変形性関節症の治療・予防の標的分子の同定とその臨床応用

文献情報

文献番号
200631021A
報告書区分
総括
研究課題名
変形性関節症の治療・予防の標的分子の同定とその臨床応用
課題番号
H17-免疫-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
中村 耕三(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
研究分担者(所属機関)
  • 守屋 秀繁(千葉大学 大学院医学研究院 整形外科)
  • 越智 光夫(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科 運動器機能再建学)
  • 山田 治基(藤田保健衛生大学 整形外科)
  • 片岡 一則(東京大学 大学院工学系研究科・医学系研究科)
  • 川口 浩(東京大学医学部附属病院 整形外科・脊椎外科)
  • 福井 尚志(独立行政法人国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 病態総合研究部)
  • 吉村 典子(東京大学大学院医学系研究科 関節疾患総合研究講座)
  • 大森 豪(新潟大学 超域研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
62,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
変形性関節症(OA)に対する系統的・包括的な研究は皆無に近く、その公的な研究支援規模も余りにも小さい。我々は、OAの細胞・分子レベルでのメカニズムの解明と、画期的な治療・予防法の開発を目指して、その系統的・統合的研究体制ROAD(Research on Osteoarthritis Against Disability)プロジェクトを樹立した。
研究方法
大規模臨床統合データベースを用いた観察疫学研究によって疫学指標や診断基準を確立して予防・治療の確固たるエビデンスとする。同時に、マウスジェネティクス、ヒトOA手術標本での発現解析からOAの分子背景を解明を目指す。これと並行して、上記標的分子関連シグナルの軟骨再生医療への応用、OA病変部に遺伝子導入するためのベクターとしてのナノミセル人工ウイルスの開発を進めることによって、画期的な治療・予防法の開発を行う。更にMRI画像および生化学マーカーによるOAの正確な診断法の開発を目指す。
結果と考察
ROADプロジェクトの現在までの解析からその有病率を計算すると、膝OAで50-75%、腰椎OA で55-84%であり、従来の試算よりもはるかに高いものであることが判明した。また、有病率に影響する因子(性別、地域)は膝OAと腰椎OAでは全く異なっていた。標的分子の解明に関しては、MMPやRunx2など軟骨細胞の肥大分化がOA発症の引き金となることが示され、マウスジェネティクスとヒトLCMで共通の分子が同定され始めた。この両者を組み合わせることによってOAの分子ネットワークの解明が可能になると思われるが、これを標的とした治療への応用のために、高分子ナノミセルが効率的かつ低侵襲の遺伝子導入システムとして大きな可能性を持つことが明らかとなり、また新しいcell delivery systemが今後の軟骨再生医療における新機軸となりうることが示された。更にOAの診断に関しても、その重症度を客観的に定量化するためのMRIによる画期的な方法が提唱され、また血清マーカーであるCOMP値やHA値がそれぞれ異なったOAのパラメータを予測するのに有用であることが示された。
結論
ROADプロジェクトでは目標の10,000例以上の大規模統合臨床データベースが実現可能な数字であることがわかった。将来的には、この大規模データベースを軸として、病態解明、治療・予防、診断法に関する研究を統合し、我が国から世界に発信する最先端の系統的なOA臨床研究に繋げる予定である。

公開日・更新日

公開日
2007-07-13
更新日
-