肝炎ウイルス感染の肝外病変の基礎的及び臨床的包括研究

文献情報

文献番号
200630022A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルス感染の肝外病変の基礎的及び臨床的包括研究
課題番号
H18-肝炎-一般-005
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小池 和彦(東京大学医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 佐田通夫(久留米大学医学部)
  • 岡上 武(京都府立医科大学)
  • 熊田博光(虎ノ門病院)
  • 石坂信和(東京大学医学部附属病院)
  • 四柳 宏(東京大学医学部附属病院)
  • 山口一成(国立感染症研究所)
  • 勝二郁夫(国立感染症研究所)
  • 森屋恭爾(東京大学医学部附属病院)
  • 松浦善治(大阪大学微生物病研究所)
  • 小原恭子(熊本大学医学薬学)
  • 林 純(九州大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
95,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国では、約180万人の人がHCVに、100万人がHBVに感染しており、慢性肝炎、肝硬変、肝癌へと到る連鎖に苦しめられている。一方、HCV感染症、HBV感染症が単に肝臓だけの感染症では無いことも、それらの発見の比較的初期から見いだされてきている。HCV感染者ではクリオグロブリン血症が多く見いだされ、また膜性増殖性腎症の発生が多い。シェーグレン症候群、扁平帯癬もHCV感染症との強い関連性があり、B細胞リンパ腫との関わりも地域によっては存在しているが、日本においてはその実態は全く不明である。C型肝炎には脂質代謝異常や糖代謝異常・インスリン抵抗性が合併しやすく、慢性肝炎の進行に影響を与えることも示唆されてきている。
 本研究においては、ウイルス肝炎における全身的病変の頻度を疫学的に明らかにし、次いで、基礎的研究によってその原因を究明することを目的とする。
研究方法
臨床面と基礎面の双方から多角的に検討を行なう。
結果と考察
住民検診の結果、HCV感染者においては扁平苔癬の合併頻度が高いことが明らかになった。
2. 糖尿病、インスリン抵抗性、甲状腺機能異常、関節リウマチ等の肝外徴候もHCV感染者では多いことが明らかになりつつある。
3. C型肝炎においては、糖尿病、インスリン抵抗性、肝脂肪化の合併が多く、酸化ストレスの産生を通して慢性肝炎の進行に関与していることが明らかになりつつある。
4. インスリン抵抗性と脂質代謝異常がC型肝炎の治療効果に及ぼす効果について、データを収集した。
5. HCV感染がメタボリック症候群の頻度を増加させているかについて、人間ドックデータを用いて解析を行なっている。
6. 住民検診の結果、HCV感染症では血清総コレステロール値、LDLコレステロール値有意に低いことが明らかとなった。
7. HCV感染とBリンパ腫の関連性について臨床データを収集している。
8. HCVコア蛋白質によるインスリン抵抗性発現のためには、プロテアゾームアクティベイターPA28γが必須であることが明らかとなった。HCV病原性の抑制法の開発に通じる重要な発見である。
9. HCVゲノムの全長をコンディションナルに発現するトランスジェニックマウスを確立した。今後これを用いて肝外病変、特にリンパ性病変について検討を行なう。
結論
肝炎ウイルス感染症は全身疾患である。その様な認識をもって感染者の管理・治療に当ることにより、患者の予後、QOLを大幅に改善することが期待される。来年度以降、詳細な機序の検討を行う。

公開日・更新日

公開日
2007-03-23
更新日
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研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-17
更新日
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