末梢CD4陽性Tリンパ球中の残存プロウイルス量とその活動指数は治療中断の指標となりうるかを明らかにする研究

文献情報

文献番号
200629019A
報告書区分
総括
研究課題名
末梢CD4陽性Tリンパ球中の残存プロウイルス量とその活動指数は治療中断の指標となりうるかを明らかにする研究
課題番号
H18-エイズ-一般-010
研究年度
平成18(2006)年度
研究代表者(所属機関)
金田 次弘(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター臨床研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 濱口 元洋(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター 臨床研究センター )
  • 鈴木 康弘(国立国際医療センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター HIV/AIDS先端医療開発センター)
  • 南 留美(独立行政法人国立病院機構 九州医療センター 免疫感染症内科)
  • 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構 仙台医療センター 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策研究
研究開始年度
平成18(2006)年度
研究終了予定年度
平成20(2008)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、HAART著効患者を対象にして末梢CD4陽性Tリンパ球中に残存しているプロウイルスコピー数と全長HIV-1 mRNAコピー数を定量し、1コピー当りのプロウイルスのHIV-1 mRNA転写能(活動指数:全長HIV-1 mRNAコピー数/プロウイルスコピー数)を算出し、活動指数と残存プロウイルス量がHAART中断のエビデンスになるかを検討することである。
研究方法
研究対象:HAARTにより血漿ウイルス量(VL)が検出感度以下に抑制されているHAART著効例である。
DNAとRNAの抽出および精製:DNAはキアゲンBlood mini kitを用い、RNAはトリゾールにてCD4陽性細胞より抽出・精製した。HIV-1プロウイルスコピー数と全長HIV-1 mRNAのコピー数は高感度リアルタイムPCR法で定量した。塩基配列の決定:プライマー、プローブ領域の塩基配列のマッチングの度合いより定量値の妥当性を評価した。
結果と考察
1.長期間にわたるHAART著効例の抽出:名古屋医療センターでは5年以上のHAART著効例は22例存在した。データー整理を分担研究者在籍施設で行っているが、全体で100例の登録の目処がたった。
2.プロウイルス量と全長HIV-1 mRNAの量:64症例について測定を行った。その結果、治療期間が短い症例が高い活動指数を示し、治療期間が長い症例程低い活動指数を示すというような相関は認められなかった。活動指数が低値(2.2以下)を示す症例は24症例で、そのうちの6例がプロウイルス量も低値を示した。
3.プライマーとプローブ領域のマッチング解析:25症例で実施したが、致命的なミスマッチは存在しなかった。
4.一般検査化への技術改良:抽出するRNA分子種をmRNAに変え、かつ定量に用いる標準物質にRNAを使用することによりHIV-1 mRNAの定量の見通しが立った。
 HAART著効患者のプロウイルスと活動指数には潜伏感染レベルの低活性のものから持続感染細胞を凌ぐ高活性を有するものまで広範囲に分布することがわかった。
 今後の慎重な検討を待たねばならないが、残存プロウイルス量とその活動指数が治療中断のエビデンスになりうる可能性は高いと期待される。
結論
 初年度の研究結果のみでは結論は出せる段階ではない。しかしHIV-1プロウイルス量とその活動度がHAART中断の有力な指標となるとの感触は得られた。

公開日・更新日

公開日
2007-05-23
更新日
-