抗エイズ薬を目指したウイルス糖鎖構造制御による宿主免疫の賦活化・機能化分子の開発

文献情報

文献番号
200629030A
報告書区分
総括
研究課題名
抗エイズ薬を目指したウイルス糖鎖構造制御による宿主免疫の賦活化・機能化分子の開発
課題番号
H18-エイズ-若手-002
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
袴田 航(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 栗原 正明(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズの慢性感染症化は、「多剤併用療法」の広がりを意味し、それら薬剤に対する耐性株の出現速度を増大させている。そこで、これまでの「多剤併用療法」の治療標的だけでなく、異なる標的を有する薬剤および宿主免疫を維持する薬剤の登場が強く望まれている。本研究は、ウイルス糖鎖構造制御による宿主免疫の賦活化・機能化作用増大による抗エイズ薬を目指しており、「多剤併用療法」の維持・発展の為に必要な研究である。
研究方法
HIV エンベローブ糖タンパク質 gp120 の N-結合型糖鎖は、始めに小胞体 N-結合型糖鎖プロセシング酵素により糖鎖のプロセシングが行われ、正常な糖タンパク質のみが輸送される。よって、N-結合型糖鎖プロセシング酵素を害する事が出来れば、目的とする糖鎖構造を有する gp120 が構築でき、HIV に目的とする糖鎖を提示させる事が可能となる。その結果、制御された糖鎖を有する gp120 に中和抗体が結合し、抗 HIV 活性を発現する事が期待される。そこで、in silico 技術および HTS 法を両輪とし、阻害剤の探索・分子設計・阻害剤分子の合成・阻害活性の評価を有機的に連携して研究を実施することにより、高活性化合物が迅速かつ効率的に得る。
結果と考察
医薬品や医薬品候補化合物のライブラリを用い、エイズウイルス糖鎖構築酵素阻害剤候補化合物のin silico 論理的・網羅的探索を行った。約100万化合物の配座解析情報に基づいて、ファーマコフォア検索およびドッキングスタディーによるバーチャルスクリーニングにより、濃縮された糖鎖構造制御化合物ライブラリを得た。このように、in silico 技術を用いる事により、以前では考えられなったスピードでライブラリから候補化合物を濃縮する事が可能となった。今後、コンピュータの情報処理速度の増大に伴い、更に濃縮速度が増大する。IT 技術の進歩を抗エイズ薬開発に活用する事ができる、非常に優れた有意義な方法論であると考えられる。
結論
本研究は、IT 技術を積極的に取り入れる事によって、エイズウイルス糖鎖構築酵素阻害剤候補化合物を高効率的に得る目的の第一段階をほぼ終了した。得られたライブラリは、これまでの阻害剤とは異なる構造を有しており、かつ、活性部以内の水素結合・疎水結合等の重要な相互作用をふんだんに利用した興味深い構造であった。本方法が非常に強力な阻害剤のスクリーニング手法である事を明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2007-04-10
更新日
-