高機能広汎性発達障害にみられる反社会的行動の成因の解明と社会支援システムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
200632007A
報告書区分
総括
研究課題名
高機能広汎性発達障害にみられる反社会的行動の成因の解明と社会支援システムの構築に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-010
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
石井 哲夫(社団法人日本自閉症協会)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 晃資(目白大学人間社会学部)
  • 白瀧 貞昭(武庫川女子大学大学院心理臨床学)
  • 須田 初枝((福)けやきの郷)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
14,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国においては、高機能広汎性発達障害(HPDD)に対する社会的支援システムについての研究はほとんどない。本研究ではHPDDにみられる反社会的行動への対応を明らかにするために、以下の4つの研究を行った。1.社会的支援システムの構築に関する研究、2.診断マニュアルと精神医学的併存症に関する研究、3.早期支援システムに関する研究、4.福祉施設間連携に関する研究。
研究方法
1.東京都発達障害者支援センターにおける相談および援助実践を通して、社会化促進のための実効性の高い援助法を検討し、HPDD当事者の加害事件報道に関する社会心理学的検討を行った。2.精神科医療施設でかかわったHPDDの人々の反社会的行動および触法行為について調べ、処遇の妥 当性と過去における被虐待状況について検討した。3.就学前にHPDDと診断された幼児の発達特性を調査し、自閉症児の幼児期特性と比較検討した。4.福祉法人施設内連携のあり方および発達障害者支援センターの相談体制について調査した。
結果と考察
1.ひきこもりやこだわり行動が家族関係を悪化させ、激しい問題行動のために家庭崩壊・一家心中などの危機に瀕しているケースが少なからずみられ、マスコミの偏見・誤解が認められた。2.思春期以降に社会的不適応から精神病様症状をきたし、それが反社会的行動に移行することが多く、HPDDに対する精神科医療の確立が急務であった。3.就学期前に診断できたHPDDの子どもの分析から、「活発、奇異型」特性が反社会的行動の発生要因として重要な役割を果たしている可能性が示唆された。4.福祉施設間の連携が重要であり、自閉症判定基準β1.1がHPDDの人々の生活の困難さを適切に把握するのに有用であった。
結論
本研究の成果は、HPDDの人々の反社会的行動に対する予防・支援策を具体的に検討する上で貴重な資料を提供するものであり、次のような行政的意義が認められた。1.一斉健診制度を早期からの前方視的フォロー・システムに結びつけることができれば、きわめて有効である可能性がある。2.シェルター機能を備えた実践的な受け皿としての生活支援センターを構築することが急務である。3.医療・福祉・司法の連携を組織化し、一般精神科病院におけるPDDの人々の診療体系を開発・整備することが不可欠である。発達障害者支援法および障害者自立支援法を施行する上での貴重な資料が得られた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-24
更新日
-

文献情報

文献番号
200632007B
報告書区分
総合
研究課題名
高機能広汎性発達障害にみられる反社会的行動の成因の解明と社会支援システムの構築に関する研究
課題番号
H16-こころ-一般-010
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
石井 哲夫(社団法人日本自閉症協会)
研究分担者(所属機関)
  • 山崎 晃資(目白大学人間社会学部)
  • 白瀧 貞昭(武庫川女子大学大学院心理臨床学)
  • 須田 初枝((福)けやきの郷)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 こころの健康科学研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国においては、高機能広汎性発達障害(HPDD)に対する社会的支援システムについての研究はほとんどない。本研究ではHPDDにみられる反社会的行動への対応を明らかにするために、3年間にわたって以下の4つの研究を行った。1.社会的支援システムの構築に関する研究、2.診断マニュアルと精神医学的併存症に関する研究、3.早期支援システムに関する研究、4.福祉施設間連携に関する研究。
研究方法
1.弁護士との共同検討を行い、反社会的行動を繰り返すHPDDの人々への社会福祉支援のあり方を検討した。HPDD当事者の加害事件報道に関する新聞記事を分析し、社会心理学的検討を行った。2.東京都発達障害支援センター、精神科医療施設、司法関連施設でかかわった反社会的行動を有するHPDDの人々の実態を調査した。3.HPDDの子どもの就学前の早期診断のための検出項目と早期兆候などの検討を行った。4.けやきの郷内各施設のHPDD支援の検討と、療育手帳と自閉症判定基準β1.1による評価の比較検討を行った。
結果と考察
1.当事者の言動を調整する人的フレームがないために、非社会的な行動形態から反社会的行動が生じる可能性が高く、多くのマスコミ関係者は、HPDDに対する誤解や偏見・差別を持っていた。2.継続的な精神科医療システムがなく、行き場がなく家庭崩壊状態にあるケースが多いことが明らかになった。3.就学前にHPDDの診断を行うために必要な早期兆候が明らかにされ、母子愛着関係を確立することを目標とする指導法が有効であった。4.発達障害者支援センターは、地域における支援者のHPDD理解を向上させることができた。自閉症判定基準β1.1評価は、療育手帳の給付の範囲を広げる基準として有用であった。
結論
3年間に及ぶ研究から以下のことが明らかになった。1.反社会的行動を有するHPDDの人々を支援するには、支援者間の質的連携が重要であり、シェルター機能を備えた実践的な受け皿としての生活支援センターの構築が必要である。2.発達障害に対する精神科医療のあり方を再検討し、福祉・司法施設との連携を早急に検討しなければならない。3.HPDDが3?5歳頃に診断され得ることが明らかになり、早期からの前方視的フォローが反社会的行動の出現を未然に防止し得る可能性のあることが示唆された。4.HPDDの反社会的行動は、いじめなどの被害遭遇体験と密接に関係して起きており、その対策が急務である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200632007C