文献情報
文献番号
200632024A
報告書区分
総括
研究課題名
ナンセンス変異型筋ジストロフィーのリードスルー薬物による治療法の確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
H16-こころ-一般-027
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
松田 良一(東京大学大学院総合文化研究科)
研究分担者(所属機関)
- 池田 大四郎(財団法人微生物化学研究会微生物化学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
9,482,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
アミノグリコシド系抗菌性物質やサイクロヘキシミドはリボソームに結合し,点変異により生じた未熟終止コドン(PTC)とA部位との結合を阻害することでPTCを読み越えて翻訳を進行【リードスルー】させ,全長タンパク質分子を作らせることが知られている。本研究課題の目的は,ナンセンス変異型筋疾患治療のために,PTCを克服するリードスルー惹起作用をもつ新薬を提案し,リードスルー薬物による治療戦略を確立することにある。
研究方法
生体内でのリードスルー活性解析において,薬効評価を定量化かつ効率化する目的で,3種のPTCをそれぞれ連結部に挿入したβ-ガラクトシダーゼとルシフェラーゼのデュアルレポーター遺伝子を組み込んだ3種のトランスジェニック(Tg)マウスを作出した。PTCを読み越えさせるネガマイシンと三次元類似構造をもつ化合物を,低分子化合物の構造データライブラリーからin silico検索を行い,105万種以上の化合物から29種のネガマイシンの立体配位形成に適合する物質を特定した。そのうち17化合物のリードスルー活性を本解析系で評価した。
結果と考察
現在までに5種の新規リードスルー惹起化合物を特定した。特定したリードスルー惹起薬物候補の中の一つ(化合物#2)は,これまでにリードスルーを惹起することが知られているゲンタマイシンやネガマイシンよりもその効率が高く,濃度依存的な活性をもち,低分子(分子量174)で経口投与による有効性が予想された。そこで,化合物#2を経口胃ゾンデを用いmdxマウスに一週間連日強制胃内投与した結果,血清クレアチンキナーゼ活性の低下と免疫染色によるジストロフィンタンパク質の蓄積を確認した。また正常マウスを用いた2週間連日投与の亜急性毒性では,投与期間中(4-400mg/kg,2週間連日皮下投与)の体重変化や,聴性脳幹反応による聴力検査,18項目における血清生化学検査においても異常は認められず,リードスルー効率と安全性が高く,経口投与可能である化合物#2は薬物候補として非常に有望である。
結論
リードスルー活性検出系となるTgマウスの確立,それらを用いたリードスルー惹起化合物の探索とその投与方法の検討,モデル動物での薬効検証を行った結果,新規リードスルー惹起薬物候補を5種特定し,うち1種については経口投与が可能であること,亜急性毒性が見られないこと,mdxマウスにおいてジストロフィンの回復が見られること等を確認した。
公開日・更新日
公開日
2007-06-01
更新日
-