骨髄間質細胞からの神経並びに筋細胞の選択的誘導とパーキンソン病・筋ジストロフィーへの自家移植治療法の開発

文献情報

文献番号
200632022A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄間質細胞からの神経並びに筋細胞の選択的誘導とパーキンソン病・筋ジストロフィーへの自家移植治療法の開発
課題番号
H16-こころ-一般-025
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
出沢 真理(京都大学大学院医学研究科 機能微細形態学)
研究分担者(所属機関)
  • 星野 幹雄(京都大学医学研究科 腫瘍生物学)
  • 菅野 洋(横浜市立大学 医学部 脳神経外科)
  • 武田 伸一(国立精神・神経センター神経研究所 遺伝子疾患治療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨髄間質細胞は患者本人からの採取が可能であり、骨髄バンクの利用も展望できることから、再生医療の細胞ソースとして最適である。我々は、ヒト骨髄間質細胞からドパミン神経及び骨格筋細胞を特異的に効率よく誘導する方法を開発した。本研究は有効な治療法の開発が切望されているパーキンソン病や筋ジストロフィーに対して、倫理問題や免疫拒絶の制限から開放された「自己細胞移植治療」の実現を目的とするものである。
研究方法
骨髄間質細胞にNotch1細胞質ドメイン(NICD)遺伝子を導入し選択し、サイトカインを投与し神経誘導を行う。誘導神経細胞の特性を解析し、ラットパーキンソンモデル、脳梗塞モデルへ移植した。またサイトカイン投与の後にNICD遺伝子導入を行い、分化培地を投与することによって骨格筋を誘導し、mdx-nude mouseに移植し生着と生体内での分化を調べた。大型哺乳類における実験としてカニクイザルとイヌの骨髄間質細胞を用いた。
結果と考察
骨髄間質細胞にNICD遺伝子を導入することによって神経前駆細胞様に分化転換し、サイトカイン刺激を与えると96%の細胞が神経細胞としての特性を有する細胞が誘導されることがわかった。これら誘導神経にGDNFを投与すると、ドーパミン産生細胞に分化し、培養中でドーパミンを実際に産生・放出することがHPLCにより分かった。これらの細胞を脳梗塞モデル、パーキンソンモデルに移植すると神経細胞として生着し、脳機能改善が認められた。また骨髄間質細胞にサイトカイン刺激とNICD導入を行うと、筋芽細胞,筋衛星細胞,筋管細胞の3種類の細胞が誘導され、筋芽細胞を筋ジストロフィーのモデルマウスであるmdx-nude mouseの前脛骨筋に移植すると成熟した多核の筋線維と分化した。一方誘導した筋衛星細胞は幹細胞として振舞い、繰り返される筋変性刺激に対して、自己複製による自身の増殖とともに、分化した筋線維を繰り返し再生することがわかった。また、カニクイザルの骨髄間質細胞からドーパミンを放出する能力を有する細胞が誘導できた。ビーグル犬では健常犬,筋ジス犬から骨格筋が誘導されておりマーカーの発現も確認している。
結論
倫理問題なく大量に培養可能な骨髄間質細胞から、神経細胞と骨格筋を極めて高い効率で誘導する画期的な方法を見出したことから,神経・筋変性疾患への「自己細胞移植治療」につながる有効なシステムであると思われる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
200632022B
報告書区分
総合
研究課題名
骨髄間質細胞からの神経並びに筋細胞の選択的誘導とパーキンソン病・筋ジストロフィーへの自家移植治療法の開発
課題番号
H16-こころ-一般-025
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
出沢 真理(京都大学大学院医学研究科 機能微細形態学)
研究分担者(所属機関)
  • 星野 幹雄(京都大学医学研究科 腫瘍生物学)
  • 菅野 洋(横浜市立大学医学部 脳神経外科)
  • 武田 伸一(国立精神・神経センター 神経研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨髄間質細胞は短期間に移植に必要な細胞数確保が可能であり、骨髄バンクの利用が展望できること,患者本人の細胞を使えば免疫拒絶が無い「自己細胞移植治療」への発展が期待されるなどから実用性が高い。本研究では生体で神経あるいは筋肉として機能する細胞を骨髄間質細胞から高い効率で誘導するシステムを開発した。有効な治療法の開発が切望されているパーキンソン病や筋ジストロフィーに対して治療法の実現を目指す。
研究方法
骨髄間質細胞にNotch1細胞質ドメイン(NICD)を導入後、サイトカイン投与によって神経誘導を行ない、脳梗塞およびパーキンソンモデルのラットへの移植し有効性を確認した。またサイトカイン投与を最初に行い、NICD遺伝子導入を行うことによって骨格筋誘導を行った。誘導された骨格筋の性質を解析し、筋ジストロフィーモデルマウスに誘導細胞を移植し効果を確認した。骨格筋幹細胞である筋衛星細胞に特異的に発現されている因子を解析し、また筋再生過程におけるそれらの因子の変動を調べた。さらに高等哺乳類の骨髄間質細胞からの神経や筋肉の誘導を試みた。
結果と考察
骨髄間質細胞はNICD遺伝子の導入とサイトカイン刺激で96%の細胞が最終分裂を終えた神経細胞に分化した。これらの神経細胞はラット脳梗塞モデルで海馬と皮質に生着し、脳機能の改善が見られた。誘導神経はGDNF投与によりドーパミン神経に分化し、パーキンソンモデルラットにおいて線条体への生着と症状改善が見られた。骨髄間質細胞にサイトカイン刺激とNICD導入を行うと、筋芽細胞,筋衛星細胞,筋管細胞の3種類の細胞が誘導され、筋ジストロフィーモデルマウスの四肢筋に移植すると筋線維と分化した。一方誘導した筋衛星細胞は幹細胞として振舞い、生体への生着後、繰り返される筋変性刺激に対して筋線維の再生を繰り返した。筋衛星細胞に特異的に発現する遺伝子、カルシトニンレセプター(CTR)は筋衛星細胞の活性化、増殖を抑制し、筋衛星細胞の静止状態を維持するのに必要な遺伝子である事が示唆された。カニクイザルからドーパミン産生能を有する神経細胞細胞と、ビーグル犬では健常犬から骨格筋が誘導された。
結論
骨髄間質細胞から、神経細胞と骨格筋を極めて高い効率で誘導する画期的な方法を見出したことから,神経・筋変性疾患への「自己細胞移植治療」につながる有効なシステムであると思われる。

公開日・更新日

公開日
2007-04-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
200632022C

成果

専門的・学術的観点からの成果
骨髄間質細胞は骨髄中にある間葉系細胞であり、同じ間葉系組織である骨、軟骨、脂肪、心筋への分化が報告されている。本研究では神経、骨格筋などへの効率的な分化誘導システムを確立し、これらの細胞の特性解析、生体での生着と機能改善が示された。神経・筋変性疾患への「自己細胞移植治療」につながる有効なシステムであると期待している。
臨床的観点からの成果
骨髄間質細胞は短期間に移植に必要な細胞数確保が可能であり、骨髄バンクの利用も展望できること,患者本人の細胞を使えば免疫拒絶が無い「自己細胞移植治療」への発展が期待されるので実用性が高い。本研究では生体で神経あるいは筋肉として機能する細胞を骨髄間質細胞から効率よく誘導するシステムを開発した。有効な治療法の開発が切望されているパーキンソン病や筋ジストロフィーに対して治療法の実現を目指す。
ガイドライン等の開発
文部科学省 科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会の「特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会 人クローン胚研究利用作業部会」において人クローン胚の研究目的・利用のあり方についての討議に参加すると共に、わが国における再生医療の現状、ES細胞以外の細胞すなわち骨髄由来の自己細胞を用いた細胞治療に関する専門的意見を説明し、中間取りまとめ報告書が作成された(平成18年6月20日)。
その他行政的観点からの成果
文部科学省 科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会の「特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会 人クローン胚研究利用作業部会」において、わが国における再生医療の現状、ES細胞以外の細胞すなわち骨髄由来の自己細胞を用いた細胞治療に関する専門的意見を説明し、文部科学省生命倫理・安全部会と共に中間取りまとめ報告書を作成し、またわが国における幹細胞利用の現状のとりまとめを行った(平成18年6月20日)。
その他のインパクト
2005年7月8日 日経新聞、産経新聞、京都新聞に記事掲載(骨格筋誘導に関して)。 2006年1月11日 朝日新聞 「進む再生医療:体性幹細胞」にて記事掲載

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
43件
その他論文(和文)
18件
その他論文(英文等)
8件
学会発表(国内学会)
46件
学会発表(国際学会等)
28件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計11件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
文部科学省 科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会
その他成果(普及・啓発活動)
2件
新聞掲載2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Dezawa et al.
Bone marrow stromal cells generate muscle cells and repair muscle degeneration.
Science , 309 (5732) , 314-317  (2005)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-