磁気共鳴画像及び遺伝子解析による統合失調症の診断法の開発

文献情報

文献番号
200632029A
報告書区分
総括
研究課題名
磁気共鳴画像及び遺伝子解析による統合失調症の診断法の開発
課題番号
H17-こころ-一般-007
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大西 隆(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 亮太(大阪大学大学院医学系研究科附属子どものこころの分子統御機構研究センター疾患関連分子解析部門)
  • 小牧 元(国立精神・神経センター精神保健研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
20,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、磁気共鳴画像による多角的計測を行い、新しい方法論で解析し中間表現型としての脳局所レベル及びシステムレベルでの異常を明らかにし、それら中間表現型と脆弱性遺伝子多型との関連、認知機能異常との関連を明らかにすることにより、統合失調症の生物学的マーカーによる診断法を開発することを目標とする。
研究方法
MRIによる脳の構造学的な異常、神経線維走行の異常及び、脳機能の異常(fMRI計測による)を解析し中間表現型としての脳局所レベル及びシステムレベルでの異常を明らかにし、それら中間表現型の異常と脆弱性遺伝子多型との関連、行動レベルでの異常の原因となる認知機能異常との関連を検討した。さらにそれらの異常の基盤となる脆弱性遺伝子の及ぼすメカニズムを動物モデル、cell biologyの手法にて検討した。本研究は国立精神・神経センター武蔵地区倫理委員会の承認を得て、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針、臨床研究に関する倫理指針、日本神経科学会・ヒト脳機能の非侵襲的研究の倫理問題等に従って行われた。
結果と考察
本研究のリソースとして300名分のMRIおよびゲノムのデータを収集し以下の結果を得た。統合失調症関連遺伝子に関して、以下を明らかにした。1) COMTの遺伝子多型(Val158Met多型)が、統合失調症の脳形態変化に強い影響を及ぼすこと2) BDNFの遺伝子多型(Val66Met多型)が、海馬傍回、尾状核の形態、および脳の加齢性変化に影響をすること、また機能的MRIによる測定にて、Met allele の濃度依存的に記憶課題遂行中の海馬の神経活動が低下すること3)DISC1の遺伝子多型であるSer704Cys多型とうつ病、前頭葉脳構造異常と関連し、その機序としてAktやERKシグナルの関与。これらの結果は、統合失調症関連遺伝子のgenotype effectが脳機能、構造に影響を与え、脆弱性に寄与していることを示唆していると考えられた。またMRIによる診断マーカーとしては、1)脳形態 2)白質微細構造異常が有用であると考えられた。脳形態に関して、統合失調症脳形態の特徴抽出を行いロジスティック回帰モデルを用いて健常者との弁別能を算出した83%の正診率を得た。更に遺伝子解析との組み合わせにおいて、COMT遺伝子のVal158Met多型を考慮して弁別能を算出した結果、90%の正診率を得た。
結論
中間表現系を用いた統合失調症関連遺伝子の研究は、病態解明に有用な方法である。また多型を考慮することによるMRIを用いた診断能の向上を認め、テーラーメード診断の有用性が示された。

公開日・更新日

公開日
2007-04-25
更新日
-