文献情報
文献番号
200631012A
報告書区分
総括
研究課題名
呼気凝縮液を用いた気管支喘息の気道炎症評価法の確立と臨床応用に関する研究
課題番号
H17-免疫-一般-004
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
一ノ瀬 正和(和歌山県立医科大学医学部内科学第三講座)
研究分担者(所属機関)
- 秋山 一男(独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター)
- 長瀬 隆英(東京大学医学部呼吸器内科)
- 大田 健(帝京大学医学部内科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫アレルギー疾患予防・治療研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
気管支喘息の本態は慢性気道炎症であり、その評価法の確立は気管支喘息の管理向上に不可欠である。今年度の研究では無侵襲かつ簡便な呼気凝縮液を用いた気道炎症評価法の妥当性、有用性についての検討を行うとともに、一般臨床への応用に向けての炎症物質の定量測定に関する検討を行った。
研究方法
呼気凝縮液はECoScreenを用いて採取した。呼気凝縮液及び唾液中の炎症物質の蛋白発現をHuman Cytokine Array kitを用いて測定し、比較した。喘息患者の呼気凝縮液中で増加していた9種類の炎症物質について、8週間の吸入ステロイド治療を行い、その発現レベルに対する効果について検討した。また呼気凝縮液中のシステニルロイコトリエン(CysLTs)濃度と増悪との関連を検討した。さらに呼気凝縮液の種々の炎症物質の定量測定を行った。
結果と考察
呼気凝縮液と唾液中の炎症物質の発現プロファイルはまったく異なり、含有蛋白濃度で補正後の各炎症物質の発現レベルは、唾液に比べ呼気凝縮液で明らかに亢進していた。また、喘息患者の呼気凝縮液中で増加していた炎症物質のうち、IL-4、RANTES、MIP-1α、MIP-1β、IL-17はステロイド治療で発現が抑制され、とくにIL-4、RANTESの発現の変化は、1秒量の予測値に対する割合(%FEV1)や初期呼吸抵抗などの気流制限の程度の変化や、気道反応性の変化との間に有意な相関が認められた。一方、IL-8、TNF-α、IP-10、TGF-β1はステロイド治療に抵抗性を示した。一年以内に増悪した例では、呼気凝縮液中CysLTs濃度が有意に高値で、増悪予測のcut offとして1.75pg/mlが最も妥当と考えられ、感度77.7%、特異度73.3%であった。呼気凝縮液中のIP-10、MCP-1、MIG、RANTES、IL-8が定量測定可能であった。また、呼気凝縮液中Eotaxin濃度は %FEV1と有意な相関を認めた。
結論
呼気凝縮液解析は唾液の影響を受けずに気道の炎症病態を評価可能であり、診断やステロイド治療の指標として有用と考えられた。また、呼気凝縮液中CysLTs濃度は気管支喘息の増悪の予測因子となりうることが示唆された。さらに、いくつかの物質は定量測定が可能であり、一般臨床への応用に向けての可能性が示された。
公開日・更新日
公開日
2007-07-13
更新日
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