L3分画および血流中癌細胞テロメラーゼを指標とした肝細胞癌のサーベイランスの有用性

文献情報

文献番号
200630015A
報告書区分
総括
研究課題名
L3分画および血流中癌細胞テロメラーゼを指標とした肝細胞癌のサーベイランスの有用性
課題番号
H17-肝炎-一般-011
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
青柳 豊(新潟大学教育研究院医歯学系 医学部第三内科)
研究分担者(所属機関)
  • 恩地 森一(国立大学法人愛媛大学 医学部消化器内科)
  • 田中 榮司(国立大学法人信州大学 医学部消化器内科)
  • 高木 均(国立大学法人群馬大学 病態制御内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は肝癌患者に対して,治療前後のAFP-L3分画ならびに血流中肝癌細胞のテロメラーゼ活性に基づき治療法を選択し,予後改善を図ることを目的とする.
研究方法
AFP-L3分画はLBA法を用いて測定し,テロメラーゼ発現は血中癌細胞を磁気Beadsにより収集しRNA抽出後,RT-PCR法によりhTERT mRNAを増幅し検出する.これらマーカーの治療前の多寡および治療後の低下率と,肝癌の再発率および生命予後ついて検討する.
結果と考察
前年度に得られた生命予後をアウトカムとした後ろ向き研究の知見に対し確証的な結果を得るため,平成18年度は無再発生存をアウトカムとして,肝癌患者190例の治療データを前向きに解析した.その結果,治療前・後のAFP-L3分画は,無再発生存期間を有意に層別化し,治療後測定値での有意性が強いこと,更に,多変量解析にて治療後AFP-L3が最も有意な再発規定因子であることが確認された.これら,前年度の知見と矛盾しない結果が得られた一方,治療法別の検討では,外科切除とラジオ波焼灼術は,無再発生存の観点からは,AFP-L3分画の高値群,低値群で治療成績が同等であると評価された.これは,前年度の後ろ向き研究により得られた,術前のAFP-L3分画に影響を受けない治療法は手術療法のみである,という結果と乖離した結論であった.これら外科切除もラジオ波焼灼術も選択可能な症例において,治療選択の基準を明確にすることは,本研究の最重要な課題であり,次年度以降はこの問題に重点を置き,症例の蓄積と追跡調査を行う予定である.一方,hTERTを指標とした血中癌細胞の検出に関しても,前向きに症例を蓄積し評価した結果,hTERT陽性症例は治療前94例中9例と既報から予想された症例数より低値であることが確認された.また,無再発生存の検討では,治療前hTERT陰性者に比較して陽性者では無再発生存の短縮傾向を認めたが,有意差は確認できなかった.今後,登録症例の追跡調査を引き続き行う予定であるが,同時に,hTERT測定手技の改良を検討する必要がある.
結論
治療後のAFP-L3は他のマーカーや腫瘍ステージと独立した最も有意な再発規定因子であることを確認した.血中肝癌細胞hTERT検出では,治療前の血中癌細胞陽性症例の無再発生存率が低い傾向が認められた.

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-