生体肝移植後のC型肝炎再発予防を目指したステロイド剤不使用による免疫抑制療法に関する研究

文献情報

文献番号
200630007A
報告書区分
総括
研究課題名
生体肝移植後のC型肝炎再発予防を目指したステロイド剤不使用による免疫抑制療法に関する研究
課題番号
H16-肝炎-一般-020
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高田 泰次(京都大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科)
研究分担者(所属機関)
  • 猪股 裕紀洋(熊本大学医学部附属病院 小児外科)
  • 伊佐地 秀司(三重大学医学部附属病院 第一外科)
  • 木内 哲也(名古屋大学医学部附属病院 内分泌・移植外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウィルス(HCV)感染による肝硬変ならびに合併する肝細胞癌に対する治療法として肝移植に期待がかけられている。しかし、肝移植後のHCV肝炎再発が移植肝の予後を左右する重要な問題となっている。本研究はHCV関連肝硬変患者の生体肝移植後肝炎再発防止を目指した新しい免疫抑制療法の開発を目的とする。
研究方法
これまでに実施した生体肝移植におけるC型肝炎再発頻度および線維化速度を解析した。次に、従来のステロイド剤とタクロリムス(プログラフ)による免疫抑制療法に対して、ステロイド剤を全く使用せずミコフェノール酸モフェチル(MMF)を使う新しい免疫抑制療法についてその有効性と安全性を比較検討するため、施設倫理委員会によって承認されたプロトコルに基づいて2つの免疫抑制療法の無作為化比較試験(prospective randomized comparative study)を多施設共同研究として研究を開始した。
結果と考察
京都大学移植外科で2006年5月までに生体肝移植を受けたC型肝硬変患者132人について、移植後肝炎再発を検討した。移植後5年生存率は71%で、他の疾患に対して生体肝移植を受けた成人267例の場合の69%と同等であった。移植後stage F2以上の有意な線維化を伴う慢性肝炎の再発は30例に認め、移植後3年累積再発率は56%であった。これまでfibrosing cholestatic hepatitis2例を含む5例が肝硬変に進展し、2例が死亡、1例が再移植を受けている。
 生体肝移植後肝炎再発防止を目指したステロイドフリーの免疫抑制療法に関する前向きの無作為比較試験について、平成18年12月までに総計52例が本研究に参加登録され、A群とB群に無作為に割り付けられプロトコルに基づく治療を受けている。本臨床試験の進捗状況は順調であるが、中間解析は行わないため有効性の評価はまだ明らかにされていない。
結論
これまでの生体肝移植症例に関する肝炎再発の実態が解明され、欧米から報告されている脳死肝移植と同等の肝炎再発率があるが、今のところ予後に深刻な影響を与えているとは考えられない。新しい免疫抑制療法の開発に関する研究は今後多施設での症例登録が積み重ねられ、本研究が推進されるものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-

文献情報

文献番号
200630007B
報告書区分
総合
研究課題名
生体肝移植後のC型肝炎再発予防を目指したステロイド剤不使用による免疫抑制療法に関する研究
課題番号
H16-肝炎-一般-020
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
高田 泰次(京都大学医学部附属病院 肝胆膵・移植外科)
研究分担者(所属機関)
  • 猪股 裕紀洋(熊本大学医学部附属病院 小児外科)
  • 伊佐地 秀司(三重大学医学部附属病院 第一外科)
  • 木内 哲也(名古屋大学医学部附属病院 内分泌・移植外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服緊急対策研究
研究開始年度
平成16(2004)年度
研究終了予定年度
平成18(2006)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
C型肝炎ウィルス(HCV)感染による肝硬変ならびに合併する肝細胞癌に対する治療法として肝移植に期待がかけられている。しかし、肝移植後のHCV肝炎再発が移植肝の予後を左右する重要な問題となっている。本研究はHCV関連肝硬変患者の生体肝移植後肝炎再発防止を目指した新しい免疫抑制療法の開発を目的とする。
研究方法
これまでに実施した生体肝移植におけるC型肝炎再発頻度および線維化速度を解析した。次に、従来のステロイド剤とタクロリムスによる免疫抑制療法に対して、ステロイド剤を全く使用せずミコフェノール酸モフェチル(MMF)を使う新しい免疫抑制療法についてその有効性と安全性を比較検討するため、2つの免疫抑制療法の無作為化比較試験を多施設共同研究として研究を開始した。
結果と考察
京都大学移植外科で2006年5月までに生体肝移植を受けたC型肝硬変患者132人について、移植後肝炎再発を検討した。移植後5年生存率は71%で、他の疾患に対して生体肝移植を受けた成人267例の場合の69%と同等であった。移植後stage F2以上の有意な線維化を伴う慢性肝炎の再発は30例に認め、移植後3年累積再発率は56%であった。肝移植後の再発C型肝炎に対するインターフェロンとリバビリンによる抗ウィルス治療はこれまで64例に行われている。32例が48週以上の治療を完了しておりそのうちSVR(sustained virological response)が得られているのは14例である。
 生体肝移植後肝炎再発防止を目指したステロイドフリーの免疫抑制療法に関する前向きの無作為比較試験は平成16年2月から開始し、平成18年12月までに総計52例が本研究に参加登録されている。本試験において、従来と比べて重篤な有害事象の増加は認められておらず、研究計画における安全性は損なわれていないと考えられる。
結論
これまでの生体肝移植症例に関する肝炎再発の実態が解明され、欧米から報告されている脳死肝移植と同等の肝炎再発率があるが、今のところ予後に深刻な影響を与えているとは考えられない。新しい免疫抑制療法の開発に関する研究はまだ予定症例数に到達していないため登録期間の延長を行い、症例数の集積を待ち研究を遂行する予定である。

公開日・更新日

公開日
2007-04-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2008-02-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200630007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
HCV関連肝硬変および肝癌患者に対する生体肝移植後のC型肝炎再発頻度および線維化速度を解明することにより肝炎再発の実態を明らかにする。ステロイド剤を全く用いない新しい免疫抑制療法など有効な再発予防法の開発により本疾患患者の生命予後改善に大きく貢献するものと期待される。
臨床的観点からの成果
本研究は多施設共同の無作為化比較試験において、生体肝移植におけるC型肝炎再発頻度および線維化速度を解析するとともに、再発予防を目指してステロイド剤を全く用いない新しい免疫抑制療法の有効性を検討する。この研究により、本邦の肝疾患で頻度の高いC型肝硬変患者に対する生体肝移植治療について、移植後の肝炎再発の実態が明らかとなり移植術後管理体系の構築に役立つだけでなく、再発予防につながる免疫抑制療法の開発によってこれら患者の生命予後改善に大きく貢献するものと期待される。
ガイドライン等の開発
本施設でのこれまでのC型肝硬変症例の移植成績の解析を行ったところ、移植後肝炎再発が高率であることが明らかとなり、その再発予防の方策の確立が急務であると考えた。そこで、免疫抑制療法に関する今回の臨床試験に着想し、京都大学医学部探索医療センターの協力の下で試験実施計画書を作成し、さらに本学倫理委員会の承諾を得た。この試験実施計画書(プロトコル)に基づいて平成16年2月より研究を開始した。
その他行政的観点からの成果
本邦の肝疾患で頻度の高いC型肝硬変患者に対する治療法として生体肝移植が多く行われつつあるが、その最大の合併症である移植後のC型肝炎再発に対する診断・患者管理体系の構築に役立ち、これら患者の生命予後改善に繋がる研究である。
その他のインパクト
日本外科学会総会、日本移植学会総会、日本肝移植研究会などの学術集会において、肝移植後のC型肝炎の再発がテーマとなるシンポジウムやワークショップにおいて本研究内容について発表、討論した。

発表件数

原著論文(和文)
10件
原著論文(英文等)
40件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
49件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Takada Y, Tanaka K.
Living related liver transplantation.
Transplant Proc , 36 , 271-273  (2004)
原著論文2
Takada Y, Ueda M, Ishikawa Y, et al.
End-to side portocaval shunting for a small-for-size graft in living donor liver transplantation.
Liver Transpl , 10 , 807-810  (2004)
原著論文3
Kasahara M, Takada Y, Kozaki K, et al.
Functional portal flow competition after auxiliary partial orthotopic living donor liver transplantation in noncirrhotic metabolic liver disease.
J Pediatr Surg , 39 (7) , 1138-1141  (2004)
原著論文4
Iwasaki M, Takada Y, Hayashi M, et al.
Noninvasive evaluation of graft steatosis in living donor liver transplantation.
Transplantation , 78 (10) , 1501-1505  (2004)
原著論文5
Kasahara M, Takada Y, Egawa H,  et al.
Auxiliary partial orthotopic living donor liver transplantation: Kyoto University experience.
Am J Transplant , 5 (3) , 558-565  (2005)
原著論文6
Kasahara M, Takada Y, Fujimoto Y, et al.
Impact of right lobe with middle hepatic vein graft in living-donor liver transplantation.
Am J Transplant , 5 , 1339-1346  (2005)
原著論文7
Kasahara M, Ueda M, Haga H, et al.
Living-donor liver transplantation for hepatoblastoma.
Am J Transplant , 5 (9) , 2229-2235  (2005)
原著論文8
Fukudo M, Yano I, Masuda S, et al.
Pharmacodynamic analysis of tacrolimus and cyclosporine in living-donor liver transplant patients.
Clin Pharmacol Ther , 78 (2) , 168-181  (2005)
原著論文9
Morioka D, Kasahara M, Takada Y, et al.
Living donor liver transplantation for pediatric patients with inheritable metabolic disorders.
Am J Transplant , 5 (11) , 2754-2763  (2005)
原著論文10
Morioka D, Takada Y, Kasahara M, et al.
Living donor liver transplantation for non-cirrhotic inheritable metabolic liver diseases: Impact of the use of heterozygous donors.
Transplantation , 80 , 623-628  (2005)
原著論文11
Morioka D, Kasahara M, Takada Y, et al.
Current role of liver transplantation for the treatment of urea cycle disorders: A review of the worldwide English literature and 13 cases at Kyoto University.
Liver Transpl , 11 , 1332-1342  (2005)
原著論文12
Takada Y, Haga H, Ito T, et al.
Clinical outcomes of living donor liver transplantation for HCV-positive patients.
Transplantation , 81 , 350-354  (2006)
原著論文13
Kasahara M, Egawa H, Takada Y, et al.
Biliary reconstruction in right lobe living-donor liver transplantation: comparison of different techniques in 321 recipients.
Ann Surg , 243 , 559-566  (2006)
原著論文14
Haga H, Egawa H, Fujimoto Y, et al.
Acute humoral rejection and C4d immunostaining in ABO blood type-incompatible liver transplantation.
Liver Transpl , 12 , 457-464  (2006)
原著論文15
Takada Y, Ueda M, Ito T, et al.
Living donor liver transplantation as a second-line therapeutic strategy for patients with hepatocellular carcinoma.
Liver Transpl , 12 , 912-919  (2006)
原著論文16
Iwai A, Marusawa H, Takada Y, et al.
Identification of novel defective HCV clones in liver transplant recipients with recurrent HCV infection.
J Viral Hepat , 13 , 523-531  (2006)
原著論文17
Umeda M, Marusawa H, Ueda M, et al.
Beneficial effects of short-term lamivudine treatment for de novo hepatitis B virus reactivation after liver transplantation.
Am J Transplant , 6 , 2680-2685  (2006)
原著論文18
Yoshizawa A, Takada Y, Fujimoto Y, et al.
Liver transplantation from an identical twin without immunosuppression with early recurrence of Hepatitis C.
Am J Transplant , 6 , 2812-2816  (2006)
原著論文19
Hussein Ali, Watashi K, Hijikata M, et al.
Serum-derived hepatitis C virus infectivity in interferon regulatory factor-7-suppressed human primary hepatocytes.
J Hepatol , 46 , 26-36  (2007)
原著論文20
Morioka D, Egawa H, Haga H, et al
Impact of human leukocyte antigen mismatching on outcomes of living donor liver transplantation for primary biliary cirrhosis.
Liver Transpl , 13 , 80-90  (2007)

公開日・更新日

公開日
2016-07-11
更新日
-