予後改善を目指した肝臓がん再発に影響を与える因子に関する研究

文献情報

文献番号
200630009A
報告書区分
総括
研究課題名
予後改善を目指した肝臓がん再発に影響を与える因子に関する研究
課題番号
H16-肝炎-一般-022
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小俣 政男(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 晴彦(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 椎名 秀一朗(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 加藤 直也(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 吉田 英雄(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 建石 良介(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 石橋 大海(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 村松 正明(東京医科歯科大学難治疾患研究所 分子疫学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
22,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 肝癌はわが国の癌死原因の第三位を占め、8割はHCV、1割はHBVに起因する。肝癌高危険度群が明確化され、診断法およびラジオ波焼灼療法(RFA)等治療法の発展と相俟って、肝癌の短期予後は著明に改善した。しかし、5年生存率は40%程度であり、十分ではない。長期予後改善を妨げている最大の原因は年率20%に及ぶ治療後再発であり、本研究ではその機序を検討し、対策を講じることにより、5年生存率を70%まで向上させることを目的とした。
研究方法
 再発に関する生存時間解析は、個人情報保護法に則り、蓄積・更新されている臨床データベースを用いて行った。遺伝子解析はヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針に基づき、倫理審査委員会等の承認のもとに施行された。
結果と考察
結果と考察
 肝癌治療症例について、再発予後解析を行った。主な結果は、(1)画像上根治した肝癌患者の5年間の累積再発率は72%であり、無再発死亡率11%と比べてはるかに高く、再発の重要性があらためて示された。治療後AFP-L3高値群では再発が特に多かった。(2)C型肝癌において、治療後6年累積生存率はIFN著効後発癌例で93%、肝癌治療後IFN著効例で88%と非常に良好であった。(3)治療後1年間の再発率は初発肝癌で16%、1回目再発癌では21%、2回目以降の再発では55%であった。遺伝子多型(SNP)に関してMDM2SNP309と肝発癌との関連を示し、本研究で解明した肝癌と関連するSNPは計6種となった。また、肝線維化進行と関連するSNP3種を確認した。HBVキャリアにおいて、IL-1βSNPと肝線維化進行との関連を示した。
 本研究で提唱したTokyo Scoreによると、治療後5年生存率は0点で79%、1点で62%であるが、IFN著効例では予後はさらに良好である。B型肝癌においても抗ウイルス剤投与により同様の効果が得られる可能性がある。一方、治療後腫瘍マーカー陽性例や再発を繰り返した症例では画像上根治であっても短期間で再発する。画像で捉えられない残存癌の存在が考えられ、今後、癌細胞における遺伝子変化を解析し、クロナリティーの検討を行う。
結論
肝癌治療後再発には新規発癌と治療時微小癌残存の二つの機序が考えられ、予後改善には両者への対策が必要である。前者には抗ウイルス療法が有効である可能性があり、臨床的検証が必要である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

文献情報

文献番号
200630009B
報告書区分
総合
研究課題名
予後改善を目指した肝臓がん再発に影響を与える因子に関する研究
課題番号
H16-肝炎-一般-022
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
小俣 政男(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 吉田 晴彦(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 椎名 秀一朗(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 加藤 直也(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 金井 文彦(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 吉田 英雄(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 建石 良介(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
  • 白鳥 康史(岡山大学大学院 消化器・肝臓・感染症内科)
  • 石橋 大海(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
  • 村松 正明(東京医科歯科大学難治疾患研究所 分子疫学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 肝がんはわが国癌死原因の第3位を占める。診断・治療の進歩に拘らず肝がんの長期予後は不良であり、その最大の原因は頻発する治療後再発である。肝癌患者の5年生存率を70%とすることを目標とした。
研究方法
 肝がんの再発要因を解析し、有効な対策を実施、肝癌患者の生存率改善を図る。
結果と考察
 肝がん治療後の再発を解析した。残存癌の顕在化によると思われる再発は2年以内に生じ、以降の再発には主に背景肝因子が関与した。肝機能および腫瘍因子からTokyoスコアを構築し、予後改善の指標とした。同スコアが最良の群では5年生存率は約80%に達した。また、インターフェロン(IFN)療法によりHCVが持続陰性化した症例の5年生存率は約90%であった。以上から、早期再発対策として、診断能の向上のためにCT下血管造影併用の生命予後への効果について無作為化比較対照試験を開始した。また、晩期再発対策としての抗ウイルス療法についてHCVに対してIFN・リバビリン併用療法、HBVに対してラミブジン療法を開始した。肝発がんないし線維化進行に関連する遺伝子多型としてUGT1A7、MDM2等計9遺伝子を報告した。再発肝がんの遺伝子学・分子生物学的クロナリティー解析の開発に着手した。
結論
 肝癌の予後改善のためには、早期発見・早期治療とともに、肝機能の維持ないし改善、特に肝炎ウイルスに対する治療が重要である。肝機能、腫瘍因子ともに良好な場合治療後5年生存率は約80%であり、HCVが持続陰性化したHCV関連肝癌では90%前後に達した。

公開日・更新日

公開日
2007-04-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2007-12-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200630009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 SNP等の遺伝子解析結果を匿名下に豊富な臨床データベースと結合することにより、肝発癌ないし肝線維化進行と関連するSNPとして薬剤代謝酵素UGT1A7やサイトカインIL-1betaなどを検出した。さらに、炎症や細胞増殖等に関連する171遺伝子393SNPについて、肝発癌との関連を網羅的に解析し、あらたにGFRA1、CRHR2、SCYB14のSNPを同定した。
臨床的観点からの成果
 1000名を超えるラジオ波焼灼療法(RFA)施行肝癌患者の予後を解析し、その安全性と有効性を実証した。特に、エタノール注入療法との無作為化対照比較試験を実施し、RFAの有効性に関するエビデンスを示した。RFAでは局所再発はほとんどないが、肝内異所性再発は頻発し、その危険因子として腫瘍径、個数、腫瘍マーカーなどの腫瘍因子、血小板などの背景肝因子を認めた。C型肝癌治療後のインターフェロン療法が生命予後を改善することを示した。
ガイドライン等の開発
無し
その他行政的観点からの成果
平成17年5月9日 厚生労働省「C型肝炎対策等に関する専門家会議」にて肝臓がん対策について発表
その他のインパクト
平成17年6月29日 朝日新聞 朝刊 “肝がん 血小板数に注目を”
平成18年4月11日 朝日新聞 朝刊 “肝機能「正常」でも要治療” 他

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
33件
Annals of Internal Medicine, Gastroenterology, Hepatology, Gut 他
その他論文(和文)
2件
日本臨床耐糖能障害;基礎・臨床研究の最新情報 他
その他論文(英文等)
2件
Framing the Knowledge of Therapeutics for Viral Hepatitis  In:Schinazi RF, Schiff ER, eds. 他
学会発表(国内学会)
9件
第90回日本消化器病学会総会、第92回日本消化器病学会総会、第42回日本肝臓学会総会、第10回日本肝臓学会大会 他
学会発表(国際学会等)
9件
American Association for the Study of Liver Diseases 2004・2005・2006 他
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計3件
その他成果(特許の取得)
0件
国際特許出願番号:PCT/JP2006/308051 BMP-7を含む抗C型肝炎ウイルス剤 国際公開番号:WO2006/112441 他
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Akamatsu M, Yoshida H, Shiina S, et al.
Pre- or post-tumor ablation interferon therapy prolongs the survival of patients with C viral- hepatocellular carcinoma.
Liver Int , 26 , 536-542  (2006)
原著論文2
Dharel N, Kato N, Muroyama R, et al.
MDM2 promoter SNP309 is associated with the risk of hepatocellular carcinoma in patients with chronic hepatitis C.
Clin Cancer Res , 12 , 4867-4871  (2006)
原著論文3
Tanaka Y, Kanai F, Tada M, et al.
Absence of PIK3CA hotspot mutations in hepatocellular carcinoma in Japanese patients.
Oncogene , 25 , 2950-2952  (2006)
原著論文4
Shao R-X, Otsuka M, Kato N, et al.
Acyclic retinoid inhibits human hepatoma cell growth by suppressing fibroblast growth factor-mediated signaling pathways.
Gastroenterology , 128 , 86-95  (2005)
原著論文5
Kato N, Ji G, Wang Y, et al.
Large-scale search of single nucleotide polymorphisms for hepatocellular carcinoma susceptibility genes in patients with hepatitis C.
Hepatology , 42 , 846-853  (2005)
原著論文6
Yoshida H, Tateishi R, Arakawa Y, et al.
Benefit of interferon therapy in hepatocellular carcinoma prevention for individual patients with chronic hepatitis C.
Gut , 53 , 425-430  (2004)
原著論文7
Tanaka Y, Kanai F, Kawakami T, et al.
Interaction of hepatitis B virus X protein (HBx) with heat shock protein 60 enhances HBx-mediated apoptosis.
Biochem Biophys Res Commun , 318 , 461-469  (2004)
原著論文8
Wang Y, Kato N, Hoshida Y, et al.
UDP-glucuronosyltransferase 1A7 genetic polymorphisms are associated with hepatocellular carcinoma in Japanese patients with hepatitis C virus infection.
Clin Cancer Res , 10 , 2441-2446  (2004)

公開日・更新日

公開日
2016-07-11
更新日
-