保健・医療・福祉の有機的連携の一層の強化に関する研究

文献情報

文献番号
199700228A
報告書区分
総括
研究課題名
保健・医療・福祉の有機的連携の一層の強化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
曾根 啓一(新潟県福祉保健部次長)
研究分担者(所属機関)
  • 折茂賢一郎(六合温泉医療センター長)
  • 尾島俊之(自治医科大学公衆衛生学教室助手)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 保健医療福祉地域総合調査研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
-
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
限られた資源の中で、均質的なサービスを提供するためには、保健・医療・福祉の有機的連携がますます必要になっている。「global denken」(包括的に捉え、地域が実践する)という流れは地域保健法の実施によって、また介護保健法の導入に向けて定着しつつある。さらに、大きな課題として「Alterspolitik von unten」(地域が主体となって対処する老人問題)がある。最小限のマンパワーで最大限の効果を引き出すことに成功していると思われる事例を調査・研究し、有機的な連携のために必要な要因を抽出して明らかにすることを、一方では二次医療圏を単位として、保健担当マンパワー数と保健・医療の効果との関連を明らかにすることを目的とした。
研究方法
保健・医療・福祉の有機的連携がうまくいっているフィールドにおいて、その要因を調査・分析した。次いで、保健・医療を担うマンパワーについて、平成7年の保健所運営報告、地域医療基礎統計1995年版のデータを用いて二次保健医療圏ごとの保健婦(士)等の人数を求め、その数と保健・医療の効果との関連を求めた。
結果と考察
フィールドにおいての調査・分析では、ハード面の基盤整備の段階から保健・医療担当者と行政担当者とが協力して企画・立案に参画していることから、双方の意識が高く、それを実施していく段階で福祉を取り込み、効率的な人員配置を行っていた。これらを進めていきながら健康教育にも取り組み、結果として地域住民の健康に対する関心も高くなっていた。「地の利」もさることながら「人の利」を活かし、「健康に対する動機付け組織」として機能している保健自治会が結成されている地域もあった。マンパワーについては、人口1万対保健婦数と多くの指標との間に統計学的に有意な相関がみられたが、交絡因子として作用する人口規模の影響を除くため、保健婦数指数として保健婦数評価値を用いて、これと各種指標との関連をみた。有意な正の相関がみられたのは老人保健事業と脳血管疾患SMRであり、死亡状況改善にも一定の保健・医療効果があった。有意な負の相関がみられたのは入院受診率であった。入院医療費、入院外受診率、入院外医療費には負の相関傾向がみられた。
結論
保健・医療・福祉の有機的連携が進んでいる又は成功している事例を調査・分析すると、そこではハード面を整備していく時点から保健・医療を担っている人々と行政を担う人々とが協力して企画立案に参画していた。そして、ハード面の基盤整備を行う中で、保健・医療の延長にある福祉をも取り込みつつ、必ずしも「数」が十分でないが、効率的なマンパワー配置を行っていた。それぞれの分野が企画立案段階、基盤整備段階から参画していることから、それぞれの分野を担当する人々の意識が高くなっており、協力・連携が自然に成立している。そこから保健、つまり一次予防の大切さを認識し、健康教育を実践するようになっている。あるフィールドにおいては、保健自治会が結成され、常に「健康に対する動機付け組織」として機能していた。また、別のフィールドにおいては「人の利」を最大限に活かし、Co-Medicalsが存分に能力を発揮できるような「場」を作り上げ、各職種がチームとして密に連携し、住民サイドに立ったサービス提供者に徹していた。マンパワー(保健婦数:人口1万対保健婦数に代わって保健婦数評価値を用いることで、人口規模の影響を除くことになる)と保健・医療効果との関連では、老人保健事業実績に対して大きな効果がみられた。医療費や死亡状況改善にも一定の効果があった。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)