重度精神障害者に対する包括型地域生活支援プログラムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
200632028A
報告書区分
総括
研究課題名
重度精神障害者に対する包括型地域生活支援プログラムの開発に関する研究
課題番号
H17-こころ-一般-006
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 順一郎(国立精神・神経センター精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 塚田 和美(国立精神・神経センター国府台病院)
  • 大嶋 巌(日本社会事業大学)
  • 西尾 雅明(国立精神・神経センター精神保健研究所 )
  • 鈴木 友理子(国立精神・神経センター精神保健研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 日本初の重症精神障害者に対する包括型地域生活支援プログラム(ACT)について、(1)臨床および医療経済学効果について実証的研究を行い、(2)地域精神保健施策の充実に寄与できる新たなシステムのあり方を提言する。
研究方法
(1)平成15年4月にACT臨床チーム(ACT-J)を国立精神・神経センターK病院に立ち上げ臨床を開始、平成16年5月より無作為割付方式による(RCT)エントリーを開始した。同時に研究チームを組織し研究活動を遂行した。
RCTでは、対象者をACT-J群と、対照群=通常の治療・リハビリテーション群に分け比較検討した。対象者はK病院精神科に入院した者から、年齢、診断、居住地、精神科サービス利用状況、社会適応状況などにより選定し、研究参加への同意が得られた時点で、無作為に2群に割り付けた。調査は研究チームが面接と自記式の調査用紙を用いて行った。
(2)平成18年5月からは日本精神科看護協会、日本精神保健福祉士協会等と定期的に勉強会をもち、医療的資源と福祉的資源の結合体としての訪問看護ステーションの可能性について検討を重ねた。
結果と考察
 RCT研究でACT-J群では6ヶ月、1年とも入院日数がエントリー前の日数より有意に減少していた。また入院日数の減少量が対照群に比べ大きい傾向もみられ、エントリー入院時のGAF得点が中央値以下の者に限定した場合、及び、診断を統合失調症と双極性障害に限定した場合では、この差が5%水準で有意であった。医療経済学的には、中間報告(n=38)であるが医療費と社会資源利用の総和としての社会的コストがACT-J群で年間1人150万円程度、対照群では190万円程度と見積もられた。またACT-J群の26%が一般就労を果たしていた。
 訪問看護ステーションに関する検討では、ステーションに精神保健福祉士を配置すること、患者の生活圏への訪問を認めること、同行訪問に加算をつけることなどでACTの実施が可能になることが示された。
結論
 ACTは、RCT研究で入院日数の低減に成果を挙げ、入院費を抑制することで対照群に比して良い費用対効果を示し、一般就労を目指す試みも一定程度の成果を挙げている。即ちACTは重症精神障害者の地域生活の維持に役立つことが実証されつつある。
 また、訪問看護ステーションを強化し、福祉的資源を活用する地域密着型の医療的資源とすることで、ACTが実現可能であることも強く示唆された。
 今後研究成果をもとに研修を充実しACTの全国普及に努めることが重要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-09
更新日
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