デュシェンヌ型筋ジストロフィーのアンチセンス治療法の開発

文献情報

文献番号
200632020A
報告書区分
総括
研究課題名
デュシェンヌ型筋ジストロフィーのアンチセンス治療法の開発
課題番号
H16-こころ-一般-023
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
松尾 雅文(神戸大学大学院医学系研究科成育医学講座小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 竹島 泰弘(神戸大学大学院医学系研究科成育医学講座小児科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は最も頻度の高いかつ重篤な遺伝性筋疾患である。しかし、未だ有効な治療法は確立されていない。私たちは、「ジストロフィン神戸」に関する分子病態の詳細な解析結果を基盤としてエクソンのスキッピングを誘導することを応用する「DMDをmRNAレベルで治療する」という独自の治療法を着想した。そして、ジストロフィン遺伝子のエクソン19にスプライシング促進配列があること、このスプライシング促進配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドがエクソン19のスキッピングを有効に誘導することなどの世界的成果をあげてきた。
本研究ではこれまでに、ジストロフィン遺伝子の欠失のホットスポット領域内にあるエクソンを対象として、そのスキッピングを誘導するRNA/ENAキメラの同定とそのDMD患者由来培養筋細胞への導入によるジストロフィンの発現に成功してきた。本年度においては、さらに多くのエクソンのスキッピング誘導が可能になる様に引き続きRNA/ENAの同定を行った。また、スプライシングに必須のエクソン配列の同定に重点をおいた研究を実施した。
研究方法
DMD患者の遺伝子診断を実施し、多くの遺伝子異常を同定したが、その中で極めて特異な遺伝子の異常によりスプライシング異常の発生する例を見い出した。
スプライシング異常を来たしたジストロフィン遺伝子のエクソン内の異常をハイブリッド型ミニ遺伝子に導入し、in vitroのスプライシング反応系を用いてスプライシングに必須エクソン内の塩基を同定する。
結果と考察
エクソン38内の欠失4塩基中の3番目の塩基の置換がエクソンスキッピングを誘導することを明らかにした。これは、この3番目の塩基がスプライシングに必須であること示した。
この結果は、今後エクソンスキッピングを誘導するアンチセンスオリゴヌクレオチドの同定に当たってはその標的部位をこの必須の塩基に焦点を当てることにより容易に決定できることを示す極めて重要な知見であった。
結論
DMDの治療として最も有望視されているエクソンスキッピング誘導治療について、臨床応用研究あるいは基盤整備研究において世界の最先端の成果を挙げることができた。今後、今回の成果をより一層臨床に展開することにより、DMDのより多くの患者の治療が可能となり、DMDの治療が夢から現実へと進むものと大きく期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

文献情報

文献番号
200632020B
報告書区分
総合
研究課題名
デュシェンヌ型筋ジストロフィーのアンチセンス治療法の開発
課題番号
H16-こころ-一般-023
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
松尾 雅文(神戸大学大学院医学系研究科成育医学講座小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 竹島 泰弘(神戸大学大学院医学系研究科成育医学講座小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は最も頻度の高いかつ重篤な遺伝性筋疾患である。しかし、未だ有効な治療法は確立されていない。私たちは、「ジストロフィン神戸」に関する分子病態の詳細な解析結果を基盤としてエクソンのスキッピングを誘導することを応用する「DMDをmRNAレベルで治療する」という独自の治療法を着想した。そして、ジストロフィン遺伝子のエクソン19にスプライシング促進配列があること、このスプライシング促進配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドがエクソン19のスキッピングを有効に誘導することなどの世界的成果をあげてきた。また、アンチセンスオリゴヌクレオチドとして新しい修飾核酸であるENAを用いたより安定性の高いRNA/ENAキメラが強いエクソンスキッピング誘導能を有することを明らかにしてきた。
研究方法
本研究は、①エクソン19のエクソンスキッピング誘導治療を実践に移すこと②ジストロフィン遺伝子の欠失のホットスポット領域内にあるエクソンを対象として、そのスキッピングを誘導するRNA/ENAキメラの同定とそのDMD患者由来培養筋細胞への導入によるジストロフィンの発現③ジストロフィン遺伝子のスプライシングの制御機序解明に関する研究として、スプライシングに必須のエクソン配列の同定などについて研究を実施した。
結果と考察
私達が提唱してきたDMDに対するエクソンスキッピング誘導治療の成功は、世界から大きな注目を集めた。そのため、この治療法の確立を目指した全世界的な研究が極めて活発化した。一方、私達は本研究において多数のDMD患者が治療できるRNA/ENAの同定に成功し、本分野の世界のリーダーとしての地位を引き続き確保した。また、エクソン内の一塩基がスプライシングに関与することを明らかにし、基礎分子生物学の世界にも少なからずインパクトを与えた。
結論
DMDの治療として最も有望視されているエクソンスキッピング誘導治療について、臨床応用研究あるいは基盤整備研究において世界の最先端の成果を挙げることができた。今後、今回の成果をより一層臨床に展開することにより、DMDのより多くの患者の治療が可能となり、DMDの治療が夢から現実へと進むものと大きく期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200632020C

成果

専門的・学術的観点からの成果
私達が提唱してきたDMDに対するエクソンスキッピング誘導治療の成功は、世界から大きな注目を集めた。そのため、この治療法の確立を目指した全世界的な研究が極めて活発化した。一方、私達は本研究において多数のDMD患者が治療できるRNA/ENAの同定に成功し、本分野の世界のリーダーとしての地位を引き続き確保した。また、エクソン内の一塩基がスプライシングに関与することを明らかにし、基礎分子生物学の世界にも少なからずインパクトを与えた。
臨床的観点からの成果
私達が世界に先駆けて提唱してきたエクソンスキッピング誘導治療は、現在では世界の研究者が注目するところとなり、その確立は大競争となっている。本研究成果により、引き続き日本が世界のリーダーであることの基盤が整備された。
ガイドライン等の開発
DMDの治療法のモデルとなる方法を確立した。
その他行政的観点からの成果
DMD患者は12歳で歩行不能になるなど、長期にわたり社会から介護などの支援を受けなければならない。本治療法の確立により行政の方向がDMD患者の支援から治療へと大きく転換するものと期待される。その結果、従来支出されてきた介護などの行政的負担が大幅に解消することが期待される。
その他のインパクト
患者の親の会を開催し、研究成果の報告を行った。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tran, V.K.et al.
A nonsense mutation-created intraexonic splice site is active in the lymphocytes, but not in the skeletal muscle of a DMD patient.
Hum Genet , 120 , 737-742  (2007)
原著論文2
Ishibashi, K.et al.
Novel cryptic exons identified in introns 2 and 3 of the human dystrophin gene with duplication of exons 8-11.
Kobe J Med Sci , 52 , 61-75  (2006)
原著論文3
Katayama, Y. et al.
Co-occurrence of mutations in both dystrophin- and androgen-receptor genes is a novel cause of female Duchenne muscular dystrophy.
Hum Genet , 119 , 516-519  (2006)
原著論文4
Takeshima, Y., et al.
Intravenous infusion of an antisense oligonucleotide results in exon skipping in muscle dystrophin mRNA of Duchenne muscular dystrophy.
Pediatr Res , 59 , 690-694  (2006)
原著論文5
Thi Tran, H T, et al
A G-to-A transition at the fifth position of intron 32 of the dystrophin gene inactivates a splice donor site both in vivo and in vitro.
Mol Gen Metab , 85 , 213-219  (2005)
原著論文6
Matsuo, M., and Takeshima, Y.
Rescue of dystrophin mRNA of Duchenne muscular dystrophy by inducing exon skipping.
Acta Myologica , 24 , 110-114  (2005)
原著論文7
Takeshima, Y. et al.
Intraperitoneal administration of phosphorothioate antisense oligodeoxynucleotide against splicing enhancer sequence induced exon skipping in dystrophin mRNA expressed in mdx skeletal muscle.
Brain Dev , 27 , 488-493  (2005)
原著論文8
Tran V.K. et al.
A novel cryptic exon identified in the 3' region of intron 2 of the human dystrophin gene.
J Hum Genet , 50 , 423-433  (2005)
原著論文9
Surono A, et al.
Chimeric RNA/ethylene bridged nucleic acids promote dystrophin expression in myocytes of Duchenne muscular dystrophy by inducing skipping of the nonsense-mutation-encoding exon.
Hum Gene Ther , 15 , 749-757  (2004)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-