培養細胞で感染複製および粒子形成が可能なC型肝炎ウイルス株を利用したワクチン開発

文献情報

文献番号
200630013A
報告書区分
総括
研究課題名
培養細胞で感染複製および粒子形成が可能なC型肝炎ウイルス株を利用したワクチン開発
課題番号
H17-肝炎-一般-009
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
脇田 隆字(国立感染症研究所ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 石井孝司(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 望月英典(東レ株式会社医薬研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
培養細胞で感染性ウイルスを産生するJFH-1株を用いて感染中和活性の定量法を開発し、HCVウイルス粒子の大量生産によるワクチン開発を行うことである。このために、ワクチン開発のための基礎技術を開発し、臨床試験を可能とするための検討を行う。
研究方法
1.中和抗体価測定のためのアッセイ系の開発
2.ウイルス粒子産生細胞の培養上清から回収したリコンビナントウイルスの精製と不活化
3.構造領域遺伝子のcDNA発現による中空粒子の作製
4.作製したワクチンによる免疫能の検定
結果と考察
ウイルス精製法の確立
シードウイルスを継代培養した。感染細胞をセル・スタックチャンバーにて培養し、ウイルス液を回収した。限外ろ過、蔗糖密度遠心、ヘパリンカラムを組み合わせ、ウイルス精製法を確立した。8000倍の精製が可能となった。
精製ウイルス性状解析とマウスへの免疫
電子顕微鏡で直径50-60nmの球状粒子を観察した。また、蛋白質電気泳動および質量分析によりウイルス液中の蛋白質を同定した。この解析はウイルス粒子の生成過程などの解明につながることが期待できる。さらに精製ウイルス粒子液をアジュバントと共にマウスに免疫した。
キメラウイルスの作製
JFH-1全長遺伝子の構造領域遺伝子を組み換えることにより、他のHCV株の構造蛋白質をもつキメラウイルス粒子を作製した。組み換えるHCV株によりウイルス産生の効率が異なっていた。
構造領域遺伝子cDNA発現によるウイルス様中空粒子の作製
レプリコン細胞にJFH-1の構造蛋白を恒常的に発現する細胞を樹立した。この細胞から構造蛋白とウイルスRNAが分泌され、構造蛋白とRNAは比重が1.15前後に回収された。この構造蛋白とRNAはヘパリンに結合し、ウイルス粒子を形成していることが示唆された。
結論
感染予防が可能なワクチンが開発できれば、医療従事者などのハイリスクグループに対処することが可能となる。中和抗体による感染防御が可能となれば、医療事故にも対処可能となる。予防用ワクチンを世界に先駆けて開発することができればHCVキャリアー率の高い国々への国際協力が可能となる。特に海外に多い薬物常用者のHCV感染やHIV感染者のHCV重感染の予防が可能となる。治療用ワクチンの開発も期待されている。HCVの新たな治療法となれば、多くの患者の社会復帰を可能にし、医療保険のコスト軽減に寄与できる。

公開日・更新日

公開日
2007-03-29
更新日
-