地域保健医療福祉ケア支援情報システムの構築に関する研究

文献情報

文献番号
199700231A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健医療福祉ケア支援情報システムの構築に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
星野 桂子(国立医療・病院管理研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 葭田美知子(厚生連老人保健施設かみつが)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域医療では、病院や老健施設、福祉施設等の施設ケアと在宅医療、訪問看護、ホームヘルプサービスの連携が不可欠である。連携には、看護介護にたずさわるすべてのケア関係者が、患者の状態と実際に実施したサービスについて、情報を共有できるようにすることが必要である。本研究は看護介護情報、ケア情報の共有化に必要な情報システムのハードウェアおよびソフトウェアを検討することである。
研究方法
昨年度、厚生連の訪問看護ステーションで、訪問看護で現在使われている情報とその伝達蓄積方法、地域の保健医療福祉サービス従事者が利用できるハードウェアを調査し、訪問看護情報について、管理システムの試案作成とシステムの基本設計を行い、また、情報管理ツールを検討した。今年度は、昨年度の研究結果に基づき、第一に、訪問看護ステーションで収集蓄積されるべき情報の電算機用各種マスタを作成した。第二に、基本設計に基づく、地域看護支援情報システムの詳細設計を行った。各種マスタ作成は、実際に訪問看護を行っている看護婦保健婦に、記録すべき言葉を挙げてもらい、これらを整理し、コード体系や階層化について検討した。地域看護支援システムの詳細設計は、訪問看護担当者と共同でシステム要件を検討し、システム開発担当者が具体的なモジュール設計を行った。
結果と考察
訪問看護ステーションで現在使われているシステムは報酬明細書作成向きで、訪問看護記録として十分ではない。これに対して、訪問担当者からの要望をまとめると、看護内容や訪問利用者の心身の状態、介護者の状態をパソコンに蓄積し、転記作業を軽減し報告書や看護記録を書く手間を省くことである。そこで、第一に、看護記録マスタに登録すべき言葉を調査した。結果は次のとおりである。1. 病状の経過:バイタルサイン、食事、排泄物、皮膚、麻痺、疼痛、睡眠、精神状態など、2. 看護処置・内容:内服確認、看護計画、清潔、褥創、処置内容、膀胱洗浄、包帯交換、医療機器装着、チューブ類、各種指導助言、3. リハビリ:マッサージ、関節可動域訓練、座位訓練、バランス訓練、言語、嚥下、排泄、呼吸訓練、4. 主介護者の状況:続柄、年齢、健康状態、受診の有無、病名、介護に対する思い、介護代行者の有無、理解力、実行力、意欲、生活パターン、5. 親・親戚の状況:家族構成、職業、親族の力動、介護代行者、経済支援、6. 医療情報と処置行為:治療方針、処置内容、検査結果、7. その他:社会資源活用状況、職種、機関の場所と利用頻度、入所施設は利用開始日と利用期間など。これらの情報は、看護の経過記録の中では記録順に並べればよいが、訪問看護報告書や訪問看護計画書を作成する場合は、それぞれ決めらた場所に記載しなければならない。基本設計では、記録内容ごとにマスタを作成する仕様になっていたが、実際にマスタを作成してみると、記録内容ごとのマスタでは重複が生じることが明らかになった。そこで、すべての内容を一括して訪問看護記録マスタの中に入れることにした。どこのどの項目を記録するかは、マスタレベルで分類せず、記録を作成する際にデータベース上のコードで選択することにした。看護記録マスタに看護項目として入力されたのは266、疾患名は453である。まだ、すべての疾患名と看護項目が対応していないし、検討した入力項目のすべてが選択肢に展開されているわけではない。今後、地域と各種施設、医療機関間の情報共有化を図っていくためには、自由記載をできるだけ選択肢に置き換えることが有利と思われるが、短期間に用語の統一を行うのは無理である。看護項目の選択肢への展開とマスタの変更、疾患や看護診断と看護項目との
対応表の拡張は、システムを使いながら追加更新していけるよう設計することにした。次に、システムの詳細設計をおこなった。今回開発するシステムの要件は次のとおりである。1) 小規模であるが、複数クライアントからの同時使用が可能である。2) 操作性に関してプロトタイピングによる検証が容易にできる。3) データベースの保守・機密保持性が良い。4) 訪問先で看護データの参照と入力が可能である。これら4つの要件を満たし、ファイルサーバー方式、DBF形式データベース、携帯端末の使用を前提として、モジュール構成を検討した。結果は次のとおりである。1 患者基本情報(患者一覧リスト、患者基本情報新規入力、患者基本情報更新、患者基本情報の削除、バックアップ)、2 看護計画作成(患者一覧リスト、看護問題、介護問題設定、問題からの看護・介護項目の導出、看護・介護項目の選択、スケジュールの設定)、3 携帯端末データ送受信(PCから携帯端末への看護・介護計画のダウンロード、携帯端末からPCへの看護・介護記録のアップロード)、4 看護記録入力(新規入力、更新入力、看護記録ビューア、訪問看護記録帳票作成)
結論
今年度は、地域看護支援システムのマスタ作成と詳細設計を行った。今後、訪問看護に限らず、施設や医療機関との情報共有化を図るためには、看護記録マスタの充実が最も大きな課題と思われる。今回の研究を通して、日々の記録を登録し、これらを統計分析しマスタを充実させることが重要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)