学的研究
課題番号
H17-こころ-一般-012
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
井上 洋一(国立大学法人大阪大学保健センター)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 陽英(国立大学法人奈良教育大学学校保健研究室)
  • 齊藤 万比古(国立精神・神経センター精神保健研究所児童・思春期精神保健部)
  • 本城 秀次(国立大学法人名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)
  • 青木 省三(川崎医科大学精神科学教室)
  • 田中 康雄(大学法人北海道大学大学院教育学研究科教育臨床講座)
  • 水田 一郎(神戸女学院大学人間科学部)
  • 生地 新(北里大学大学院医療系研究科)
  • 近藤 直司(山梨県立精神保健福祉センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「ひきこもり」は社会行動面からの定義であるが、精神症状を伴い、精神医学的な治療を要する事例が認められ、精神医学的視点からのひきこもりについての理解と対応法の検討が求められている。本研究は精神医学的対応における明確な基盤を与える目的で、精神医学的な視点からひきこもりについて研究を行い、ひきこもりへの対応の向上に寄与することを目指す。
研究方法
本研究は大きく3つの分野に分かれて行う。第一は、引きこもりの経過についての研究、第二は「ひきこもり」と精神医学的診断、あるいは精神疾患との関係についての研究、第三に青年期心性に焦点を当てた発達論的視点からの「ひきこもり」の理解や支援についての研究である
結果と考察
北村は、高校在籍生徒を対象とし「ひきこもり」生徒についての調査を行い、斉藤は国府台病院児童精神科病棟を退院または院内学校を卒業して5年以内の子どもを対象に,教育や仕事の状況,「ひきこもり」の有無,全般的適応度,精神健康度等について調査した。本城は登校拒否症群を調査し、性格特徴として強迫性が高いことを危険因子として指摘した。青木は諸外国におけるひきこもりへの認識を調査し、また韓国に日本の「ひきこもり」に相当する青年が存在することを報告した。近藤は青年期ひきこもりケースは基本的には現行の操作的診断基準で精神医学的診断・分類が可能であることを報告した。水田は摂食障害患者の多くが「ひきこもり」や「ひきこもり」関連エピソードを経験していることを報告した。井上は大学生を対象にして青年期後期の「ひきこもり」事例の心理的問題について検討した。田中は,発達障害とひきこもりの関連について検討し、回復への促進因子と阻害因子について考察した。生地は「ひきこもり」に至るプロセスでの仲間体験の影響や、回復過程における仲間体験の意義について検討した。また水田は保健所と地域の精神科医療機関(精神科医)の連携の現状や問題点、今後に向けての課題を検討した。
結論
「ひきこもり」事例に対する精神科医療においては、精神医学的診断に基づいての治療、発達論的視点からの心理・病理の理解、青年期心性に配慮した対応が求められている。本研究は発症の経過、診断、精神力動的理解、治療法等についての「ひきこもり」への精神医学的理解を進めた。また精神科医療における対応についての提言集をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-17
更新日
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