文献情報
文献番号
200632010A
報告書区分
総括
研究課題名
こころの健康についての疫学調査に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-013
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
川上 憲人(東京大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 大野 裕(慶應義塾大学保健管理センター)
- 竹島 正(国立精神・神経センター精神保健研究所)
- 堀口 逸子(順天堂大学医学部)
- 立森 久照(国立精神・神経センター精神保健研究所)
- 深尾 彰(山形大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
31,132,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究はWHOの提示した国際的な精神・行動障害に関する疫学研究プロジェクトであるWorld Mental Health (WMH)に参画し,精神障害(気分、不安、物質関連障害)の生涯罹患率,時点有病率,社会生活への影響等を,複数の調査地域から無作為に抽出した合計4,000人以上の国民の代表とみなせるサンプルについて,こころの健康やその関連要因・危険因子等についての構造化面接を実施する。
研究方法
最終年度にあたる本年度は、①最終調査サイトである横浜市磯子区における調査を完了し、377名(回答率44.4%)のデータを収集した。これにより、平成14-18年度に調査が実施された6県11市区町における地域住民から、当初予定の4千人を上回る合計4,134名(平均回収率55%)の面接データの収集が完了した。②こころの健康に関するデータの活用について専門家の実態および意識調査を実施した。③また平成16年9月に厚生労働省精神保健福祉対策本部の示した「精神保健医療福祉の改革ビジョン」に対応した国民意識の変革のベースラインとなるデータを収集した。
結果と考察
過去12カ月間には約13-14人に1人が何らかの精神障害を経験していた。大うつ病は過去12ヶ月間に2.1%の者が経験していた。過去12カ月間に本気で自殺を考えた者は1.2%であった。何らかの精神障害を経験していた者のうちこころの健康に関する受診・相談経験があったのは約30%、過去12カ月間に何らかの精神障害を経験した者では約17%しか受診・相談していなかった。頻度の高いうつ病には、子供時代や家庭内暴力、軽症の精神疾患、身体疾患への罹患が危険因子となっており、地域の心の健康問題の連鎖の存在が確認された。「ひきこもり」を経験したことがある者は1.1%であった。現在「ひきこもり」の状態にある世帯は0.56%であった。本研究の成果をわかりやすく盛り込んだ行政向けの報告書やスライドファイルを作成した。本研究の方法論について整理し今後の基礎資料とした。「精神医療福祉の改革ビジョン」で示された10年後の目標におけるベースラインとなる日本国民を代表したデータが収集された。
結論
わが国の気分、不安、物質使用障害についてその実態と「満たされていないニーズ」が明らかになった。わが国ではこれらの精神障害の頻度は欧米より低いが、地域住民における気分、不安、薬物使用障害の早期受診の促進、そのための広報・啓発・教育、精神疾患の重症・合併例への重点的な対応、地域の心の健康問題の連鎖を断ち切るライフサイクルを通じた多様な予防対策の重要性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2007-04-24
更新日
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