透析施設におけるC型肝炎院内感染の状況・予後・予防に関する研究

文献情報

文献番号
200630019A
報告書区分
総括
研究課題名
透析施設におけるC型肝炎院内感染の状況・予後・予防に関する研究
課題番号
H18-肝炎-一般-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
秋葉 隆(東京女子医科大学血液浄化療法科)
研究分担者(所属機関)
  • 森兼 啓太(国立感染症研究所感染情報センター)
  • 安藤 亮一(武蔵野赤十字病院腎臓内科)
  • 佐藤 千史(東京医科歯科大学保健衛生学科)
  • 藤岡 知昭(岩手医科大学医学部泌尿器科学講座)
  • 小林 光樹(東北大学医学部保健学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
透析において院内感染が頻発している。我々は平成11年厚生科学「透析医療における感染症の実態調査予防」(秋葉隆)において「院内感染対策マニュアル」を作成し感染対策の徹底を図ってきた。HCV感染新規発生率は2.2%(平成16年)と驚くべき高値で、透析患者は、垂直感染・薬物中毒患者と並ぶ高リスク群である。そこで、HCV感染の実態を明らかにし、その防止策を策定し、感染対策マニュアルを改定することで院内感染の減少をもたらせるか検証する。
研究方法
1.合衆国の透析施設を見学し、C型肝炎などの感染制御の方針や手技の情報を収集し、欧米各国の透析関連感染制御のガイドラインを調査した。
2.感染症対策に関するアンケートを慢性透析施設4000施設に発送し、回答を得た。
3.関東地区で14年前に設定された透析患者約2000名のコホートの経過を追跡する。
4.岩手県北部地域の透析患者の悉皆性コホートにC型肝炎調査を付け加え、選択バイアスのない集団でのC型肝炎感染実態を明らかにする。
5.透析医療の院内感染、特にC型肝炎感染予防策実施状況とコストに関する調査を行った。また、C型肝炎ウイルス感染の免疫異常と予後を調べるためデータベース登録を行った。
結果と考察
1.透析現場スペースや人員などの環境の相違に応じて各国がそれぞれ独自にC型肝炎予防に関する方針を打ち出している。
2.アンケート回収、解析中である。
3.HCV感染患者は14年間で約半数が死亡し、肝細胞癌の発生が見られる。
4.透析患者のC型肝炎感染率は、一般人に比し男性8倍、女性5倍だった。
5.「マニュアル」に基づいたアンケート調査で、質問124項目に対し「まもられている」と「概ねまもられている」が大多数であった。データベースには845症例登録された。
結論
1.日本の透析関連C型肝炎の伝播防止は、短期的には日本の透析医療環境に適合した形で行なわれるべきで、長期的には透析医療環境の是非を検討していく必要がある。
2.透析患者のHCV感染の予後への影響が明らかになり、その予防の重要性が強調された。
3.全国施設アンケート解析および仙台・岩手・関東の患者コホート調査により感染症の発生頻度、院内感染対策、透析操作の実際を明らかにする。
4.マニュアルの遵守状況と院内感染の関連が明らかになり、マニュアル改定の資料が得られた。
5.これらの知見をもとに、2年目には感染対策マニュアルの改訂を行い、その改訂により院内感染の減少が観察されるかを3年目に調査する。

公開日・更新日

公開日
2007-03-29
更新日
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