双生児法による精神疾患の病態解明

文献情報

文献番号
200632030A
報告書区分
総括
研究課題名
双生児法による精神疾患の病態解明
課題番号
H17-こころ-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 忠史(独立行政法人理化学研究所 老化・精神疾患研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 大木秀一(石川県立看護大学 看護学部)
  • 大野裕(慶應義塾大学 保健管理センター )
  • 岡崎祐士(都立松沢病院)
  • 小澤寛樹(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 病態解析制御学講座 精神病態制御学)
  • 笠井清登(東京大学 医学部附属病院 精神神経科)
  • 齋藤治(国立精神・神経センター 武蔵病院)
  • 陣野吉広(琉球大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、精神疾患に関して不一致な一卵性双生児を探索し、こうしたまれな
症例を対象として研究することを通して、通常の症例対照研究では個人差に埋も
れて検出が困難だった、精神疾患にかかわるエピジェネティック要因、環境因、
遺伝要因、および中間表現型(脳画像所見等)の差異を明らかにする。また、健
常双生児における脳形態および脳機能の差異を脳画像法により明らかにすること
を通して、精神疾患の危険因子に関わる中間表現型を明らかにする。
研究方法
本研究では、1)一卵性双生児のデーターベースを構築し、こうした研究の対象と
なる被験者が発見できるようなシステムを構築すること、2)不一致一卵性双生児
を対象として、DNA塩基配列、DNAメチル化、遺伝子発現、レトロトランスポゾン、
レトロウイルスなど、一卵性双生児間で不一致の可能性がある要因について検討
すること、3)精神疾患に関して不一致な一卵性双生児ないし同胞を対象として脳
機能画像により、疾患に関連して構造や機能が不一致となっている脳部位を明ら
かにすること、を目的として、研究を進めた。
双生児登録および大学病院間の連携を通して、60組以上の精神疾患不一致一卵性
双生児を把握し、うち13ペアについては、構成面接等による精神医学的面接、採
血、およびリンパ芽球の株化を行った。また、健常双生児28ペアを対象として、
MRI測定を行い、うち11組では採血、リンパ芽球の株化を行った。
結果と考察
これらを対象とした研究により、精神疾患の中間表現型となる脳形態変化の候補
として、パニック障害における前部帯状回体積減少、周産期障害にかかわる前頭
極体積減少など)を同定した。また、双極性障害、統合失調症、パニック障害に
関して不一致な一卵性双生児より得た培養リンパ芽球を用いて、不一致の原因と
なるエピジェネティック要因および遺伝要因の検討を進め、PPIドメインを持つ
霊長類特異的遺伝子のDNAメチル化が双極II型障害患者で低下している等の成果
を得た。



結論
これまでの研究で得られたさまざまな脳画像所見、および末梢血DNAメチル化
変化所見は、精神疾患のバイオマーカーとして、臨床診断や治療法選択などの臨
床応用が期待される。本研究により、精神疾患にエピジェネティック機構が関与
していることがわかり、精神疾患における環境因の関与を分子レベルで解明する
手がかりが得られた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)