C型肝炎ウイルス等の母子感染防止に関する研究

文献情報

文献番号
200630012A
報告書区分
総括
研究課題名
C型肝炎ウイルス等の母子感染防止に関する研究
課題番号
H17-肝炎-一般-008
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
大戸 斉(福島県立医科大学医学部 輸血・移植免疫部)
研究分担者(所属機関)
  • 白木 和夫(鳥取大学医学部)
  • 藤澤 知雄(国際医療福祉大学熱海病院)
  • 松井 陽(筑波大学臨床医学系)
  • 木村 昭彦(久留米大学医学部)
  • 田尻 仁(大阪府立急性期・総合医療センター)
  • 稲葉 憲之(獨協医科大学医学部)
  • 溝上 雅史(名古屋市立大学大学院医学研究科)
  • 長田 郁夫(鳥取大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成17(2005)年度
研究終了予定年度
平成19(2007)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1) C型肝炎ウィルス(HCV)感染経路における母子感染を予防するためリスク因子を明らかにすることが必要であり、これによりリスク低減処置などの有効な感染防止対策が可能となる。
(2) HCV感染成立児の長期経過予後を明らかにしその疫学を解明し、さらにインターフェロン(IFN)などの介入治療など、治療方針をしめす。
(3) B型肝炎ウィルスの母子感染防止対策を検証し、有効かつ簡便なワクチン接種法の検討を行う。
研究方法
(1) 多施設共同研究により、HCV感染が判明した妊婦に、同意を得た上で、定期的に追跡検査する。母子感染に関与する因子(ウィルス量、分娩様式など)が同定され、予防処置を講じることが可能となる。
(2) HCV感染児の長期自然経過を明らかにするとともに、IFN等の治療介入を行った児における治療効果および発育などへの影響を評価することで治療方針を確定し提供する。
(3) HCV感染妊婦とその児への対応方針を示した「C型肝炎ウィルス感染妊産婦と感染児治療指針」(平成16年度作成)の検証および周知をはかることで、一般および医療機関への本疾患の認識および浸透を図ることができる。
(4) B型肝炎ウィルス母子感染の実態と転帰を明らかにし、現行の予防対策方式(免疫グロブリンとワクチン)の有効性を評価し、予防対策を再検討する。
結果と考察
(1) 多施設共同研究にて、妊婦抗体陽性率HCV RNA陽性妊婦における母子感染率は12.0%(55/460)であった。
(2) HCV母子感染の成立にかかるリスク因子に関しては、妊婦の高ウィルス量のみが有意であり、妊娠時肝炎発症等の因子に関しては感染率に差は認められなかった。
(3)HCV持続感染児57例中、3歳の時点でHCVが消失したのは15例(26%)であった。また、感染児に対するPEG-IFNによる治療施行症例は12例で、治療終了時でのウィルス消失率は80%(8/10) であった。
(4) 現行のB型肝炎予防措置にて41例中2例で母子感染が成立した。HBIGは1回のみの接種し、遺伝子組み換えHBワクチンを生後6日以内、1ヶ月時、3ヶ月時の計3回行うHBワクチン早期投与方式を15例に行い、良好なHBs抗体価の上昇がみられている。
結論
(1)HCV感染児の30%は無治療でもHCV感染が自然治癒するが、治療介入成績の分析からIFNの投与期間や投与量の増量も含め、治療コンプライアンスの検討が必要である。
(2) B型肝炎早期ワクチン接種法の検討から、この投与法の有効性の証左が得られつつある。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-